田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

藤原正彦 著『スマホより読書』より。算数より国語。論理より情緒。

藤原 最近、日本の小学校で児童一人につき一台、タブレット(電子端末)を配っている、と聞いたときは目の前が真っ暗になりました。教科書をなくす第一歩と思います。小学生から教科書も読まず、自由にタブレット画面に没頭させたら、本の世界に対する憧れな…

マイケル・サンデル 著『実力も運のうち』より。能力主義は正義ではない。

GDPの規模と配分のみを関心事とする政治経済理論は、労働の尊厳をむしばみ、市民生活を貧しくする。ロバート・F・ケネディはそれを理解していた。「仲間意識、コミュニティ、愛国心の共有 ―― われわれの文明のこうした本質的価値は、ただ一緒に財を買い…

猪瀬直樹 著『日本復活のシナリオ』より。片足は教室に。もう片方の足は社会に。

猪瀬 ―― 彼は、「日本の学生はデカルトが何年に生まれて、いつ活躍したかを知っていますが、デカルトの本は読んでいないですね」と笑っていました。彼らは週に10時間、哲学の授業をやって、しかも自分の考えをレポートとして何枚も書かされるそうです。自…

サマセット・モーム 著『月と六ペンス』より。何に対して誠実であるべきか。

「じゃあ、どうして奥さまを捨てたんです?」「絵を描くためだ」 わたしは、目を丸くして相手の顔をみた。意味がわからなかったのだ。この男は頭がおかしいのだろうかと思った。覚えておいてほしいが、わたしはまだ若かった。ストリックランドがただの中年男…

滝田明日香 著『サバンナの宝物』より。強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。

私は強くならなきゃ生きていけない環境にいた。強くならなきゃつぶされてしまう。自分のアイデンティティや存在さえも、強くアピールしなければ存在しないも同然の社会に連れてこられてしまったのだから。「自分の意見を持て。じゃないと白人社会につぶされ…

猪瀬直樹 著『ニッポンを読み解く!』より。戦後50年は金属疲労を起こしはじめた時間。では、その次の50年は?

⚪先日、あるテレビ番組で東京HIV訴訟原告団の川田龍平君といっしょになった。番組終了後、彼と雑談していたら、「いま、『日本/権力構造の謎』を読んでいるところなんです」と言うのです。つまり、ウォルフレンさんのいう日本的な〈システム〉、この場合…

磯﨑憲一郎 著『日本蒙昧前史』より。我々は滅びゆく国に生きている。

こういう面白い事件、後の時代であればぜったいに起こり得ない、人に語って聞かせたくなるような事件がじっさいに起こった分だけ、やはり当時の世の中はまだまともだった、そう思いたくもなってしまう、核エネルギーの平和利用は可能であると主張し、交通事…

滝田明日香 著『晴れ、ときどきサバンナ』より。多様性の時代だからこそ、一人ひとりの物語が語られねばならない。

私はいろいろな国で育ち、知らず知らずのうちに価値観の混ざった人間に育ってしまった。日本の文化の家庭に生まれ、外国の地で育った。様々な国の良い所と悪い所を見て、自分でいい所だけを取るように心がけていた。そして、放浪の暮らしをしているうちに、…

猪瀬直樹 著『東京からはじめよう』より。つねに好奇心をもちながら。

後藤新平という人物を考えるときに面白いと思うのは、彼は、岩手の水沢の出身なので、藩閥出身でないし、中央の出でもない。岩手で生まれて、名古屋に行って、台湾、満州で経験を積んで、最後に東京へ戻ってきた。だから、東京の問題点がよく見えて、改造の…

山竹伸二 著『共感の正体』より。共感の本質観取を試みる。

コールバーグは自身の理論を検証するために、10歳から16歳までの少年72人に次のような質問をしている。「ハインツの奥さんがガンで死にかかっている。特効薬で助かるかもしれないが、それを買うお金が半分しか集まらず、交渉したが断わられた。困った…

三浦英之、阿部岳 著『フェンスとバリケード』より。ジャーナリズムと同様、教育も語るものではない。それは実践するものである。

「何を背負って、何に向けてペンを握っているのかを、執筆する記事で示せるのがいい記者だと初任地の上司に言われました。自分の存在感と問題意識と個性は記事で示せと。それがかなわなくなっているので、朝日新聞を去ります。ちなみに辞めて何するかは全く…

小沢慧一 著『南海トラフ地震の真実』より。なぜ南海トラフ地震の発生率だけが他の地域とは違う計算モデルで出されているのか?

日本はどこでも地震が発生するし、現在の地震学にはそれがいつ、どこで起きるかはっきり予想する実力はない。そんな中で南海トラフや首都直下ばかりに注目が集まるような確率を出すことは、逆に他の地域の油断を誘発することになる。 とはいえ、私は南海トラ…

三浦英之 著『水が消えた大河で』より。根をもつことと翼をもつこと。

1990(平成2)年、信濃川沿いにJR東日本の新しい発電所が完成し、毎秒317トンもの大量取水が開始されると、信濃川中流域は一気に干上がり、慢性的な水涸れ状態に陥った。魚が死に、流域周辺の井戸が涸れ、人々が心の拠り所としてきた雄大な大河の…