田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

近内悠太 著『利他・ケア・傷の倫理学』より。自己変容とは、物語文の予期せぬ改訂の別名である。

やさしさの一人相撲から、二人相撲へ。 あなたと私が関わることで、私自身が変容する。私自身が救われることになる。 そんな理路を、一緒に進んでいってもらえたら。(近内悠太『利他・ケア・傷の倫理学』晶文社、2024) こんばんは。昨日、勤務校のお別れの…

笠井亮平 著「『RRR』で知るインド近現代史」より。非・非暴力の価値。

ガンディーの「不在」は多くの評論家やメディアが気になったようで、S・S・ラージャマウリ監督にこの点を問い質している。たとえば米誌『ニューヨーカー』は彼へのインタビューで、「スバース・チャンドラ・ボースやバガト・シンのような歴史的人物を目立…

横道誠 著『イスタンブールで青に溺れる』より。横道誠さんの本に溺れる。

発達障害の診断を受けてから、当事者研究(自分の疾患や障害を仲間と共同研究することで、生きづらさを軽減させる精神療法)に取りくんだ僕は、本書を書きながら、自分に何が起こっていたのかを、遅ればせながら理解できるようになっていった。当事者研究の…

横道誠 著『ある大学教員の日常と非日常』より。苦悩することによって人生は輝きを増す。

僕は従来からフランクルには強く共鳴し、論文を書いたこともあるし、『唯が行く!』で当事者研究の思想的源泉として解説した。苦悩することによって人生は輝きを増す、苦悩することそのものに「体験価値」があるというフランクルの思想は、苦悩だらけの僕の…

谷口たかひさ 著『シン・スタンダード』より。教員が生きづらいのは、日本の常識しか知らないから。

僕は、毎日のように全国の学校で講演させてもらっている。 そんななか違和感を抱くのは、今の日本の小学校の先生たちの驚きを隠せないほどの「仕事量の多さ」だ。 通知表だって、とても大変な仕事のはず。「当たり前のようにある」「これまでもそうしてきた…

横道誠 著『村上春樹研究』より。目には目を、ポリフォニーにはポリフォニーを。

確実に言えることは、大江がいなければ村上は存在しなかったということだ。そして、村上が大江を否定しながらサンプリングすることで、村上は村上になることができた。ふたりの「魂」はあまりにも近すぎて、年少の作家として出発した村上は、自分が自分にな…

朝井リョウ 著『風と共にゆとりぬ』より。為になりつつ、心配にもなりつつ、ただただ楽しい。

勤めていた会社を辞めてから、早くも二年が経過した。今のところ心身(肛門以外)共に健康に過ごせているが、兼業生活に戻りたいな、と思うことがしばしばある。それはお金のためでも、社会とつながるためでもなく、単純に、会社勤めをしていたころのほうが…

三浦英之 著『涙にも国籍はあるのでしょうか』より。この国はまだ東日本大震災における外国人の犠牲者数を知らない。

その途上のインドで、私は人生が変わるような体験をした。ある朝、親しくなったインド人に屋台に連れて行かれ、そこで食事をご馳走になった私は、気がつくと身ぐるみ剥がされて道ばたの下水道に横たわっていた。どうやら飲食物に睡眠薬が混入されていたよう…

横道誠 著『海球小説』より。もしも戦後日本がディズニーランドではなかったら。

「探究」の時間は、いつもこんな具合だ。ミノルはいろんなクラスメイトにつきあわされて、ある意味では「モテる」。じぶんが好きなものをなんでも探究して良いというこの時間、クラスメイトたちはよく、いろんな外国語を身につけるために練習に耽っている。…