田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2024-01-01から1年間の記事一覧

泉房穗 著『政治はケンカだ!』より。故郷の明石を誰よりも愛し、誰よりも憎んでいる。

それにしても、10歳から明石市長を目指していたとはすごい。泉 はい。冷たいまち・明石を優しくするのが自分の使命だと思い、そのために生きていこうと心に決めたのです。東大受験のための勉強中に眠くなっても、「今、寝てしまったら救える人も救えなくな…

横道誠 著『唯が行く!』より。大切なのはポリフォニー、複数性の共存です。

一対一の対話は、たしかに既に「ダイアローグ」なのです。でもオープンダイアローグとしては不充分なんです。ひとつの声でもふたつの声でもなく、多数の声が響いてほしい。というのも、声がふたつだけならハーモニーを奏でやすく、つまり調和しやすく、結果…

横道誠 著『ひとつにならない』より。ひとつになんかならないし、なれない。

ADHDがあると、無軌道な人生を爆走する傾向があるが、自閉スペクトラム症者には規範意識が強いという逆向きのベクトルが備わっている。結果として、支離滅裂な日々を送りながら、不思議なくらいマジメという謎の人生が出現してくる。私も全くそういう人…

近内悠太 著『利他・ケア・傷の倫理学』より。自己変容とは、物語文の予期せぬ改訂の別名である。

やさしさの一人相撲から、二人相撲へ。 あなたと私が関わることで、私自身が変容する。私自身が救われることになる。 そんな理路を、一緒に進んでいってもらえたら。(近内悠太『利他・ケア・傷の倫理学』晶文社、2024) こんばんは。昨日、勤務校のお別れの…

笠井亮平 著「『RRR』で知るインド近現代史」より。非・非暴力の価値。

ガンディーの「不在」は多くの評論家やメディアが気になったようで、S・S・ラージャマウリ監督にこの点を問い質している。たとえば米誌『ニューヨーカー』は彼へのインタビューで、「スバース・チャンドラ・ボースやバガト・シンのような歴史的人物を目立…

横道誠 著『イスタンブールで青に溺れる』より。横道誠さんの本に溺れる。

発達障害の診断を受けてから、当事者研究(自分の疾患や障害を仲間と共同研究することで、生きづらさを軽減させる精神療法)に取りくんだ僕は、本書を書きながら、自分に何が起こっていたのかを、遅ればせながら理解できるようになっていった。当事者研究の…

横道誠 著『ある大学教員の日常と非日常』より。苦悩することによって人生は輝きを増す。

僕は従来からフランクルには強く共鳴し、論文を書いたこともあるし、『唯が行く!』で当事者研究の思想的源泉として解説した。苦悩することによって人生は輝きを増す、苦悩することそのものに「体験価値」があるというフランクルの思想は、苦悩だらけの僕の…

谷口たかひさ 著『シン・スタンダード』より。教員が生きづらいのは、日本の常識しか知らないから。

僕は、毎日のように全国の学校で講演させてもらっている。 そんななか違和感を抱くのは、今の日本の小学校の先生たちの驚きを隠せないほどの「仕事量の多さ」だ。 通知表だって、とても大変な仕事のはず。「当たり前のようにある」「これまでもそうしてきた…

横道誠 著『村上春樹研究』より。目には目を、ポリフォニーにはポリフォニーを。

確実に言えることは、大江がいなければ村上は存在しなかったということだ。そして、村上が大江を否定しながらサンプリングすることで、村上は村上になることができた。ふたりの「魂」はあまりにも近すぎて、年少の作家として出発した村上は、自分が自分にな…

朝井リョウ 著『風と共にゆとりぬ』より。為になりつつ、心配にもなりつつ、ただただ楽しい。

勤めていた会社を辞めてから、早くも二年が経過した。今のところ心身(肛門以外)共に健康に過ごせているが、兼業生活に戻りたいな、と思うことがしばしばある。それはお金のためでも、社会とつながるためでもなく、単純に、会社勤めをしていたころのほうが…

