ADHDがあると、無軌道な人生を爆走する傾向があるが、自閉スペクトラム症者には規範意識が強いという逆向きのベクトルが備わっている。結果として、支離滅裂な日々を送りながら、不思議なくらいマジメという謎の人生が出現してくる。私も全くそういう人間なので、ラガーさんには深く共鳴する。
(横道誠『ひとつにならない』イースト・プレス、2023)
こんばんは。「全く」ではないものの、私も意外とそういう人間なので、特に《支離滅裂な日々を送りながら、不思議なくらいマジメという謎の人生が出現してくる》というところには深く共鳴します。で、マジメにとって、4月1日はしんどい。知らない人たちがやってきて、職員室の雰囲気が変わるからです。とりわけ本年度は、ガラッ。
しんどかったなぁ。
直感として、どうあがいても、ひとつにはなれそうにありません。4月1日について語るときに僕の語ること。真の発達は、別れた女と、払った税金の話はしないという金言がある ―― というのは真っ赤な嘘で、発達障害者がセックスについて語ることは、赤裸々すぎて、身につまされて、しんどい。
でも、救いもありました。
横道誠さんの『ひとつにならない』を読みました。副題にあるように、発達障害者がセックスについて赤裸々に語った一冊です。語り手は8人。もちろんエッチな本ではありません。
極めてマジメな本です。
標準的なコミュニケーションを苦手とする発達障害者にとって、他者と肌を重ね合わせるくらい仲良くなるのは「きせき」のようなこと。障害者と性はタブーになりがちで、そういった「きせき」感はほとんど知られていません。仲良くなれず、イヤな思いをして、命を絶ってしまう人が無数にいることもほとんど知られていません。だから横道さんは《本書はひとつの鎮魂歌》とまで言います。鎮魂歌っていう言葉の響きがちょっとあれですが、とにかく、
極めてマジメな本です。
最初に登場する4人については、以下。私がマジメにポストすると、著者の横道さんがマジメにリポストしてくれるという、
マジメの応え合い。
横道誠さんの『ひとつにならない』の第1章「パンセクシャルの白髪葱さん」に《ADHDがあると、無軌道な人生を爆走する傾向があるが、自閉スペクトラム者には規範意識が強いという逆向きのベクトルが備わっている》とあり、支離滅裂な人生を送るマジメな人って、ギャップ萌えでモテそうだなと思う。
— CountryTeacher (@HereticsStar) March 26, 2024
横道誠さんの『ひとつにならない』の第2章「元プレイボーイの青さん」に《私見によると、長嶋の「天然キャラ」ぶりは注意欠如・多動症の、イチローの「こだわりっぷり」は自閉スペクトラム症の典型的な発露に見える》とあって、ちょっとうけた。長嶋の真似も、イチローの真似も、定型発達者には無理。
— CountryTeacher (@HereticsStar) March 26, 2024
横道誠さんの『ひとつにならない』の第3章「ノンバイナリーのしぇるどんさん」に《噂話をする同年代の女子のコミュニティも苦手でした》とある。もしもしぇるどんさんが教員だったら、噂話をする教員室の女性のコミュニティも苦手だろうなと思う。噂話をしないのが「普通」。そんな世界線に行きたい。
— CountryTeacher (@HereticsStar) March 26, 2024
横道誠さんの『ひとつにならない』の第4章「愛の当事者研究に励む鷹村了一さん」に《自閉スペクトラム症があると脳の認知特性が少数派に属することになるから、当然ながら多数派とのあいだに「社会性」を構築し、「コミュニケーション」を取り、「想像力」を働かせることは難しくなる》とあり、本質。
— CountryTeacher (@HereticsStar) March 26, 2024
パンセクシャルの白髪葱さんとか、元プレイボーイの青さんとか、ノンバイナリーのしぇるどんさんとか、発達障害者と一口に言ってもいろいろです。ニューロ・ダイバーシティ(脳の多様性)という言葉が人口に膾炙しつつある現在、《脳もセックスもいろいろだ》といわれれば、そうかもしれない(!)と思えるのではないでしょうか。横道さんは《だから、ひとつになんかならないし、なれないのだ》と書いています。タイトルの「ひとつにならない」の意味はそういうこと。とはいえ、発達障害者のセックスと定型発達者のそれとでは「ひとつにならない」の程度が違うんです。しんどさの程度も違うんです。体験世界のバリエーションも全然違うんです。それは読めばわかります。
悲しみよこんにちは。
ちなみに第5章は「元セックス依存症者の唯さん」というタイトルだったので、マジメゆえ、セックスという言葉がひっかかってポストするのを断念してしまいました。第6章の「リスセクシャルのぷるもさん」も、第7章の「シロウト童貞の数独さん」も、それから第8章の「メンヘラな姫野桂さん」も、教員アカウントとしてはちょっとポストしづらく、断念。でも、繰り返しますが、
救いもあります。
「発達障害って最初に知ったときはつらかった。でも、ちょっとずつ自分への理解を深めたことで楽になって、人柄も明るくなりました。心理学を勉強していると、連続的だった黒いモヤにいろんな名前がついていきます。漠然とした大きな悩みが、こまかく分割できるようになりました。発達障害の特性と人格が別だということを認識できて、自分自身に向き合えるようになったんです。自分の悪い面ばかり気になっていたけど、自分の長所も特性のおかげでできていると感じます。たとえば衝動で飛びこんで、新しいものに出会えるというように。ダメなところも良いところも共存している。そういうふうに丸ごと受けいれられるようになりました」。
元セックス依存症者の唯さんの言葉です。救われます。「元」ですからね。もう依存していないんです。第7章の「シロウト童貞の数独さん」で、横道さんがそれなら私はクロウト童貞だと書いている下りにも救われたというかうけたというか、深く共鳴しました。
そうそう、4月1日の今日はしんどすぎましたが、3月31日の昨日は《衝動で飛びこんで》新しい人に出会い、楽しかったんです。しんどすぎるの真逆だったんです。だから唯さんと同じようにこう思います。
ダメな日も良い日も共存している。
おやすみなさい。