2021-01-01から1年間の記事一覧
上野ゼミの受講生たちから贈られるうれしいことばのひとつに、こんなものがありました。「上野センセは、わたしたちの中からまだ見ぬものを生み出してくれるお産婆さんみたいな存在なのよ」と。そのとおり、「まだ見ぬもの」は、もともとその人のなかに存在…
私は君たちには、「東大生にできることは小学生にもできます」って言ってたじゃん。基本は、自前の問いを自分で解く。一次情報をちゃんと取ってくる。ありもののセコハン情報を器用にまとめるっていうことをやらせない。その基本のキをやることにしたわけ。…
編集者 猪瀬さんのインタビュー・ノンフィクションの対象になる人って、そういえば若い人がいない。〇 "青少年" はやたら希望をさえずるの。つまらないの。ところが年配の人の話って、取り返しのつかない人生について語っているからペーソスがある。おっと、…
政治家をどう選ぶかは人それぞれですし、勘と印象に頼る人がいてもよいでしょう。ですが理性的な立場から選ぶためには、何らかの手がかりが必要でしょう。現在の政治教育ではそのための手がかりを基本的には提供できていないのではないでしょうか。 政治と教…
ときどきさまざまな年代での自分の後ろ姿を見つめるときがある。以前より少しは歳をとったせいだと思うが、そのぶん散歩することができる時間の世界は広がったのかもしれない。(猪瀬直樹『ノンフィクション宣言』文春文庫、1992) おはようございます。昨日…
盛り上がった#教師のバトン プロジェクトもいずれブームは過ぎ去る日が来るだろう。しかし、それでも教師が情報発信することの意義は、日本が成熟した民主主義社会を指向する限り消えることはない。教育公務員として、必要以上に政治的中立性が求められ、地…
猪瀬 村山、武村がかついでいるのは、天皇制的なもの、朝日新聞的なもの、つまり吉本さんのおっしゃる皮膜が実体のような世界。そういうものに小沢はきっと殺される。吉本 そうか……。とてもよくわかるなあ。僕も身にこたえる(笑い)。猪瀬 吉本さんも僕も、…
臨床家としての僕の第一原則は、「治療よりも自分の健康や生活を優先する」です。部分的にはボランティア的な活動もしてはいますが、治療である以上は応分の謝金はいただきますし、帰宅時間を何時間も遅らせてまでクライエントに対応することもしません。僕…
さらに日本では、「平均的な収入」の人のうち、税の負担を、「高すぎる」「どちらかというと高すぎる」と回答する人が5割にのぼるんだそう。高い負担で知られる北欧でも3割程度というから、日本は北欧と較べても「税金高い!」という声が大きい。でも、実…
猪瀬 黒船来航からこれまでの歴史を見ればわかるように、アメリカは敵国を徹底的にやっつける国だということです。日本についても、アメリカの占領が終わった後もいまにいたるまで軍事的支配が続いているという現実を認識しないといけない。学校で教えられて…
「僕の妻もいっしょにいるだけで、家屋の空間を満たしてくれる存在だった。僕は、妻を空間ごと愛していたのです」 猪瀬は、蜷川に会ってから「恋する日常をしましょう」と囁いた。(蜷川有紀、猪瀬直樹『ここから始まる』集英社、2018) おはようございます…
三浦 私が猪瀬さんを好きなのは、相変わらず進歩することを信じているからです。猪瀬 僕が未来を信じようとしている思いは、日本の近代について考え続けた、その責任感から生まれた。(三浦瑠麗、猪瀬直樹『国民国家のリアリズム』角川新書、2017) こんばん…
この土地で「なぜ20年も働いてきたのか。その原動力は何か」と、しばしば人に尋ねられます。人類愛というのも面映いし、道楽だと呼ぶのは余りにも露悪的だし、自分にさしたる信念や宗教的信仰がある訳でもありません。良く分からないのです。でも返答に窮…
ところが2017年におこなった探検がきっかけとなって私の物の見方は大きく変わってしまい、結果、現実とはカオスであること、そしてこれを直視しないためにわれわれは未来予期にすがって生きているのだ、と認識するようになったのである。というのもその…
猪瀬 先日、高松宮宣仁が亡くなりました。すると、新聞の論調は、たとえば「銀座にお忍びでお出かけになる気さくな宮さま」とか「一個七十円の大福餅を食べた庶民的な宮さま」というふうに傾斜していくんです。これはいったいどういうことなのか。一種の〈放…
