田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、旅行、映画」

二宮敦人 著『最後の秘境 東京藝大』より。「~している時間が好き」を見つけてほしい。

僕は、「ものを作っている時間が好き」と言った佐野さんを思い出していた。 誰かに認められるとか、誰かに勝つとか、そういう考えと離れたところに二人はいるようだ。 あくまで自然に、楽しんで最前線を走っていく。 天才とは、そういうものなのかもしれない…

映画『17歳の瞳に映る世界』(エリザ・ヒットマン監督作品)より。アートは、心に傷をつける。

二人の少女が長距離バスや、列車に乗って大都会にやってくる。それは青春映画で、何度も見てきたシーンである。しかしペンシルベニアからニューヨークのバス停車場ポートオーソリティバスターミナルにやってきた17歳のオータムとスカラーに高揚感はない。…

映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』(エメラルド・フェネル監督作品)より。プロミシング・ヤング・ティーチャーは観た方がいい。

フェネルは言う。「復讐スリラーやロマンティックコメディの主人公は ―― この映画はほぼ間違いなくロマンティックコメディでもあるので――お決まりの人物像になりがちです。そこで、キャシーを私の知っている身近な人物に近づけようと思いました。クールで、…

猪瀬直樹 著『突破する力』より。何を言ったかではなく、誰が言ったか。希望も病床も、つくるものである。

道路公団民営化で僕がいわれなきバッシングを受けていたとき、彼から連絡があり、久しぶりに会うことになりました。そのとき、彼は僕に西郷隆盛の『南洲翁遺訓』をそっと手渡した。そこには次のような一節が書いてありました。「道を行う者は、天下挙て毀る…

凪良ゆう 著『滅びの前のシャングリラ』より。定時の前の全集中。生きるとは、幸せとは、家族のことと見つけたり。

「怖いに決まってるだろう。でもこうなる前の世界より、ぼくはずっと自分が好きなんだ。前の世界は平和だったけど、いつもうっすら死にたいと思ってた」 なにげなく放たれた言葉の重さに胸を衝かれた。「今は死にたくないって思ってるよ。でもあと十日しかな…

猪瀬直樹 著『空気と戦争』より。数字を誤魔化すと国が滅びる。むかし陸軍、いま都庁。むかし南進、今コロナ。

僕はいつも官僚の批判ばかりしているが、現代でも役所の三十代は極めて優秀な人が多く、改革に燃えている人材は少なくない。実際に接して、そう強く感じる。国会の大臣答弁をまとめているのは三十代くらいのキャリアだ。 日本にはそういうボトムアップなとこ…

沢木耕太郎 著『冠〈廃墟の光〉 オリンピア1996』より。初心、忘れるべからず。

だが、これがこのオリンピックを象徴していたのかもしれない。外見的には華やかだが内実の欠けたオリンピック。それはサマランチの国際オリンピック委員会が、商業主義の権化たるアメリカのテレビ局の前にひれ伏し、オリンピックのすべてをテレビ的にしよう…

梅棹忠夫 著『女と文明』より。男女のあいだに「ほんとうに人間的な愛情にみちた交渉をもつ」ためにも、長時間労働の是正を。

学校における保護者のつどいの変遷は、この事情をあきらかにものがたっている。むかしは、保護者といえば父兄であった。家長ないしはその候補者が、子女の教育の責任者であった。保護者会には父が出席した。それが、しだいに母におきかえられてきたのである…

猪瀬直樹 著『増補 日本凡人伝』より。凡人たちの声に耳を傾けることのできるリーダーを待望します。

この「凡人伝」のテーマがサラリーマンうんぬんっていうことになってるけれども、僕はしょせんサラリーマンなんてのはねえ、自分の人生観がどうのとか、カッコいいこと言ってるけれども、ホントのところはね、九割の人は無我夢中で、気がついてみたら四十、…

猪瀬直樹 著『さよならと言ってなかった わが愛 わが罪』より。全力投球でそれぞれの物語を咲かせてほしい。

7月4日木曜日の昼食会で全日程を終了した。東京から、恐れていた訃報は届かなかった。帰国する間際、太田選手と滝川クリステルさんに、ゆり子が危篤であるという事実を初めて打ち明けた。太田選手は号泣した。クリステルも細い腕を寄せ涙を流してくれた。 …

姫野カオルコ 著『彼女は頭が悪いから』より。いじめ自慢をしている人は、あいつは頭が悪いからって「素で」そう思っている。

人間として生まれて来た哀しみを描くことが小説の重要なテーマとしたら、本作品はそれを見事に描いている。“無知は犯罪に及ぶ要因”という言葉があるが、この作品の一方の主人公である大学生は、無知の典型である。その無知は、勿論、彼等にも責任があるが、…

ブレイディみかこ 著『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』より。管理職も大変だよねって、その考え、違うから。

つまり、被害者役の参加者たちは、まさに「他者の靴を履く」ことによって健太郎の被害者の心情を想像しながら、同時に自分自身の被害者たちの靴も履いているのだ。そして彼らから被害者としての怒りや恐れをぶつけられている健太郎は、最初はまるで自分自身…

猪瀬直樹 著『黒船の世紀(下) あの頃、アメリカは仮想敵国だった』より。東京五輪未来戦記。作家の感度は、国民全体を反映する。

『海と空』の結末は、すでに記したような悲惨な東京大空襲で終わった。主人公は焼け跡に立ち、ひとりつぶやく。「戦争をするつもりなら、するだけの準備が必要だった。戦争をしないつもりなら、しないだけの心掛けが必要であった。するだけの準備もなく、し…

猪瀬直樹 著『黒船の世紀(上) あの頃、アメリカは仮想敵国だった』より。歴史年表の「行間」を読むということ。

日露戦争に勝利したのちにもなお、日本はロシアを恐れた。明治40年に「帝国国防方針」が定められている。山県有朋の初めの試案では、仮想敵国は徹頭徹尾ロシアであった。だが、この試案に海軍側が意義を唱え、アメリカを仮想敵国に加えさせた。アメリカの…

映画『ブータン 山の教室』(パオ・チョニン・ドルジ監督作品)より。歌も教育も、自分のことだけじゃなくて、他人のことを祈るためにあってほしい。

本作は、ブータンのさまざまな話を継承したいという想いから生まれました。この映画のストーリーのあらゆる要素は、私がブータン中を旅したときに聞いたエピソードや、出会った人々がベースになっています。そこにこそ、ブータンという国の本当の ”価値” が…