田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2020-04-01から1ヶ月間の記事一覧

沢木耕太郎 著『旅のつばくろ』より。旅への強い思いを抱くために。今は充電期間。

恐らく、いまの子供たちは、岩井海岸に臨海学校に行っても、栗駒山に林間学校に行っても、いや行かなくても、私や理髪店の主人のように強い思いを抱くことは少ないような気がする。家族と泊まりがけの他の旅行と紛れて、淡い記憶しか残らないのではないかと…

岩田健太郎 著『感染症は実在しない』より。病気は現象、学力も現象。

(前略)インフルエンザは実在せず、私たちが認識する現象にすぎません。そして、私たちの認識のあり方は、どのように検査をしようとか、どのように治療をしようかという戦略性・恣意性によって変わってきます。私たちの態度、立場、恣意性がインフルエンザ…

中村文則 著『遮光』より。典型さについて。昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。

美紀が今いれば、私には違う人生があったし、それは美紀にとっても同じ事だった。私は美紀を幸福にしたかった。私は美紀と、よくある平凡な生活を、そういった典型的な生活を、ただしたかった。(中村文則『遮光』新潮文庫、2020) おはようございます。先月…

門井慶喜 著『銀河鉄道の父』より。厳しさと過保護の間で揺れ動く現代のお父さん。

もっとも多かったころは九人いたのだ。家族の数が半分以下になると、時の経つ速さは倍以上になる。そのことを政次郎ははじめて知った。 或る朝。 シゲとクニが学校へ行ってしまうと、がらんとした座敷に立って、(あ) 心が、棒のように倒れた。 倒れる音ま…

神保哲生、宮台真司、他『教育をめぐる虚構と真実』より。ペスト → 文芸復興(ルネサンス)。コロナ → 教育復興。

経済界は教育に「新しい産業構造に合った人材をくれ」と言いだします。利害関係者として当然の要求です。問題は、それにどの程度応じるべきなのか。あるいは、どの程度拒絶すべきなのか。経済が回らないと、社会は回りません。でも経済を回すために社会を犠…

神成淳司、宮台真司 著『計算不可能性を設計する』より。ICTを活用し、履修主義から習得主義へ。

では、教育のどの部分に人間が必要なのかと言えば、教科書に記述された内容とは別に、より実践的な要素を盛り込んだ教育の部分でしょう。テストでよい点を取るためではなく、実際に社会に役に立つような実践的な教育のことです。 例えば、物理・科学の実験で…

村上春樹 著『猫を棄てる 父親について語るとき』より。降りることは、上がることよりずっとむずかしい。

それが僕の子供時代の、猫にまつわるもうひとつの印象的な思い出だ。そしてそれはまだ幼い僕にひとつの生々しい教訓を残してくれた。「降りることは、上がることよりずっとむずかしい」ということだ。より一般化するなら、こういうことになる――結果は起因を…

沢木耕太郎 著『陶酔と覚醒』より。小学生は陶酔して「する」。教員は覚醒して「みる」。

もしかしたら、「みる」に対する言葉は「みられる」なのかもしれない。しかし、私には「みる」の対語は「する」であるような気がする。そして、その「みる」という動詞を人と結びつけるとするなら、「みる者」と「みられる者」ではなく、「みる者」と「する…

日垣隆 著『つながる読書術』より。コロナの夜長に、つながる読書を。

私自身が「本読み競争」に参加したのは高校三年の三月からです。それまで書店で本を買ったこともなく、本好きの姉にバカにされていました。「本を読まない男に価値はない」と宣告されたときは、「多感な年頃のかわいい弟に、こんな言葉を投げつけるとは」と…

若狭蔵之助 著『子どもと学級』より。自由からの逃走。歴史は繰り返す。

彼らは、身近な自然や社会にはたらきかけ、そこに興味を見出し、それを書いていくことに慣れていない。彼らはつねに、彼らの内からではなく外から課題を与えられてきた。したがって、彼らに課題を与えてきた教科書やドリル帳やプリントを取り除かれると、よ…

沢木耕太郎 著『無名』より。結局、親。やっぱり、育て方。

父が松原団地の病院に入院して、私が初めてひとりで看病することになった夜だった。 私は仰向けになって眠っている父の横顔を眺めながらぼんやりと考えていた。父と二人だけの行動というのがどれくらいあったか。父と二人で旅したことは……ない。父と二人で凧…

岩田健太郎 著『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』より。昨夜、マル激に岩田健太郎さんが出ていました~🎵

私が他者とは違う。それは当然のことだ。当然のことが当然のこととして了解される。個人の中でそれが了解され、仲間のあいだでそれが了解される。 社会全体の中で「違い」が認識され、了解され、許容されるとき、現在も続く、昭和の時代からの「いじめの構造…

中村文則 著『逃亡者』より。なぜ神は沈黙しているのか。

なぜ神は、自分の信者が行う蛮行にまで、沈黙なさっていたのか。被害だけでなく、信者が加害者になることまで沈黙するとは、どういうことなのでしょうか。 フランスのヴェトナム植民地支配。元々は、キリスト教圏のヨーロッパ諸国による、大航海時代に遡りま…