宮台 そうなんです。これはおもしろいですよね。経済的に裕福な人たちが、自分たちの経済的なゲームを支えてくれる大統領は誰かというと、マケインではなく、オバマだと。「オバマのように社会の保全に関心を持つ人間がいないと、最終的には自分たちの経済ゲ…
つまり、人間には「統治する側」と「統治される側」があるが、日本文学の系譜において、森鴎外側が途切れてしまった。夏目漱石自体は偉いが、漱石の系譜はだんだんと私小説のほうに流れてしまい、結局、太宰治になってしまった。昭和の戦争に至る過程におい…
そういえば、教室リフォームのとき、一生懸命科学コーナーをつくっている友だちの横で、イケッチは図鑑を読んでいた。でも、そんなイケッチに目くじらを立てずに、それぞれの仕事をやっていると、そのうちイケッチも働きはじめる。そういう緩やかさは大事に…
利害関係なく頼れるのは親くらいだよ。昔から母はよく言い、その恩着せがましい言い方に、親なら当たり前だろうとでもいうような反応しかできなかったが、教師になってからは、それは決して、当たり前のことではないと理解できた。頼れる親が、実際に頼りに…
わたしたちは、会いたいのだ。いま、その意味を、考えるいい機会だと、わたしは思う。(田中泰延『会って、話すこと。』ダイヤモンド社、2021) おはようございます。学生時代に観たアングラ演劇の「会おうと思えばいつでも会えると思える人には絶対に会えな…
「ビートルズのポール・マッカートニーは、最初の結婚のとき、子どもを4人ともふつうの公立の中学に行かせたらしくて。デザイナーのステラ・マッカートニーのインタビューを読んだとき、彼女は最初、セレブリティーのくせに私立に行かせてくれなかった親の…
『キッド』に影響されてデ・シーカは『自転車泥棒』を作りました。アントニオとブルーノが路上に並んで座るシーンは『キッド』へのオマージュです。そして、『自転車泥棒』に影響されてケン・ローチやダルデンヌ兄弟は映画を撮り始めました。是枝監督もまた…
僕が東京都副知事だったころ、笑ってしまうような出来事がありました。茨城県の副知事から相談を受けたのです。彼は上野駅のコンコースで納豆フェアをやろうとしたが東京都の役人が待ったをかけた、おかしな話だから何とかしてほしいと言います。どういうこ…
改革は百点でないがゼロ点でもない。百点でなければ辞任、とはおかしい。それならすべての審議会の委員は全員辞任しなければいけないことになる。表向きの美辞麗句の裏に隠された真相を実証的に解明するのがメディアの役割ではないのか。アガサ・クリスティ…
数年前、オランダの小学校に参観に行ったときのこと。その学校には宿題がないというので驚いた。理由をたずねるとおおよそこんな答えだった。 『学校でのことは学校で終えるべき。おとなになって仕事をするときも職場で決まった時間のなかで終わらせることが…
なんのことかといえば、私が大学で教えているフランス文学というのはファム・ファタルと呼ばれるスーパー・ウッフンの登場する小説ばかりなのですから、少し、力点の置き方を変えてやれば、「フランス文学史」も「フランス文学演習」も、そのままファム・フ…
原作は短編なので、映画にするためには材料が明らかに足りない。なので膨らまさないといけないけれど、それが物語にとって見当違いなものではいけないわけですよね。プロットを書く際に原作を何度も読み返すうちに、「女のいない男たち」に収められた同時期…
田原 なるほど、敗戦も自然災害の一つね。日本は戦争をいまでも総括できていない理由かもしれない。猪瀬 天皇陛下が終わりだと祝詞のような玉音放送で言ったわけで、国民が自ら終わらせたのではない感じです。戦前の軍歌で『海行かば』ってあるでしょう。 海…
子どもに幸せになってほしいと願うならば、お金を稼ぐために「勉強しなさい」と言うよりも、「いい人間関係を大切しなさい」と教えたほうがいいということですね。(ひろゆき『僕が親ならこう育てるね』扶桑社、2021) おはようございます。引用していたら誤…
調査結果は、読解リテラシーにおいても数学リテラシーにおいても、学校でコンピュータの活用時間が長時間になると、学力は低くなることを示しています。(中略) この調査結果について、私はもう一つ別の解釈を持っています。現在のコンピュータの活用の仕方…