田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2022-01-01から1年間の記事一覧

デューイ 著、宮原誠一 訳『学校と社会』より。もしデューイがあなたの学校にいたとしたら、何を想うか。

私は旧教育の類型的な諸点、すなわち、旧教育は子どもたちの態度を受動的にすること、子どもたちを機械的に集団化すること、カリキュラムと教育方法が画一的であることをあきらかにするために、いくぶん誇張して述べてきたかもしれない。旧教育は、これを要…

ながのひでこ 作『とうさんかあさん』より。絵本の原点は、教室の原点と同じ。

とうさん しゅくだい わすれたこと ある? あるある よく ろうかに たたされたもんだかあさん しゅくだい わすれてたたされたこと ある? うーん いちど いちどきりね(ながのひでこ『新装版 とうさんかあさん』石風社、2005) こんばんは。今日、電車を乗り…

猪瀬直樹 著『ニュースの考古学』より。参議院の「存在感」について。日本人と「新宗教」について。予言の書。

緑風会が最も勢力を持った時期は、昭和20年代から30年代前半にかけてだった。作家の山本有三らが音頭をとり、参議院の無所属議員が集まって院内交渉団体として成立するのである。名称は五月の新風と英語のミドル(中間)をもじったもので、いずれの党派…

今井孝 著『誰でもできるのに9割の人が気づいていない、お金の生み出し方』より。たった一つを変えるだけ。

ネットで活躍している人の集まりに行くと、フォロワー数の多い人を羨望の目で眺めます。 ジムに行けば、鍛えられた肉体の人を見て落ち込んでしまいます。 社会貢献の団体の集まりに行くと、売上げばかり気にしている自分を振り返り、なんて小さな人間なんだ…

猪瀬直樹+信州大学客員講師団 著『なぜ日本人は働きすぎるのか』より。ライフスタイルを捉え直す。もっと遊ぼう。

猪瀬 ―― のちほどリポートを示しますが、日本人の労働といってもさまざまな類型に分類してから討論しなくてはならないと思います。日本でも労働時間が長い職種とそうでない職種があるわけです。はっきり言って、公務員はむしろ短いぐらいです。その公務員に…

中村文則 著『自由対談』より。総勢33名、36の対談と座談会が収められた、デビュー20周年を記念しての対談集!

高橋 ぼくたちが公に求めるのは応答ですよね。まず返事をしてほしい。拒否でも否定でもいい。人びとからの声に一切応答しない、それは、社会や政治の最悪の形態だと思います。中村 「桜を見る会」の問題でも、あれだけうそをつかれると、周りにいる人は変な…

養老孟司 著『子どもが心配 人として大事な三つの力』より。認知機能、共感する力、自分の頭で考える人になる。大人も心配。

養老 何もかも手に入るわけではないけれども、生きているだけで満足できる。そんな状況を、生まれてくる子どもたちに対してつくってあげないといけないでしょう。何も難しいことではありません。親が子どもに対して「あなたたちが元気に飛び跳ねていてくれれ…

鶴見済 著『人間関係を半分降りる』より。友人から一歩離れ、家族を開き、恋人をゆるめる。そうすれば気楽になれる。

物書きを始めた90年代に出したすべての本の底流に、この感覚を織り込んだつもりだ。 例えば『完全自殺マニュアル』という本で言った、「いざという最悪の時には死ぬことだってできるのだと思えば、楽に生きていける」。それはこのあきらめの力を生かすひと…

猪瀬直樹 著『死者たちのロッキード事件』より。歴史は繰り返す。ヘロドトスが予言し、猪瀬さんが固めた。

ロッキード事件は、戦後のさまざまな政治的事件の中でも、とりわけ戦後日本の政治構造をむきだしにしてみせた出来事だった。1976年2月、アメリカ上院外交委員会の多国籍企業小委員会は、ロッキード社が日本に対する旅客機と対潜哨戒機の売り込み工作に…

妹尾昌俊・工藤祥子 著『先生を、死なせない。』より。敵は義務教育標準法にあり。

もっとも、義務教育標準法ができた1958年当時は、1コマの授業にだいたい1時間程度の授業準備がかかるであろうという前提で文部省はいたことが、国会答弁でも明言されています。 現在の公立学校教員の1週間の勤務時間は38時間45分なので、仮に1週…

猪瀬直樹 著『禁忌の領域』より。政治と反社という「禁忌の領域」の存在を預言していたタイトル。ニュースの考古学って、すごい。

取材に受け応えしながら、いっぽうでこの女性の年齢はどのぐらいなのだろうと思いめぐらせていた。年齢を訊くのは失礼なので、あとで調べた。五十八歳とわかった。 日本で五十八歳の現役女性記者が何人いるだろうか。しかもテーマを見つけたら、さっとニュー…

岡崎勝、宮台真司 著『こども性教育』より。人間関係は酒と同じ。「いい恋愛」をするには、どうしたらいいの?

