田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2020-01-01から1年間の記事一覧

猪瀬直樹 著『ミカドの肖像』より。西武って、何だ。子どもの頃の「問い」を大切に。

天皇をミカドという言葉に置き換えてみると、さながら外国人のように日本及び日本人の特殊な生態をつかみとることができはしまいか。 ついでに、彼らの鏡に映じた天皇制の痕跡を丹念に蒐集したらどうか。 そう考えて、僕はヨーロッパを「巡遊」したのだった…

國分功一郎 著『はじめてのスピノザ』より。実験を重ねて、喜びをもたらす組み合わせを見つけること。それが自由へのエチカ。

私にとって善いものとは、私とうまく組み合わさって私の「活動能力を増大」させるものです。そのことを指してスピノザは、「より小なる完全性から、より大なる完全性へと移る」とも述べます。完全性という言葉もこのような意味で使い続けようというわけです。…

中原淳、鈴木大裕、他『FUTURE EDUCATION 学校をイノベーションする14の教育論』(教育新聞 編)より。未来の教育に酔う。

そもそもいまでも、学校から会社や組織に入ったときに、すごく「段差」がある。学校とリアルな社会では賢さの定義が違います。高校までは、教科書の範囲内で問題が与えられ、一人で解ければいい。これが学校での賢さです。でも、リアルな社会は違う。高度に…

苅谷剛彦 著『コロナ後の教育へ』より。不透明な時代だからこそ、現場からの帰納を。

このような演繹型思考で組み立てられた教育政策は、「現場に下ろす」ことが不可避となる。それゆえ、現場の理解が求められ、理解を進める「周知・徹底」が教育改革の重要な役割を担う。政策がうまくいかないのは、「周知・徹底」がうまくいかなかったからか…

妹尾昌俊 著『学校をおもしろくする思考法 卓越した企業の失敗と成功に学ぶ』より。マグロにはなりたくない。

しかし、これからの学校の働き方改革では、教育効果があるもの、子どものためになることのなかからも、一定の優先順位を付けて、選択していくことが必要となってくると思います。具体的には、採点・添削の効率化、行事準備や清掃指導の見直し・短縮、部活動…

是枝裕和、ケン・ローチ 著『家族と社会が壊れるとき』より。教育が壊れるとき。児童を見つめるカメラを。

何が言いたいかというと、映画祭も、放送局も、またいま問題になっている日本学術会議にしても、いわゆる「公共」的な場における表現の自由とか、放送の自由、学問の自由というのは、やはり権力からの自由だと思うのです。 権力の介入をさせずに、純粋に、忖…

藤原章生さんと高野秀行さんのトークイベントに参加してきました🎵 その「個」はどこから始まっているのか。

するとほどなく、朝日新聞にこんな論調の記事が載った。テロの原因は貧困にある。武力による報復ではテロを根絶できない。テロをなくすにはまず貧困をなくさなければならない。 それを見たとき、私の中から自分でも驚くほどの怒りが湧いてきた。 机上の空論…

東浩紀 著『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』より。忙しすぎる学校に、誤配を。誤配を生む、時間を。

若いときには、ひとはだれでも世界を変えたいと思っています。でもそれはオルタナティブでありたいという思いとは関係ない。若者は先行世代を追い出せば業界が変わると考える。でもじっさいにはテレビも新聞もつねに新しいコメンテーターを必要としているし…

猪瀬直樹、東浩紀 著『正義について考えよう』より。日本には本来、正義があった。

東 僕はこの本を読んで、昔の猪瀬さんに久しぶりに会ったように感じました。高校生の頃、『ミカドの肖像』で猪瀬さんを最初に知り、それでファンになりました。あのノンフィクションは、東京をよく見るとプリンスホテルがいっぱいあるけど、あれは何だろうと…

出口治明、鹿島茂 著『世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵』より。コロナ禍を奇貨として、教育に劇的ビフォアーアフターを。

鹿島 このコロナ禍で僕が一番困ったなと思っているのが、留学にしろ旅行にしろ、海外に行けないから、自分の価値観がひっくり返るような体験をできなくなっていることです。僕は大学でいつも言っているんですが、一つしか知らないと何も生まれない。比べるも…

