2024-08-01から1ヶ月間の記事一覧
日本語の音象徴における清濁の重要性は、それがオノマトペ以外でも見られることからもわかる。「子どもが遊ぶさま」の「さま」に対して、「ひどいざま」の「ざま」は軽蔑的な意味合いを持つ。「疲れ果てる」の「はてる」に対する「ばてる」んもぞんざいなニ…
それほど遠くない昔、我々は効果的にシェアを行っていた。小津安二郎監督の1953年の映画『東京物語』のなかにこんなシーンがある。 田舎から出てきた老夫婦が、一人暮らしの娘のアパートの部屋にやってきた。そこで娘は隣の部屋の主婦から酒を借りに行く…
私にその意思さえあれば、ここで遊牧民として生きることだって、決して不可能ではないということ。自分はそれくらい自由で、どこにでも住めるのだ、とはっきり自覚したのである。そうしたら、ものすごく楽になった。自分をがんじがらめに縛っていたのは、他…
東京都足立区では児童・生徒数の42.5%が就学援助を受けている、と朝日新聞は格差の拡大の証明のように報じた(06年1月3日付)。だが足立区では4人家族で年収329万円~412万円(幅は家族の年齢構成による)、また6人家族は年収410万円~5…
夏休み前に、短大の国文科への推薦希望者は、作文の模擬テストを受ける事になった。私は作文は得意だったので、気軽な気持ちで作文を書いた。 その作文が、ものすごくほめられた。評価のところに、「エッセイ風のこの文体は、とても高校生の書いたものとは思…
2005年夏、郵政国会は参議院でヤマ場を迎えていた。新聞社の政治部は、解散だ、解散だ、と煽り立てている。政治記者は首相の交替だ、いや政権交替だ、と騒ぎたい。政局が仕事だと勘違いしている。彼らにとって4年も続く長期政権は、髀肉の嘆を託つもの…
さらにいえば、このような旅行をしていると必ず「若いうちだけだよ」とか「思い出作りにね」とかいう言葉をはげましとして言われたのだが、これもあたいは、イヤだ。旅行をいつまで続けるかということではなく、このようなやり方・精神で、三百年の人生を生…
ナビを見ると、新幹線の駅まで残り10分ほどだった。僕は、彼が撮ろうとした映画の話を切り出すタイミングを見計らっていた。なぜか気になっていた。それは言葉に置き換えるべき何かが発見できる予感があったからかもしれない。時々、そんなことがある。言…
そこはもう、ガウディの世界一色だった。ガウディの世界に触れた人は皆「ガウディは、子供心を失っていない天才だ!!」と一様に言うが、まさしくその言葉に尽きる。ガウディは天才だし、子供心を失っていない。(さくらももこ『ももこの世界あっちこっちめ…
仙台駅の西口方面には、東西に走る大通りが三つあり、北から、「常禅寺通り」「広瀬通り」「青葉通り」と名前がついている。その常禅寺通りを駅側の端から十分ほど歩いたあたり、大きな交差点の角に百貨店「三越」があった。建物は二つあり、常禅寺通りにく…
私、今回の企画にあたってお声がけした方々の全員と、つい数年前まではまったくの他人だったんです。それが、SNSや各種のイベントを通じ、こうしてつながった。もちろん、本に対する愛を紐帯として。すごいですね。本は、人と人とをつなげてくれるんです…
テクノロジーが進歩し、インターネットで世界中の誰とでもリアルタイムにやりとりができて、ネットで注文したものが即日届くこの時代。それでも我々は毎日顔を洗い、着替え、時間をかけてバスや電車に乗って教室やオフィスに集まる。なぜだろうか。朝起きて…
ネットワーク運動というのは、「異質な者どうしの学び合い」を方針に掲げているので、私は当時、大学の先生や企業の方など色んな人と関わっていく中で、自分の実践にもすごく役立つし、面白かったので、続けてきました。今、石川さんが向山さんとは別の方向…
ジュリオは、子供たちにあたえる果実ひとつにも季節が消えてしまった現代をなげいて、「いまは、いつでも何でもある。けれど、子供に思い出がなくなってしまった」 と、哀しげに、つぶやく。 思い出をもたぬ人間の不幸を、現代人は不幸とおもわぬ。国の歴史…
或る時、川は岸からかしいだ大木の蔭で、巨大な転石の間を早瀬となって越し、渦巻いていた。私は靴を脱し、足を水に浸した。足の甲はいつか肉が落ち、鶏の足のように干からびて、水に濡れにくかった。手の皮膚も骨に張りつき、指の股が退いて、指が延びたよ…
父は中也の代表的な詩「サーカス」の「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」という擬音に戯けた抑揚をつけて、僕に聴かせてくれた。それが耳に残り、何度も何度も朗誦をせがんだものだ。父自身は「含羞」という詩が好きで、「なにゆゑに こゝろかくは羞ぢらふ」と…
ほんとうにこの国は、「過剰同調社会」ではないだろうか。経営組織における業績評価と成績主義は行政組織にも導入されるべきだとの言説が展開されるのは、1990年代以降である。いわゆるNPM(新しい行政管理)として、イギリスやニュージーランドには…
大正時代の貧しい炭焼き小屋の長男として生まれ、父亡きあと母を支えて家業と弟妹の世話と家事を担っていた炭治郎の行動の基盤は、「ケアの倫理」にある。ケアの倫理とは、儒教道徳のように秩序を守るために一般化された原理ではなく、それぞれ異なる他者の…
世の中には、測定できるものがある。測定するに値するものもある。だが測定できるものが必ずしも測定に値するものだとは限らない。測定のコストは、そのメリットよりも大きくなってしまうかもしれない。測定されるものは、実際に知りたいこととはなんの関係…
近代の日本経済を支えていたのは、お米と日本酒です。諸外国の軍事的圧力をはねのけ、日本が独立を保つのには、このお米とお酒を中心に経済を考えることは自然な流れでした。 もともとお酒は江戸幕府が運上金として50パーセントもの税金をかけて、酒造免許…