田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2022-01-01から1年間の記事一覧

中江兆民 著『三酔人経綸問答』より。憤怒は道義心のあらわれ。軍事ではなく、教育にお金を!

豪傑の客、「それなら、もしどこか凶暴な国が、われわれが軍備を撤廃したのにつけこんで出兵し、襲撃してきたらどうします。」 洋学紳士、「私は、そんな凶暴な国は絶対ないと信じている。もし万一、そんな凶暴な国があったばあいは、私たちはそれぞれ自分で…

猪瀬直樹 著『日本システムの神話』より。教室現場は困っているんですよ!

僕は政治の世界にコミットしたつもりではない。太宰治や司馬遼太郎と共通の直観に突き動かされただけである(東京新聞8月6日付夕刊文化欄から)。(猪瀬直樹『日本システムの神話』角川oneテーマ21、2002) こんばんは。もしも太宰治や司馬遼太郎が政治家…

三浦しをん 著『きみはポラリス』より。若手と一緒に被災地をめぐりました。彼の地はポラリス。

八歳の冬の日からずっと、強く輝くものが私の胸のうちに宿っている。夜道を照らす、ほの白い一等星のように。それは冷たいほど遠くから、不思議な引力をまとっていつまでも私を守っている。(三浦しをん『きみはポラリス』新潮文庫、2011) こんばんは。先日…

早見和真 著『新! 店長がバカすぎて』より。ケアとエンパシーときどき利他。他者理解と自己理解。

つまりはそういうことなのだ。私が認識している谷原京子と、周囲が見ている谷原京子とは少し違う。ひょっとしたら周囲が見ている自分は、私が見せたいと願っている自分の姿でしかなくて、それがなんとか成功しているからギリギリのところで周囲と折り合いを…

早見和真 著『店長がバカすぎて』より。書店員にゆとりを。教員にもゆとりを。

「結局、バッグに退職届を忍ばせている時点で、私たちは辞められないんだ。年月を経るたびに重たいものを背負わされていくし、ままならないことも増えていく。どんどん上の人間がバカに見えてくるし、バタバタしている自分がアホらしくなっていく。でもね、…

加藤シゲアキ 著『できることならスティードで』より。偏見は、愚か者たちが使う理屈である。小学校 ≒ 旅。

僕の小学校時代は、授業で学んだ知識以上に、強制的に集団生活を送る日々から学んだことの方が多かった。友人との出会いや、初恋なども経験したし、俳句大会で佳作に入ったことも小さな成功体験の記憶としてある。一方で、体育が苦手だった僕は運動会にはあ…

酒井隆史 著『ブルシット・ジョブの謎』より。「BSJをどうするか」から「BSJをやめられない学校をどうするか」へ。

それでもいま教師になろうとする人の多くは、きっと教師という仕事を「それでもやりがいがあるはずだ」と選んでいるとおもいますし、実際に仕事をしながら、そのかたちはさまざまでしょうが、なんらかの意義を感じてもいるでしょう。でも、それがこのような…

坂口恭平 著『継続するコツ』より。人からの評価はいらない。通知表もいらない。

やりたいことを継続することは無茶苦茶難しくて、やりたくないことを継続することは惰性でできてしまう。 何だか言葉で書いていると、そんなわけはないとみんなから言われそうですが、どうやら、こんな感じじゃないですか? 僕も書いてて、ちょっとびっくり…

アニー・エルノー 著『嫉妬/事件』より。法律と社会秩序が個人を苦しめる。

この種の話は、苛立ち、もしくは反発を引き起こすかもしれない、あるいは、悪趣味だと非難されるかもしれない。何であれ、あることを経験したということが、それを書くという侵すべからざる権利を与えてくれるのである。真実に優劣の差はない。それに、この…

沢木耕太郎 著『天路の旅人』より。沢木耕太郎 meets 西川一三。『深夜特急』meets『秘境西域八年の潜行』。

西川が疲れからついついうつらうつらしかかると、「寝るな」と揺り起こされてしまう。それは蒙古に帰ってからの土産話になるよう、できるだけ多くのものを見させようとする親切心からなのだった。 バルタンのこの幼児のような振る舞いに、西川も心を動かされ…