三浦英之 著『涙にも国籍はあるのでしょうか』より。この国はまだ東日本大震災における外国人の犠牲者数を知らない。

その途上のインドで、私は人生が変わるような体験をした。ある朝、親しくなったインド人に屋台に連れて行かれ、そこで食事をご馳走になった私は、気がつくと身ぐるみ剥がされて道ばたの下水道に横たわっていた。どうやら飲食物に睡眠薬が混入されていたよう…

横道誠 著『海球小説』より。もしも戦後日本がディズニーランドではなかったら。

「探究」の時間は、いつもこんな具合だ。ミノルはいろんなクラスメイトにつきあわされて、ある意味では「モテる」。じぶんが好きなものをなんでも探究して良いというこの時間、クラスメイトたちはよく、いろんな外国語を身につけるために練習に耽っている。…

横道誠 著『創作者の体感世界』より。天才による天才たちの当事者批評を味わう。

当事者批評は、患者の側が作品論ないし作者論をおこなうことで自己の体験世界を表明する点で、「逆病跡学」と位置づけられると考える。本書は、そのようなものとしての当事者批評を、論集のかたちで実践し、筆者の体験世界を改めて立ちあげていく。それはど…

横道誠・青山誠 編著『ニューロマイノリティ』より。教員のみなさん、必読書です。

「ニューロマイノリティ」がタイトルである本書の読者のみなさんにこんなことを言うのは野暮な話かもしれません。ですがあえて言わせていただくと、ニューロマイノリティな人たちへの支援や教育がなすべきことは、多数派の平均値である「定型発達」に、なん…

横道誠 著『発達障害の子の勉強・学校・心のケア』より。保護者と教員に、この本、おすすめします!

まわりに合わせないといけない、それなのにまわりの子のようにはうまくできない、という場面を多く経験するのが発達障害の子どもですから、イベントに参加するのが苦痛だと感じることも多いです。 たとえば運動会は部分参加を、マラソン大会は欠席または別の…

横道誠、頭木弘樹 著『当事者対決!心と体でケンカする』より。生きづらさの往復インタビュー。

横道 私は、やっぱり健康な人との会話が難しいと感じます。基本的に「絶望」マインドだからでしょうね。 発達障害のない人向けの自助グループもやってるんですけど、ありがたいことにというか、参加者はみんな鬱傾向なんですよね。鬱っぽくなって、精神疾患…

横道誠 著『発達障害者は〈擬態〉する』より。それは本当なのか?

発達界隈では、カモフラージュは「擬態」という名で広く知られてきました。海外の研究では自閉スペクトラム症のカモフラージュばかりが目立って注目されていますが、発達界隈では擬態は発達障害者に広く見られるものだと認知されています。(横道誠『発達障…

小澤征爾 著『ボクの音楽武者修行』より。世界のオザワの自伝的エッセイ。

スクーターで地べたに這いつくばるような格好でのんびり走っていると、地面には親しみが出る。見慣れぬ景色も食物も、酒も空気も、なんの抵抗もなく素直に入って来る。まるで子供の時からヨーロッパで育った人間みたいに。美人もよく目についたが、気おくれ…

児玉真美 著『安楽死が合法の国で起こっていること』より。大きな絵を描くと同時に、小さな物語を大切にすること。

もう生きられないほど苦しいという人がいるなら死なせてあげたい、そういう人のために安楽死を合法化してあげようと考える人たちが善意であることは疑わない。けれどひとりひとりの善意が集まって世論を形成し、その世論の勢いに押されて(乗じて?)制度と…

幡野広志 著『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』より。はじめに写真ありき。

息子が生まれた日が雨だったから、ぼくは雨の日が好きなのだ。いまでも雨の日に一人で車を運転していると、息子が生まれた日のことを思い出す。ブレーキランプに照らされたフロントガラスの赤い雨粒が、ぼくにとっては思い出だ。今日は雨だけど、雨の日は何…

