田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

三浦英之 著『涙にも国籍はあるのでしょうか』より。この国はまだ東日本大震災における外国人の犠牲者数を知らない。

 その途上のインドで、私は人生が変わるような体験をした。ある朝、親しくなったインド人に屋台に連れて行かれ、そこで食事をご馳走になった私は、気がつくと身ぐるみ剥がされて道ばたの下水道に横たわっていた。どうやら飲食物に睡眠薬が混入されていたようだった。幸い、パスポートは腰に巻き付けていたベルト状の小袋の中に残されており、ブーツの内底に縫い込んでいた100米ドルほどのトラベラーズチェックが無事だったため、なんとか旅行は続けることができたが、その後は心身が優れない状態が長く続いた。
 そんな乞食同然になった日本人の若者にも、インドやネパールの人々は限りなく優しかった。
(三浦英之『涙にも国籍はあるのでしょうか』新潮社、2024)

 

 こんばんは。バックパッカーだったときに私も似たような経験をしたことがあるので、思わず引用してしまいました。マネーベルトの中に隠しておいたトラベラーズチェックの有り難さといったらそれはもう、ジャーナリズムの世界における三浦英之さんのようでした。希望、あるいは救いということです。

 

 もちろん現地の人たちの優しさも。

 

 異国で窮地に立たされたときに、その国に住む人たちの優しさがどれだけ有り難いことか。三浦さんのバックパッカー時代のエピソードを読みつつ、新刊『涙にも国籍はあるのでしょうか』が生まれた背景がわかったような気がしました。三浦さんも、

 

 優しい。

 

 

 三浦英之さんの新刊『涙にも国籍はあるのでしょうか』を読みました。サブタイトルは「津波で亡くなった外国人をたどって」です。2012年の『南三陸日記』と、2021年の『災害特派員』に続く、東日本大震災をテーマにした、

 

 胸熱のルポタージュ。

 

 過去の2作品と同様に、今回もまた、誰かとシェアしたいエピソードがてんこ盛りでした。小学生にも、です。

 

 目次は以下。

 

 序 章 ある随行員の手記
 第1章 涙にも国籍はあるのでしょうか
 第2章 職人たちが中国人青年に伝えていること
 第3章 彼女はいつも自転車に乗っていた
 第4章 イスラムの国から来た青年
 第5章 美しいひと
 第6章 三人目の祖母、三つ目の国
 第7章 それでも神父は教会に戻った
 第8章 家族の夢が叶った日
 第9章 本棚のピエタ

 

 で、さっそく社会の単元「自然災害を防ぐ」(小学5年生)のときに、授業の冒頭の5~10分くらいを使って、毎回のように読み聞かせをしてみました。地震や津波のメカニズムだったり、減災の取り組みだったりを、教科書通りに学んでいくことももちろん大切ですが、そこに住んでいる人々への想像力を働かせないことには画竜点睛を欠くと思ったからです。とはいえ、

 

 少し難しいかもしれない。

 

 大人向けの作品ゆえ、そんな風にも思いましたが、読み始めると、普段はやや元気すぎるくらいの子どもたちが「シーン」となるのだから驚きです。間違いなく三浦さんの「物語る力」の為せる業でしょう。単元が終わったときには「先生、本のタイトルをもう一度教えてください。お母さんに言って絶対買ってもらいます」と言ってくる子もいて、

 

 ありがとう。

 

 やはり教員には本を読むゆとりが必要です。外国語指導助手のテイラー・アンダーソンだって、草葉の陰でそう思っているに違いありません。

 

 私が遠藤と知り合ったのは2022年の初冬だった。
 津波で亡くなった外国人を取材する過程で、私は宮城県石巻市で外国語指導助手をしていた24歳のアメリカ人女性、テイラー・アンダーソンが津波で亡くなり、その後、両親が亡くなった娘の遺志を継ごうと被災地の小中学校などに英語の本と本棚を寄贈する活動を続けていることを知った(序章、第3章参照)。
 その活動においてすべての本棚の制作を担っていたのが、同じ石巻市で暮らす木工作家の遠藤だった。

 

 第9章の「本棚のピエタ」より。子どもたちには先ず、序章の「ある随行員の手記」を読んで聞かせました。テイラー・アンダーソン(外国語指導助手)の父親が登場します。外国語指導助手に相当する先生は勤務校にもいるので、小学生の子どもたちにもイメージしやすかったようです。別の日に第3章の一部を、さらにまた別の日に第9章の一部を。章をまたいで、それぞれがつながっているんですよね。だから読めば読むほど胸熱がどんどん加速していきます。繰り返しますが、子どもたちは「シーン」です。木工作家の遠藤さんのエピソードなんて、同じパパとして、それこそ読んでいる私も「シーン」。

 

 ルポは小説よりも奇なり。

 

 

www.countryteacher.tokyo

 

 もうすぐ3月11日です。震災から13年。当日は、教室に『南三陸日記』と『災害特派員』を持って行こうと思います。

 

 どのエピソードを紹介しようかな。

 

 おやすみなさい。

 

 

災害特派員

災害特派員

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