さて、ここまでのお話でみなさんがいま、どういう社会で生きているのかということがよくわかったと思います。 人間関係が空洞化して「孤独」になってきた。「孤独」ゆえに、心を病んだり、警戒的・攻撃的になったりする。だから人と仲よくなれない。そうした…

川村元気、近藤麻理恵 著『おしゃべりな部屋』より。片づけの目的は、自分がときめくものを見つけることにある。学校がときめくスクラップの魔法。

さまざまな家の本棚を見るたびに、わたしは思う。本というのは、持ち主の願望そのものだと。「食べてはいけない」「買ってはいけない」「信じてはいけない」そんな恐怖が並ぶ本棚もあれば、「こういう自分になりたい」「こんなことをやってみたい」という願…

時松哲也・山田眞由美 著、西川純 編集『仕事はここまで削減できる! 学校改革スタートブック』より。仕事はもっと削減できる!

早晩、担任がいなくて成り立たなくなる地域は生まれます。そうなったら、大分大学教育学部付属小学校のような改革をせざるを得ません。 例えば、部活は規模を縮小し、社会体育に移行するでしょう。部活命の教師は自宅近くの社会体育の指導者になるのです。登…

久保明教 著『機械カニバリズム』より。教室に他者を。教室に変化を。

将棋ソフトはまずもって、棋士が育んできた将棋観を揺るがす異質な他者として現れた。棋士が鍛えてきた精緻な物語的思考。それが人間の思考に一定の制約を与えるものでもあることが、流れを考慮しないソフトの数値的思考と関わるなかで明らかになったのであ…

木村大治 著『見知らぬものと出会う』より。もしも宇宙人みたいな子どもと出会ったら。

「あいつは宇宙人だ」と言われる人物はたくさんいるが、ここではまずその代表として、元首相の鳩山由紀夫氏に登場していただこう。グーグルで「鳩山由紀夫 宇宙人」で検索をかけると、約24万5000件のヒットがある。この比喩は広く日本人に共有されてい…

大澤真幸、平野啓一郎 著『理想の国へ』より。憂国。労働時間の抑制なくして、理想の国なし。日本を愛するがゆえにこそ。

これは、僕の「分人主義」の発想にもつながる話です。労働者としての比率が個人の中でどの程度の割合なのか。それが政治主体はじめ、消費主体、あるいは家族といるときの自分、恋人や友人といるときの自分・・・・・・など、私的な分人を圧迫してしまうと、政治行…

岩崎夏海 著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』より。下手な研修よりも『もしドラ』を。

「そもそも、ぼくはなぜ『もしドラ』を書いたのだろう?」 その理由は、もちろん一つではなかった。あまりにも多すぎて、それを一冊の本(『「もしドラ」はなぜ売れたのか?』(東洋経済新報社)にまとめたくらいだ。 ただ、一番の理由は、「ドラッカーの『…

小川さやか 著『「その日暮らし」の人類学』より。今を豊かに生きるには? キリギリスの世界線を覗いてみる。

日本では、終身雇用や年功序列賃金制度が期待できなくなっても、仕事をやめないことを美徳とするのが主流である。このような価値観は、景気が悪化し、非正規雇用やワーキングプアなどの格差問題が顕在化した現在、ますます強くなっているようにも感じる。し…

猪瀬直樹 著『ニュースの冒険 「昭和」が消えた日』より。日々のニュースを、歴史の篩にかけて揺すってみる。

「昔、父親から、日本に帰りたいと思うな。二、三日は親も兄弟も大切にしてくれるが、彼らだって食うにせいいっぱいなんだ。それに朝鮮人と結婚していると差別されるぞ。アメリカ人と結婚して生まれた子供でも石を投げられたりする。差別のないロシアで生き…