オードリー・タン 著『デジタルとAIの未来を語る』より。標準的な答えも、標準的な教育も、ない。

父は、私に「標準的な答え」を与えようとはしませんでしたし、そんな答えがそもそも存在すると思っていなかったようです。あらゆる思考の機会で、一見標準的な答えのように見える場合、そこには必ずいくつかの前提条件が必要であって、その条件を満たしてい…

藤原章生 著『絵はがきにされた少年』より。土曜日も日曜日も働くなんて、大したものだと思いますよ。

仮に我々に、お金と暇があったら、どうするでしょうか。あなたの国に行ったり、欧州をくまなく歩いたりするでしょうか。そんなことしないと思いますね。多分、その山の向こうにさえ滅多に行くことはないでしょう。普段と大して変わらない暮らしをしている気…

ひろゆき 著『叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」』より。 教育の真実。「謎の慣習」に従い続ける人たち。

僕はこれまで、著書やSNSで「考え方」について述べてきました。でも、その前に、正しい知識は正しい知識として、ちゃんと伝えていかなくては、と思うようになりました。(ひろゆき『叩かれるから今まで黙っておいた「世の中の真実」』三笠書房、2020) こん…

猪瀬直樹 著『言葉の力 「作家の視点」で国をつくる』より。「作家の視点」でクラスをつくる。

文章とは何かというと、引用ができるか、内面に浮かんだことを、すでにある作品の表現や事実に結びつけられるかどうかがすべてです。引用をするためには読書が必要です。ある現象のバックグラウンドがわからなくては、いま起きていることとつなげることがで…

映画『アイヌモシリ』(福永壮志 監督・脚本)より。少年の成長譚。イオマンテと、葛藤と。

テイクを重ねてもうまくいかなかったある時に、幹人君から役の内面について詳細な説明を求められた時は気が引き締まる思いがし、撮影が続く内に彼が立派な役者へと成長していくのを感じた。(劇場用パンフレット『アイヌモシリ』大秦株式会社、2020) おはよ…

猪瀬直樹 著『天皇の影法師』より。なぜ森鴎外は元号にこだわったのか。

遺言は、こう続いている。「死ハ一切ヲ打チ切ル重大事件ナリ。奈何ナル官憲威力ト雖此ニ反抗スル事ヲ得スト信ス。余ハ石見人森林太郎トシテ死セント欲ス。宮内省陸軍皆縁故アレドモ生死別ル、瞬間アラユル外形的取扱ヒヲ辞ス。森林太郎トシテ死セントス、墓…

角幡唯介 著『探検家の憂鬱』より。教員の憂鬱。無意識のどこかで身体性の回復を欲している。

そんな子供たちは集団登下校に象徴される「鳥かご」の中で優しく育てられたので、無意識下で自分が傷つくことを何よりも恐れるようになり、全他人を慮り全他人から慮れるような、生ぬるい倒錯した人間関係が真実なのだと錯覚するようになって、躊躇なく声高…

米澤晋也 著『指示ゼロ経営』より。環境を整えた上で、リーダーが「何もしない」とうまくいく。

自律的という性質を考えると「作る」ではなく「なる」と考える方が自然です。 これは料理で例えるとわかりやすいと思います。 例えば「今夜の晩ごはんは野菜炒めを作る」と決めたとしましょう。そのために必要な食材を買ってきてレシピ通りに作ると野菜炒め…

猪瀬直樹 著『こころの王国 菊池寛と文藝春秋の誕生』より。学級担任や管理職に相応しいのは、夏目漱石ではなく、菊池寛。

ある作品を読んで、うまいうまいと思いながら、心を打たれない。他の作品を読んで、まずいまずいと思いながら、心を打たれる。ある作品を読んで、よく描けていると思いながら、心を打たれない。他の作品を読んで、ちっとも描けていないと思いながら心を打た…

角幡唯介 著『空白の五マイル』より。危機があるから、驚喜もある。

岸壁を高巻き始めたのが午後一時だった。ジャングルの中で格闘しているうちに日没が近くなり、あたりは次第に暗くなり始めた。高巻きを終えるのに二、三時間と考えていたが、一向に岩壁を越えられそうになかった。山のスケールを見誤っていたのだろう。川や…

角幡唯介 著『探検家の事情』より。10年後には、小学校の図書室の伝記の棚に角幡唯介さんの本がありそうだな。

ところが探検をあつかった本格的なノンフィクション作品では、こうした普段の小市民的日常は描けない。じつはこれは私にとってはけっこうストレスだ。私の探検という非日常は日常があることによってはじめて支えられているのに、ベースとなる日常を切断して…

映画『ミドリムシの夢』(真田幹也 監督)より。なんで目の前のベンツには違反切符を切らないんだ?