三浦英之 著『五色の虹』より。かつて「日本人、中国人、朝鮮人、モンゴル人、ロシア人」が寝食を共にした大学があった。

満州国は日本政府が捏造した紛れもない傀儡国家でしたが、建国大学で学んだ学生たちは真剣にそこで五族協和の実現を目指そうとしていた。私が建国大学を振り返るときに、真っ先に思い出されるのはそういうところです。みんな若くて、本当に取っ組み合いなが…

アニー・エルノー 著、堀茂樹 訳『シンプルな情熱』より。アートは自由にする。恋愛も自由にする。

ものを書くという営みの時間は、恋の時間とは、まったく別物だ。 けれども、ペンを執った時点では、書くのは、まさにあの、見る映画の選択から口紅選びまで、何もかもが同じ方へ、ある人の方へ向かって流れていた時間の内にとどまるためだった。最初の数行か…

落合陽一 著『忘れる読書』より。忘れるような本すらない人はダメだよ、というアイロニー。

近代をおさらいするのにうってつけの一冊が、猪瀬さんが著された『ミカドの肖像』です。事実を不可視化するシステムの中で、視えないものをあえて視ようとする日本人のマインドが、圧倒的なボリューム感で描き出されています。猪瀬さんは、自身が「MIKADO」…

田辺聖子 著『孤独な夜のココア』より。純度の高い恋愛は他から見るといやらしいものだ。でも、かっこいい。

いま何をしているのかしら。この頃、テレビで、脚色者としてちょいちょい、出てくる私の名を、彼は見てくれてるかしら。 青年ジルとアンヌ姫のように、私とアイツは、あそこで石になった。そうして三たび、私は目から鱗がおちたようにわかったのだが、アイツ…

東畑開人 著『聞く技術 聞いてもらう技術』より。聞いてもらうから、はじめよう。

「聴く」よりも「聞く」のほうが難しい。 心の奥底に触れるよりも、懸命に訴えられていることをそのまま受けとるほうがずっと難しい。 ならば、どうしたら「聞く」ができるのか。これがこの本の問いです。(東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』ちくま新書…

三浦英之 著『災害特派員』より。未来がどうなるのかなんて、結局誰にもわからない。

「今になって色々なことを言う人がいるけれどさ」と渡辺は出てきたソーセージを楊枝の先でつつきながら言った。「当時を知っている人間からすればさ、あの日、自分たちの住む町にあんなに大きな津波が押し寄せてくることを予測できた人なんて、一人もいなか…

苅谷剛彦 著『思考停止社会ニッポン』より。自粛の要請という言い回しも、教員が「自発的に残業している」という言い回しも、非科学的。

道徳とは共同体のルールである。しかも、そこでの善悪の基準は、時代によって変化し、多数派の価値観や特定のイデオロギーが力を得たりする。時に恣意的でさえある。合理的・合法的判断より情緒的判断が優先される場合も少なくない。 ここから引き出すことの…

辻仁成 著『目下の恋人』より。担任は人類学者たれ。

「じいちゃんとばあちゃんは学者だった。俺の親とは違って、頭がいいんだ。俺が頭がいいのは二人の血のせいだよ」「頭良かったっけ?」「うるせえ、いいんだよ。能ある鷹は爪を隠すって言うだろうが」「諺? どういう意味か知らない」 ヒロムは笑った。「学…

角幡唯介 著『狩りと漂泊』より。極地探検家の目下の生き方。漂泊が、すべてを生み出すのだ。

このようなわけだから、計画にもとづいて効率性を優先するかぎり、どうしても人は、そのとき起きた予想外の出来事や、その土地ならではの生の風景を見ようとしなくなる。もちろん実際に風景を見てはいるのだが、それは単に網膜に像が映っているだけ、という…

宮台真司、藤井聡 著『神なき時代の日本蘇生プラン』より。君たちが頓馬であれば、クラスは出鱈目に機能するよ。

キャンプファイヤーをやったことのある人はわかるけど、大切なのは歌や踊りじゃない。火を囲んで座っているだけで、いつもなら話さないことを友人どころか知らない人にまで話してしまうマジックです。パチパチという木の爆ぜる音を一緒に聞いているだけでも…