田内学 著『お金のむこうに人がいる』より。お金の話を突きつめて考えたら、道徳の話に近づいた。結局、人。やっぱり、教育。

年金問題を話すときには、「1人の高齢者を⚫人の現役世代で支えている」という話をよく聞くのに、「1人の子どもを⚫人の現役世代で支えている」という数字を目にすることがほとんどない。1人の女性が産む子どもの人数しか気にしない。 現代の社会では、高齢…

平野啓一郎 著『死刑について』より。死刑存置派から死刑廃止派へ。他者と、問いと、創作を通しての変容を語る。

最近、「親ガチャ」などという言葉が流行っています。これは、自分たちは親を選ぶことができず、どのような環境で育つかは運次第だという諦めや苛立ちを、カプセル玩具が無作為に出てくる「ガチャガチャ」にたとえたものですが、若い人たちがそのように切実…

坂口恭平 著『よみぐすり』より。楽しさの伝授こそが教育じゃないのかねえ?

親たちよ、まずは自分が楽しもうぜ。楽しくないやつがなにを忠告しても、それに従ったらただの楽しくない退屈な人生しかないと子どもは感じるだけだから、いうこと聞くはずがない(笑)。楽しいことには敏感よ、子どもたちは。なぜなら自然の人間は楽しむこ…

川上康則 著『教室マルトリートメント』より。学校に余白を増やし、教室マルトリートメントを断つ。

前年度の先生が非常に高圧的な指導で子どもたちに物を言わせない、シーンとした一見静かな学級をつくっているのだけど、子どもたちの中では不満が鬱積している。翌年、こういう落ち着いた子たちだったら若手や病休が明けた先生に任せても大丈夫だろうという…

猪瀬直樹 著『瀕死のジャーナリズム』より。宗教法人を甘やかすことが民主主義の実現ではない、という四半世紀前の著者の言葉が重く響く。

その意味において、戦争責任の問題で言論の弾圧だけに言及してしまうのは、検証が甘すぎるといわざるをえない。戦前・戦中には、言論の自由が制限されたことは確かだが、軍部の発表をいわば ”あうんの呼吸” でそのまま記事にしていた。新聞側の取材姿勢にも…

國分功一郎、千葉雅也 著『言語が消滅する前に』より。能動か受動か、そんなことは忘れて教師も子どもも一緒になって学び浸ろう。

國分 授業もそういう意味では中動態ということだよね。つまり、教師が能動で、生徒が受動じゃダメで、そこに中動態的なプロセスがなければいけない。千葉 そう。だから、最近流行りのアクティブラーニングとか言って、学生にアクティブに課題か何かをやらせ…

猪瀬直樹 著『ラストチャンス』より。いい人というのは決断しない人。闘うインテリ作家と闘うインテリ教員が日本を救う。

じつは国土交通省や日本道路公団の心ある若手職員のなかには、いつまで自分たちは採算を度外視した道路をつくりつづけなければいけないのか、と疑問を抱いている者も少なくない。しかし、自分たちから止めてくれ、と言うわけにはいかず、じつは外からの声を…

今井孝 著『「君しかいない!」と言われる人になる』より。51のステップで起業家的習慣を身につけるゾウ。

私の周りの起業家でも、自分より活躍している人の話を聞きに行く人がたくさんいます。パーティに参加したり、講演会を聞きに行ったりします。やる気やモチベーションが偶然高まるのを期待せず、安定して維持できるように工夫しているわけです。 私もいまだに…

猪瀬直樹 著『日本の信義』より。上喜撰、はよ。信義の士、はよ。ファクトとロジック、はよ。

猪瀬 昭和天皇が亡くなってちょうど1年になろうとしていますが、昭和天皇は一種の創業者で、いまの天皇はジュニアというイメージですね。 自民党の国会議員も約40パーセントがジュニア。世襲議員なんです。それに官僚出身の議員も25パーセントいる。世…

猪瀬直樹 著『日本凡人伝 今をつかむ仕事』より。Q:日本とアメリカは何が違ったか。A:アメリカは、偉い人が本当に偉かった。

つまり、猪瀬氏が、膨大でつかみどころのない事象を細心の注意をはらって分析していった果てに見いだすのは、無定見な欲望であれ、脆弱な理想主義であれ、意識的であれ無意識的であれ、要するに固有名詞をもった個人のヴィジョンなのである。どんな巨大な文…