まわりに合わせないといけない、それなのにまわりの子のようにはうまくできない、という場面を多く経験するのが発達障害の子どもですから、イベントに参加するのが苦痛だと感じることも多いです。
たとえば運動会は部分参加を、マラソン大会は欠席または別の種目への振り替えを認めてもらえていたら、どれほどありがたかったでしょう。学芸会の演劇やダンスも苦痛でした。裏方として活躍するのに専念させてもらえたら、どれだけ楽しかったでしょう。じぶんの体を使って表現するのではなくて、じぶんの芸術熱を駆使して創作や演出を、衣装や装飾の用意をやりたかったのです。
「みんなが同じようにやらなくてはならない」という教育は有毒だと思います。
(横道誠『発達障害の子の勉強・学校・心のケア』大和書房、2023)
こんにちは。昨夜、同僚と二人でもと校長の誕生日をフライング気味に祝いに行ったところ、その校長さん行きつけのお店で、手羽先が62本も出てきたんですよね。もうすぐ62歳になるから、62本。無料です。おそらくそのお店には発達界隈のアイデアマンがいるのでしょう。とはいえ、ただより怖いものはないとはよくいったもので、当然、
食べきれません。
もちろん、誕生日会だからといって、食べきれないのに無理強いされるなんてことはありません。最初に30本頼み、追加で10本頼み、残り22本のうちの10本はお土産にしてもらって、残りの12本はオーダーせずにごめんなさい。冒頭の引用に絡めていうと、部分参加や別の種目への振り替えが認められるということです。もしもそういったことが認められずに「全部食べなければいけない」みたいな縛りがあったとしたら、それは有毒でしょう。教育だって同じです。運動会も学芸会も展覧会も、誕生日会と同じように、もっとゆるくていい。ついでにいえば、コロナ前のフルパッケージに戻さなくていい。そういった見方・考え方を全国の教員に届けることができれば、有毒な教育を少しは解毒できると思うのですが、
どうでしょうか。
横道誠さんの『発達障害の子の勉強・学校・心のケア』を読みました。発達障害の当事者である横道さんが、発達障害の子をもつ親に向けて《その人たちに語りかけるような意識で》書いたという一冊です。言い方を換えると、
親子でやる当事者研究のすすめ。
1章 基本的なことについて
2章 火星人の群れに囲まれた地球人の子ども
3章 親がまず冒険のための装備と仲間を整える
4章 敵はストレスとトラウマ
5章 社会性のダイバーシティ
6章 個性、文脈、当事者研究
7章 ゲーム式勉強攻略法
8章 フロー状態でやるテスト勉強
9章 ひとり探検隊のキャリア形成
10章 守るもののために諦めていく
以上、目次です。ざっくりいうと、1章~5章が基本編で、6章~10章が実践編です。基本編には、冒頭の引用(5章より)に加えて、例えば次のようなこと(2章より)が書かれています。
発達障害の子どもを見ていると、わがままでじぶん勝手に見えることが多いと思います。でも、定型発達の子どもたちは、自然に行動するとうまくいくという社会が作られているのに、発達障害の子どもたちは、なぜかじぶんが自然に行動すると叱られ、ののしられ、いじめられ、仲間外れになるという世界に生きています。
定型発達の子どもをキツネザルに、自閉スペクトラム症の子どもをネコに、注意欠陥多動症の子どもをイヌに例えたら、90匹以上のキツネザルにまじって、1匹か2匹しかいないネコや、5匹くらいのイヌが同じ柵のなかで生きのびて行かなくてはならないという状況なのです。
キツネザルがうまくいくのは、彼ら彼女らが多数派だからです。社会だったり教室だったり、その柵のなかの「普通」や「空気」をつくっているのは多数派です。少数派のネコやイヌにはその空気が読めません。だから普通に行動するとKYだなんて言われてしまいます。親や担任は、この本に加えて、横道さんと村中直人さんが書いた『海球世界』を読むなどして、ネコやイヌにとっての「普通」や「空気」をよりリアルにイメージし、その子に合った方法だったり環境だったりを独自開発していく必要があります。なぜなら《生きづらさに悩むおとなむけの知恵として、「他人からどう思われるか」よりも、「じぶんの心に正直になる」ほうが、人生はずっと豊かになるという真理が、広く知られて》いるからです。発達障害者は〈擬態〉するとはいえ、キツネザルに擬態したところで、ネコやイヌが幸せになることはありません。
では、具体的にはどうすればいいのか?
なお本書ではここから、それなりの年齢になった発達障害の子どものためのサバイバル術の情報が詰まっています。本書で、それを発達障害の子どもを持つ親のみなさんに伝えておくことになりますが、それは成長後の子どもにとって頼れる存在になってもらえるようにという願いにもとづいてのことです。私個人の経験や信念に関する話が多くなっていますが、あくまでも当事者研究の叩き台として、つまり「あくまでも参考意見」として利用していただけると、うれしいです。
6章より。発達障害の当事者である横道さんは、宗教二世の当事者としても知られていて、幼少期に母親から虐待を受けていたことを公言しています。だからこそ、写真家の幡野広志さんの本のタイトル『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる』に似た《成長後の子どもにとって頼れる存在になってもらえるように》という願いを、発達障害の子をもつ全国の親に届けたいのでしょう。どんなサバイバル術の情報が詰まっているのか、ぜひ手にとって読んでみてください。
何冊も読破してくださって、感謝します!「発達障害の子どもたちは、偶然の結果として少数派に属してしまったにすぎない、という見方・考え方を働かせることによって、想像力が飛躍的にアップする一冊」。まさに。そして、つぎはぜひとも『海球小説──次世代の発達障害論』(ミネルヴァ書房)を! https://t.co/9OTdwj5hu4
— 横道誠 (@macoto_y) February 17, 2024
横道さんからすすめていただいた『海球小説』は、昨日読み終わりました。小学5年生の国語に「この本、おすすめします!」という単元があって、子どもたちにも「すすめられたら読みましょう」なんて言っているので、有言実行です。この3連休も、横道ワールドに浸ります。
私なりの当事者研究。
没頭中。