田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ポール・タフ 著『私たちは子どもに何ができるのか』より。非認知能力は子供をとりまく環境の産物である。

生徒の標準テストの得点を、毎年確実に上げることのできる教師がいる。こうした教師は、現行のすべての評価システムにおいて最も高く評価され、最も高い報酬を受けている。しかしジャクソンは、生徒の非認知能力の代替尺度を確実に上げることのできる教師が…

江澤隆輔 著『教師の働き方を変える時短 5つの原則+40のアイデア』より。空気を読むな、本を読め。授業準備の時間を先に決める。

忙しすぎると、学校の「命」であるはずの授業のための準備が疎かになってしまいます。中学校では1日に1時間から2時間程度の「空き時間」があり、その時間に教材研究などをすべきものでした。しかし、現在は授業とは関係のない雑務に追われ、十分に準備が…

保坂展人 著『学校だけが人生じゃない』より。絶望した少年は退学という道を選び、教科書を閉じて人体実験の旅に。

そんな僕に必要なのは「学校」ではない。この世の中にはどういう人が生きていて、どんな仕事があって、どんな喜怒哀楽があって、世の中の苦さも温もりも知る「場」を僕は求めていた。そこでこそ自分を見つめ直すことができる。そう思った。あえて言えば、世…

吉本ばなな 著『うたかた/サンクチュアリ』より。本棚を想像力のサンクチュアリと見立てる。

「ええとね、体のどこかをちょっと切って血を流すと、すっきりするような気が、しない? それで、ためしてみたくてね。でもこわくてね。……子供の涙っていうのは、強いものね。いろんなことを思い出したわ。あなたがまだ小さくて、育てることに夢中だった若い…

神保哲生、宮台真司 著『反グローバリゼーションとポピュリズム 「トランプ化」する世界』&「マル激(第1002回)」より。つまり感情教育の問題!

彼がその講義で語ったのは、米国人も米国の学者も「人権とは何か」についてのんきに議論をしているが、いい加減にしてほしい、米国人は1965年まで黒人と女性を人間扱いしてこなかったではないか、ということでした。「人権とは何か」を長らく議論しても…

金原ひとみ 著『パリの砂漠、東京の蜃気楼』より。頑なな才能と生きづらさと。

何故自分が二度も赤ん坊を育てることができたのか、今となっては全くもって信じられないのだ。あの時の自分には何かが乗り移っていたようにしか思えない。二人目の子が五歳を超えた頃から、赤ん坊や赤ん坊を育てる人たちに壁を感じるようになった。子どもを…

東洋館出版社 編『ポスト・コロナショックの学校で教師が考えておきたいこと』より。学校現場に革新と余白を。

多くの先行研究がこれまで示唆してきた結論は「オンライン学習は、対面授業と比べて学習効果が高いか、ないしは同等」というのが定説だと思う。わたしがオンライン授業を一か月にわたり行ってきた経験からも、おそらく「オンライン授業の学習効果は対面授業…

吉本ばなな 著『キッチン』より。わらぐつの中にも、キッチンの中にも、男女を結び付ける神様がいる。

本当のいい思い出はいつも生きて光る。時間がたつごとに切なく息づく。 いくつもの昼と夜、私たちは共に食事をした。(吉本ばなな『キッチン』新潮文庫、2002) おはようございます。入口があって出口がある。恋に始まり、恋に終わる。蜂飼耳さんの『なまえ…

神保哲生、宮台真司 著『増税は誰のためか』より。未来のために、教育にお金を。

日本では、小中学生の「塾通い現象」が広がるのが1970年あたりで、75年頃から家計における教育費が増えてきます。この時期に進んだ「日本的学校化」のメカニズムは、どう考えても社会貢献的動機を欠いているんです。「学校化」とは、成績という一元的…

中村文則 著『R帝国』より。「幸福とは閉鎖である」 VS. 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」