どう考えても、ミドリムシが悪いわけではない。だったら、我々がいまとっている方法が悪いのだ。それならば、改善すればいいじゃないか。(出雲充『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』ダイヤモンド社、2012) おはようございます。出雲充さんの…

幡野広志 著『他人の悩みはひとごと、自分の悩みはおおごと。』より。人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ。

菩薩ってなんか遠い目してるじゃん。あれたぶん誰かの苦しい話を聞きながら別のこと考えてるよ。誰かの心を支えるというのは、自分の心を削ることでもあるんです、でも削ったぶんがそのまま相手の心に上乗せされるわけでもないので、共倒れになることもある…

猪瀬直樹 著『救出 3.11気仙沼公民館に取り残された466人』より。ファクトとロジックは人を救う。

田原 もうすぐ津波が来る、その大騒ぎのなかで、よくぞ協力し合えるものですね。猪瀬 ふだんから訓練していたからでしょう。取材を進めてみてよく分かりましたが、近所の住民たちの結束力がとにかく強い地域です。製氷工場や魚の加工工場などが多い一帯で、…

角幡唯介 著『そこにある山』より。カーナビに頼ると、大人は道を覚えない。担任に頼ると、子どもは他者と関われない。

目的地に到達することだけを優先し、到達するまでのプロセスは無意味であると切りすてたとき、人は自分では気づかない重要な何かをうしなっている。便利であるということは、言いかえれば、目的を達成するまでの労力を省くということである。この省かれた労…

猪瀬直樹 著『ピカレスク 太宰治伝』より。井伏さんは悪人です。太宰さんも悪人です。

太宰治心中事件の謎は、死後、半世紀を経たいまも封印されている。「井伏さんは悪人です」が、太宰の自殺にどう関わっているのか。死ぬ直前に溢れ出た想いが遺書に込められたとすれば自殺の動機に含めぬわけにはいかぬ。(猪瀬直樹『ピカレスク 太宰治伝』文…

頭木弘樹 著『食べることと出すこと』より。この人には何か、事情や理由があるかもしれない、と思える想像力を子どもたちに。

「食べること」が困難になった後の経験について、私が長々と書いてきたのも、何か文句や主張があるからではなく、「経験しなければわからないこと」について、書けることだけでも書くことで、そのほんの一部だけにしろ、経験していない人にも伝わったとした…

映画『鬼滅の刃 無限列車編』(外崎春雄 監督)& マル激「『鬼滅の刃』が突きつける人間の本来あるべき姿とは」より。煉獄杏寿郎の生き方に学ぶ!

外崎 炭治朗にとって、煉獄は彼の人生を変える大事な存在になっていきます。煉獄の言葉や表情、アクション、そして生き様を観ていただきたいです。(映画パンフレット『鬼滅の刃 無限列車編』アニプレックス、2020) おはようございます。昨日、映画『鬼滅の…

猪瀬直樹 著『マガジン青春譜 川端康成と大宅壮一』より。青春時代のトラウマを抱え続け、再解釈して磨き続ける。

川端は孤児という劣等感に苛まれている。劣等感だけでなく、孤児ゆえに他者との距離感がわからない。父親や母親、兄弟や姉妹というものがわからないから、友人との心を許した交わり方も心得ない。自然の生態系から拒絶されている。孤独である。だがもはや孤…

坂口恭平 著『Pastel』より。まとまらない人の坂口さんは、教育者でもあるなぁ。

土にクワを入れた。クワを持ったのも初めてだった。でもクワともなぜかウマがあった。どう耕せばいいかということがすぐにわかったのだ。わかったというか、土から受ける何かを感じた。土を耕しているのは僕だけじゃなくて、土もまた、何か別のものに変わろ…