映画『LOVE LIFE』(深田晃司 監督作品)&『マル激(第1121回)』より。他者理解は、わかりあえないことから。

この作品に限らず、映画を作るときに一貫しているモチーフは個の孤独です。もちろん、一本の映画にはいろいろなモチーフが組み合わさっていますが、中でも自分が一番信じられるもの、普遍的だと思うものが人は孤独であるということであり、それが作品の世界…

西剛志 著『低GI食』より。脳科学者が勧める食事術。家庭科の授業にも、ぜひ。

実は糖質をたくさん摂りすぎると、逆に「血糖値スパイク」という現象が起き、脳のエネルギー不足を引き起こしてしまいます。 スパイクというのは、鋭く尖ったという意味で、シューズのスパイクの先端のように血糖値が急上昇して、急降下する様子を意味してい…

川上弘美 著『センセイの鞄』より。ひとつとして、同じ形をした愛は無い。

くそじじい。わたしは胸の中で言い、それから口に出して「くそじじい」と繰り返した。くそじじいはきっと元気に島を一周でもしているんだろう。センセイのことなんか忘れて宿の小さな露天風呂にでも入ろう。せっかく島に来たんだから。センセイがいようがい…

リチャード・ワイズマン博士 著『運のいい人の法則』より。運も実力のうち? それとも、実力も運のうち?

運がいい人のキャリアを大きく左右するのは、ビジネス界だけの話ではない。一九七九年に映画監督のジョージ・ミラーは、新作『マッドマックス』の主役にふさわしい俳優を探していた。戦いに疲れて傷ついた、しかしタフな男が理想だった。オーディション前日…

内田樹、平川克美 著『東京ファイティングキッズ・リターン』より。安倍、お前だったのか。

平川 そういうことだろうね。マヌーヴァーを演じるための実体が裏側にあるわけなんだけれども、そこがなくなっちゃった。はなからなかったのかな。内田 どうもないみたいよね。安倍晋三もそんな感じがするしね。おもしろかったのは福田康夫でさ、いまどき珍…

広田照幸 著『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』より。教育は、君と世界をどう変えるか。

目先の利益とか、自分の家族のことだけに気をとられているような、いまの大人たちは情けない。学校の先生も、テストのこととか入試のことばかり口にするような先生には期待できません。 私は若い世代の皆さんに期待をしたい。どうか、「家庭・友人・学校のあ…

奥澤高広 著『町田独立宣言』より。小学校の統合ってどう? 本当にそれでいいのでしょうか?

町田市では、少子化と深刻な学校施設の老朽化という問題に対応するために、2040年度までに、市立小学校を42校から26校、市立中学校を20校から15校に統合する計画が発表されています。統合時に校舎を建て替えることで、老朽化の進んだ教育環境を…

猪瀬直樹 著『迷路の達人』より。自分が満足するには、自分に出会うしかない、このあたりまえがむずかしい。

僕は信州の小布施町を、最低でも月に一度は訪れる。そういう習慣を自らに課している。 小布施は善光寺平の一隅にある古びた小さな町で、栗林と瓦ぶき大壁造りの民家がかつての繁栄をしのばせる。その静けさが気に入っているというのは僕の勝手な思いで、最近…

中原淳 著『話し合いの作法』より。言葉が軽視され、論理で考えられない社会を変えていくために。

これからの社会を、「言葉と論理が重視される世界」に変えるためには、話し合いの力が不可欠だ。それが本当の民主主義の実現であり、未来の日本を豊かにする有力な方法である。(中原淳『話し合いの作法』PHPビジネス新書、2022) こんにちは。昨夕、未来の…

猪瀬直樹 著『ニュースの考古学 Ⅲ』より。ちょっと未来を見てくるだけでよい。それだけで、なるほど、と思うことがいっぱいある。

ちょっと歴史を遡るだけでよい。それだけで、なるほど、と思うことがいっぱいある。ところがどうしても "現在" しか見ようとしない傾向が日本のジャーナリズムにあるようだ。(猪瀬直樹『ニュースの考古学 Ⅲ』文藝春秋、1994) こんばんは。明日は始業式だと…