「あなたが今殺した人はとてもいい人だったのあなたのように虐げられている人達の味方で世界を不平等から変えようとしていた人なの。あなたは何をしてるのあなたは何をしてるのあなたの神がこんなことを命令すると思うの? 導師か誰かが命令したのでしょうで…

重松清 編著『教育とはなんだ』より。上げ膳据え膳の無言給食から、子どもたちはなにを学ぶのか。

小学何年生のときだったか、同級生の女子があやまって牛乳をこぼしてしまったら、担任の先生は「もったいない!」と言って、机の上に広がった牛乳をカップに集めて飲み直せと命じた。 そういう時代の給食から、ぼくたちはなにを学び、なにを学べなかったのか…

重松清 著『小学五年生』より。小学五年生はマジックアワーみたいなもの。

久美子ねえちゃんは、二年後に別の男のひとと結婚をした。今度のひとはおじさんやおばさんにすぐに気に入られて、少年の両親も「久美子ちゃんもこれで幸せになれるよ」と喜んでいた。でも、そのひとは、少年の歳の離れたお兄さんにはならなかった。少年はも…

日垣隆 著『信州教育解体新書』より。外から見ると、内部であたりまえと思っていることも、相対化して眺めることができる。

授業が始まってからが、また驚いた。四〇人ほどの参観者たちが、いっせいにメモをとりだしたのだ。ものすごく熱心にメモの手を走らせる。どうしてあんなにいっぱい、メモすることが存在するのだろうか。たいした授業では決してない。マンガでも描いているの…

野口晴哉 著『風邪の効用』&「マル激(第1000回)」より。日本社会に風邪とマル激の効用を。

しかし風邪の治療に工夫しすぎた人は、風邪を経過しても体量配分比の乱れは正されず、いよいよひどい偏りを示すこともある。風邪の後、体の重い人達がそれで、他の人は蛇が皮をぬいだようにサッパリし、新鮮な顔つきになる。風邪は万病のもとという言葉に脅…

村上春樹 著『村上T 僕の愛したTシャツたち』より。KEEP CALM AND READ MURAKAMI & MATH!

走り終えた後、レストラン『リーガル・シーフード』に行って、チェリーストーンという地元特産の貝を食べながら、サミュエル・アダムズの生ビールを飲むのが好きだった。レースの最後の方は、いつもそのことを考えながら、力を振り絞って走っていました。冷…

松岡亮二 著『教育格差』より。学校は午前だけにして、午後はフォローすべき子の「違う扱い」を求む。

日本の義務教育制度には(特に他国と比較すると)高度に標準化された「平等化」機能があるし、学校現場でも個人間の差異が表面化しないよう「平等」を重視する傾向がある(苅谷2009)。ただ、ここでの「平等」は「同じ扱い」(equal treatment)を意味し、処…

中村文則 著『惑いの森』より。アリとキリギリス → アリとセミ → 片隅で。教材に、惑う。

やがてセミは力尽き、コンクリートの地面に落ちる。セミは狭い視界の中に、ぼんやりとアリの姿を捉える。セミの身体に電流のようなものが走る。恐怖だ。なぜこんな小さな相手に恐怖を感じるのか、セミにはわからない。これが恐怖なのかもわからない。理由は…

浅生鴨、幡野広志、田中泰延、他『雨は五分後にやんで』より。コロナがやんだら、蒼を取り戻そう。

苦しいときにおもい浮かべる息子の笑顔は創造ではなく、いつも再生だ。日常の生活のなかで笑っていた息子の記憶が、いまの出来事と関係なく再生される。いま一緒にいる時間で息子のかなしい顔を減らすことができれば、穏やかな死の間際にかなしい顔をした息…

本田由紀 著『教育は何を評価してきたのか』より。コロナ禍を奇貨として、教育の「中身」や「形」を変えよう。

なお、日本の教育の問題点として繰り返し指摘されてきた事柄として、「教育格差」がある。確かに、生まれ落ちた家庭の経済的・文化的・時間的・社会関係的な資源が多いか少ないかによって、子ども世代の教育達成に明確な差がついていることは、日本でも主に…