つかこうへい 著『蒲田行進曲』より。綺麗は汚い。汚いは綺麗。

映画スターの銀四郎と、その弟子でスタントマン専門の大部屋俳優ヤス、そして銀四郎と同棲して彼の子をはらみ、ヤスに押しつけられてその妻となる女優の小夏。ヤスとともに暮らすようになってからも、銀四郎と小夏は会いつづけている。 彼らの関係が特異なの…

養老孟司 × 茂木健一郎 × 東浩紀 著『日本の歪み』より。先ずは日本の歪みを知ることから。

茂木 弔いの形もそうですが、教育もそうですよね。アクティブラーニングとか探究学習とかいろいろ出てきていますが、日本の伝統的な漢文の「素読」などの学習法とうまく接ぎ木できていないような気がします。東 人間関係を学ぶところが学校しかないことも問…

ダニエル・キイス 著『アルジャーノンに花束を』より。これを読まないまま終わる人生を歩んではいけない。

医者には向いていないと自覚し、作家になろうと思い定め、生活費を得るために教師の資格をとって教職についた。知的障害児の教室で教える仕事も引き受けて、この教室で、あの少年と出会った。授業のあと、少年はキイス先生のもとにやってくるとこう言った。…

藤原正彦 著『スマホより読書』より。算数より国語。論理より情緒。

藤原 最近、日本の小学校で児童一人につき一台、タブレット(電子端末)を配っている、と聞いたときは目の前が真っ暗になりました。教科書をなくす第一歩と思います。小学生から教科書も読まず、自由にタブレット画面に没頭させたら、本の世界に対する憧れな…

マイケル・サンデル 著『実力も運のうち』より。能力主義は正義ではない。

GDPの規模と配分のみを関心事とする政治経済理論は、労働の尊厳をむしばみ、市民生活を貧しくする。ロバート・F・ケネディはそれを理解していた。「仲間意識、コミュニティ、愛国心の共有 ―― われわれの文明のこうした本質的価値は、ただ一緒に財を買い…

猪瀬直樹 著『日本復活のシナリオ』より。片足は教室に。もう片方の足は社会に。

猪瀬 ―― 彼は、「日本の学生はデカルトが何年に生まれて、いつ活躍したかを知っていますが、デカルトの本は読んでいないですね」と笑っていました。彼らは週に10時間、哲学の授業をやって、しかも自分の考えをレポートとして何枚も書かされるそうです。自…

サマセット・モーム 著『月と六ペンス』より。何に対して誠実であるべきか。

「じゃあ、どうして奥さまを捨てたんです?」「絵を描くためだ」 わたしは、目を丸くして相手の顔をみた。意味がわからなかったのだ。この男は頭がおかしいのだろうかと思った。覚えておいてほしいが、わたしはまだ若かった。ストリックランドがただの中年男…

滝田明日香 著『サバンナの宝物』より。強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。

私は強くならなきゃ生きていけない環境にいた。強くならなきゃつぶされてしまう。自分のアイデンティティや存在さえも、強くアピールしなければ存在しないも同然の社会に連れてこられてしまったのだから。「自分の意見を持て。じゃないと白人社会につぶされ…

猪瀬直樹 著『ニッポンを読み解く!』より。戦後50年は金属疲労を起こしはじめた時間。では、その次の50年は?

⚪先日、あるテレビ番組で東京HIV訴訟原告団の川田龍平君といっしょになった。番組終了後、彼と雑談していたら、「いま、『日本/権力構造の謎』を読んでいるところなんです」と言うのです。つまり、ウォルフレンさんのいう日本的な〈システム〉、この場合…

磯﨑憲一郎 著『日本蒙昧前史』より。我々は滅びゆく国に生きている。

こういう面白い事件、後の時代であればぜったいに起こり得ない、人に語って聞かせたくなるような事件がじっさいに起こった分だけ、やはり当時の世の中はまだまともだった、そう思いたくもなってしまう、核エネルギーの平和利用は可能であると主張し、交通事…