田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

アニー・エルノー 著『嫉妬/事件』より。公の時間につながっている私の営み。法律と社会秩序が個人を苦しめる。

この種の話は、苛立ち、もしくは反発を引き起こすかもしれない、あるいは、悪趣味だと非難されるかもしれない。何であれ、あることを経験したということが、それを書くという侵すべからざる権利を与えてくれるのである。真実に優劣の差はない。それに、この…

沢木耕太郎 著『天路の旅人』より。沢木耕太郎 meets 西川一三。『深夜特急』meets『秘境西域八年の潜行』。

西川が疲れからついついうつらうつらしかかると、「寝るな」と揺り起こされてしまう。それは蒙古に帰ってからの土産話になるよう、できるだけ多くのものを見させようとする親切心からなのだった。 バルタンのこの幼児のような振る舞いに、西川も心を動かされ…

三浦英之 著『五色の虹』より。かつて「日本人、中国人、朝鮮人、モンゴル人、ロシア人」が寝食を共にした大学があった。

満州国は日本政府が捏造した紛れもない傀儡国家でしたが、建国大学で学んだ学生たちは真剣にそこで五族協和の実現を目指そうとしていた。私が建国大学を振り返るときに、真っ先に思い出されるのはそういうところです。みんな若くて、本当に取っ組み合いなが…

アニー・エルノー 著、堀茂樹 訳『シンプルな情熱』より。アートは自由にする。恋愛も自由にする。

ものを書くという営みの時間は、恋の時間とは、まったく別物だ。 けれども、ペンを執った時点では、書くのは、まさにあの、見る映画の選択から口紅選びまで、何もかもが同じ方へ、ある人の方へ向かって流れていた時間の内にとどまるためだった。最初の数行か…

落合陽一 著『忘れる読書』より。忘れるような本すらない人はダメだよ、というアイロニー。

近代をおさらいするのにうってつけの一冊が、猪瀬さんが著された『ミカドの肖像』です。事実を不可視化するシステムの中で、視えないものをあえて視ようとする日本人のマインドが、圧倒的なボリューム感で描き出されています。猪瀬さんは、自身が「MIKADO」…

田辺聖子 著『孤独な夜のココア』より。純度の高い恋愛は他から見るといやらしいものだ。でも、かっこいい。

いま何をしているのかしら。この頃、テレビで、脚色者としてちょいちょい、出てくる私の名を、彼は見てくれてるかしら。 青年ジルとアンヌ姫のように、私とアイツは、あそこで石になった。そうして三たび、私は目から鱗がおちたようにわかったのだが、アイツ…

東畑開人 著『聞く技術 聞いてもらう技術』より。聞いてもらうから、はじめよう。

「聴く」よりも「聞く」のほうが難しい。 心の奥底に触れるよりも、懸命に訴えられていることをそのまま受けとるほうがずっと難しい。 ならば、どうしたら「聞く」ができるのか。これがこの本の問いです。(東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』ちくま新書…

三浦英之 著『災害特派員』より。未来がどうなるのかなんて、結局誰にもわからない。

「今になって色々なことを言う人がいるけれどさ」と渡辺は出てきたソーセージを楊枝の先でつつきながら言った。「当時を知っている人間からすればさ、あの日、自分たちの住む町にあんなに大きな津波が押し寄せてくることを予測できた人なんて、一人もいなか…

苅谷剛彦 著『思考停止社会ニッポン』より。自粛の要請という言い回しも、教員が「自発的に残業している」という言い回しも、非科学的。

道徳とは共同体のルールである。しかも、そこでの善悪の基準は、時代によって変化し、多数派の価値観や特定のイデオロギーが力を得たりする。時に恣意的でさえある。合理的・合法的判断より情緒的判断が優先される場合も少なくない。 ここから引き出すことの…

辻仁成 著『目下の恋人』より。担任は人類学者たれ。

「じいちゃんとばあちゃんは学者だった。俺の親とは違って、頭がいいんだ。俺が頭がいいのは二人の血のせいだよ」「頭良かったっけ?」「うるせえ、いいんだよ。能ある鷹は爪を隠すって言うだろうが」「諺? どういう意味か知らない」 ヒロムは笑った。「学…

角幡唯介 著『狩りと漂泊』より。極地探検家の目下の生き方。漂泊が、すべてを生み出すのだ。

このようなわけだから、計画にもとづいて効率性を優先するかぎり、どうしても人は、そのとき起きた予想外の出来事や、その土地ならではの生の風景を見ようとしなくなる。もちろん実際に風景を見てはいるのだが、それは単に網膜に像が映っているだけ、という…

宮台真司、藤井聡 著『神なき時代の日本蘇生プラン』より。君たちが頓馬であれば、クラスは出鱈目に機能するよ。

キャンプファイヤーをやったことのある人はわかるけど、大切なのは歌や踊りじゃない。火を囲んで座っているだけで、いつもなら話さないことを友人どころか知らない人にまで話してしまうマジックです。パチパチという木の爆ぜる音を一緒に聞いているだけでも…

映画『LOVE LIFE』(深田晃司 監督作品)&『マル激(第1121回)』より。他者理解は、わかりあえないことから。

この作品に限らず、映画を作るときに一貫しているモチーフは個の孤独です。もちろん、一本の映画にはいろいろなモチーフが組み合わさっていますが、中でも自分が一番信じられるもの、普遍的だと思うものが人は孤独であるということであり、それが作品の世界…

西剛志 著『低GI食』より。脳科学者が勧める食事術。家庭科の授業にも、ぜひ。

実は糖質をたくさん摂りすぎると、逆に「血糖値スパイク」という現象が起き、脳のエネルギー不足を引き起こしてしまいます。 スパイクというのは、鋭く尖ったという意味で、シューズのスパイクの先端のように血糖値が急上昇して、急降下する様子を意味してい…

川上弘美 著『センセイの鞄』より。ひとつとして、同じ形をした愛は無い。

くそじじい。わたしは胸の中で言い、それから口に出して「くそじじい」と繰り返した。くそじじいはきっと元気に島を一周でもしているんだろう。センセイのことなんか忘れて宿の小さな露天風呂にでも入ろう。せっかく島に来たんだから。センセイがいようがい…