田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

ハン・ガン 著『すべての、白いものたちの』より。ノーベル文学賞作家による65の物語。

単語を一つ書きとめるたび、不思議に胸がさわいだ。この本を必ず完成させたい。これを書く時間の中で、何かを変えることができそうだと思った。傷口に塗る白い軟膏と、そこにかぶせる白いガーゼのようなものが私には必要だったのだと。(ハン・ガン『すべて…

レイ・ブラッドベリ 著『華氏451度』より。タイトルの意味、知っていますか?

「これからどうすればいいんでしょう? 本はぼくらを助けてくれるんでしょうか?」「必要なものの三つめが手にはいりさえすれば。ひとつめは、最前いったとおり、情報の本質だ。二つめは、それを消化するための時間。そして三つめは、最初の二つの相互作用か…

横道誠 著『「心のない人」は、どうやって人の心を理解しているか』より。教員に勧めたい。

低学年くらいのときは、たいした思い出がない。たまたま一緒にいる子と遊んでいるという感じかな。自閉スペクトラム症的なエピソードはちょこちょこあって、場の空気を凍らせたりとかは、ありました。人の心がないっていうか。道徳の授業で、車に撥ねられた…

森博嗣 著『妻のオンパレード』より。違いのオンパレード。

学生に好かれるために教師をしているのではない。これは、幼稚園や小学校の先生でも同じである。子供に好かれることを動機や目的としていたら、先生として失格だ、と僕は考える。親も同じである。子供に好かれるために子育てをしているのではない。もちろん…

平野啓一郎 著『富士山』より。あり得たかもしれない人生。あり得るかもしれない人生。

―― では、職員室での人間関係を除けば、教員生活も必ずしも不満ではなかったのですね?―― そうですね。(平野啓一郎『富士山』新潮社、2024) こんばんは。おそらくは学芸会の後に飲み会を開いて、そこにいない職員の噂話や悪口で盛り上がるような《職員室で…

森博嗣 著『お金の減らし方』より。欲しいものは買う。必要なものは買わない。

他者に認められたい、という承認欲求が、このネット社会ではやや加熱しているように観察される。現代の子供たちは、相対的に大勢の大人に保護されている。しかも、褒めて育てる教育法が主流となっているから、幼い頃から、とにかく褒められるだろう。なにを…

サン=テグジュペリ 著『人間の土地』より。この世に当然の贅沢は一つしかない。

ある一つの職業の偉大さは、もしかすると、まず第一に、それが人と人を親和させる点にあるのかもしれない。真の贅沢というものは、ただ一つしかない、それは人間関係の贅沢だ。(サン=テグジュペリ『人間の土地』新潮文庫、1955) こんばんは。上記の引用の…

布施祐仁 著『従属の代償』より。国民の自立がなければ、政府の自立もない。

約6年後の1976年、日本の対中外交に背中を押される形で、米国もついに中国との国交正常化に踏み切るのです。 日中国交正常化以降、日中間の貿易額は7年間で6倍に増加していました。これに強い危機感を抱いたのが、米国の経済界でした。将来的に大きな…

三宅香帆 著『「好き」を言語化する技術』より。推しについて語るときに僕の語ること。

まあ、そりゃ学校では推しの語り方、なんて授業はありませんよね。当然です。 でも、考えてみてください。読書感想文の宿題はありましたよね。 なんでもいいから一冊本を選んで、感想を夏休み中に書いてきてね、と学校の先生から言われたことがあるはずです…

宮台真司、おおたとしまさ 著『子どもを森へ帰せ』より。ピュシスの歌を聴け。

共通項を抽象化すると、大人は「言葉、法、損得」へと閉ざされていて、子どもは「言外、法外、損得外」に開かれています。個体発生は系統発生を模倣するというヘッケルの法則は出生後にも拡張できます。これら子どもの特性は、数十万年オーダーで続いた遊動…

宮台真司、近田春夫 著『聖と俗』より。人ごとに違う凸と凹が噛み合って尊敬できるコラボがいい。

宮台 90年代の僕は一貫して、日教組的な言説に対抗してきました。日教組の「万人に無限の力がある」に対し、僕は「人ごとに違う凸と凹が噛み合って尊敬できるコラボがいい」と強調。「勝つ喜びよりも分かる喜びが大切だ」に対し、「感染動機さえあれば、す…

山内聖子 著『蔵を継ぐ』より。Think different!

行き場のない気持ちを抱えながら、家業の全てを否定するしか進む道はなかった。そこから一つ一つを変えていく。たとえ、どんなに辛い作業だったとしても、彼は信念を貫き通す。 なんと強靱な精神なんだろうと、私は圧倒された。「父と母、そして従業員の全部…

三浦英之 著『沸騰大陸』より。外に出よう。

そんな彼らの発信するニュースや写真を目にするたびに、私は彼らに対する尊敬の念と同時にある種の安堵感のようなものを覚えた。 自分は決して一人ではない――。 サン=テグジュペリが砂漠で墜落し、一滴の水も飲めずに砂の大地をさまよい歩き続けていたとき…

野矢茂樹 著『他者の声 実在の声』より。自分が変わってゆくこと。語りが変わってゆくこと。

他者 ―― 意味の他者 ―― は、固定された論理空間のもとでは姿を現さない。たとえ他者との出会いによって新たな論理空間が私のもとに開けたとしても、そこに位置づけられ理解された他者はもはや他者性を失った残滓でしかない。他者の他者性は論理空間の変化の…

山内聖子 著『いつも、日本酒のことばかり。』より。いつも、クラスのことばかり。

渡船は野生種だからこそ、のびのび育つのだと言います。「野生種は、人に育ててもらおうと思って生まれた米ではないために、自分で子孫を残そうするちからがあるので、もう、言うことを聞かないんです(笑)。でも、そこがかわいい。甘やかすと、どんどん伸…