メイソン・カリー 著『天才たちの日課』より。天才=クリエイティブ。クリエイティブ=子供。天才=子供。

「私は毎日書かなければならない。それは成果をあげるためではなく、習慣を失わないためだ」。これはロシアの文豪トルストイが1860年代の半ばに書いた数少ない日記のなかの一文で、『戦争と平和』の執筆に没頭していたころのものだ。トルストイはその日…

下川裕治 著『日本を降りる若者たち』より。日本では人に出会えない。昔も、そして今まさに。

「ゲストハウスの人間関係が好きなんです。長くいる人もいるけど、基本的に旅行者でしょ。あるとき、宿で一緒になって、いろんな話をして、そしてそれぞれの目的地に旅立っていく。そういう関係っていうのかな。近づきすぎず、遠すぎずっていうような関係、…

岩田健太郎 著『新型コロナウイルスの真実』より。感染症と向き合うために、考え続けるという心構えを。

職場もだいたい、人員的にギリギリな状態ですよね。本来は、いざというときのために余裕を持たせておくべきなんですよ。11人だけのサッカーチームなんてないでしょう? 誰かが怪我したり病気になったときのために、常にサブのメンバーを用意して、30人ぐ…

ひろゆき 著『1%の努力』より。1%のひらめきがなければ、99%の努力は無駄になる。

子どもが多くて、みんなが貧乏でヒマだった。 その地域全体で子育てをする感覚があった。よその家の子どもをみんなが知っているので、友達の家でごはんを食べたり、泊まり合ったりした。 いまでいうシェアハウスの原型のような「支え合い」がすでにあった。 …

カフカ 著『絶望名人カフカの人生論』(頭木弘樹 編訳)より。絶望しているときには、絶望の言葉が必要である。

結核はひとつの武器です。 ぼくはもう決して健康にならないでしょう。 ぼくが生きている間、どうしても必要な武器だからです。 そして両者が生き続けることはできません。カフカ『絶望名人カフカの人生論』頭木弘樹 編訳、新潮文庫、2014) おはようございま…

藤原正彦 著『心は孤独な数学者』より。孤独の中で好きなことに没頭する。ピンチをチャンスに!

ウールズソープ村に帰省していたこの時期に、二十代前半の青年ニュートンは、何と微積分法、光と色に関する理論、万有引力の法則という、三つの大理論の端緒を発見したのである。ペストによる大学閉鎖が、若き天才を雑務から解放し、孤独の中で研究に没頭す…

ひろゆき 著『なまけもの時間術』より。自由な時間を生きることで、他にはない自分だけの価値を生む。

まずは「自分の自由な時間」を作らない限り、他にはない自分だけの価値なんてものをつくり出すことはできないだろうと思います。何より、好きなことがあるのなら、それをする時間が長いほうが生きていて楽しいですよね。 ブラック企業に勤めていて、そんなこ…

内田樹 著『サル化する世界』より。休校だけど、学童はOK。どう思う?

アメリカの方は、日本に勝った後にどうやって占領するかの計画を早々と立案していた。日本人のものの考え方とか組織の作り方とかを戦時中に学者に委託して研究しています。卓越した日本人論として今も読み継がれている『菊と刀』はルーズベルトが設置した戦…

映画『三島由紀夫 VS 東大全共闘 50年目の真実』(豊島圭介 監督作品)より。圧倒的な熱情と、圧倒的な面白さ。

人間というものは刀を突きつけられると、よし、おれは死んでもいってやるのだ、「板垣死すとも自由は死せず」という文句が残る。しかし口だけでいくらいっていても、別に血が出るわけでもない、痛くもないから、お互いに遠吠えする。民主主義の中には偽善と…

井上ユリ 著『姉・米原万里』より。緊急事態宣言で生まれた時間が「夢中」を生む、かもしれない。

姉は気に入った本があると、電話してくる。そして、情熱をこめて勧める。遺した書評を読むと、電話のときの気合いの入った息遣いが聞こえてくるようだ。わたしも気に入った本は万里に勧めた。大人になってから、ふたりで話すことといえば、食べ物のことか本…

中村文則 著『私の消滅』より。過去に損なわれる未来と、未来に救われる過去。教育は過去ではなく、未来を問う。

アリストテレスという古代の学者が、神に変えられないのは過去だけだと言ったらしい。では神は無能だ。人間は違う。過去が積み重なり現在になる。それがこの世界の成り立ちで常識というのなら、僕はそれを拒否する。そもそも、なぜ人は悲劇を経験しなければ…

本庶佑 著『幸福感に関する生物学的随想』より。幸福感を高め、免疫力を高め、コロナクルナ。

幸福感も相対的な感覚に基礎を置いていることを考えるならば、安定した状態の中での差を認識することが永続的な幸福を保証するものではないかと思われる。つまり、不快感のない安らかな心の状態に達した上で、時折の軽い不快感によってそのありがたみを確認…

沢木耕太郎 著『檀』より。過ぎやすい人生の悲しさを知っていればこそ。

みんな元気ですか。ロンドンに十五日居り、パリに着いてから、もう二十日になります。木賃宿にとまったり、豪華ケンランのHOTELにとまったり、面白いですよ。あなたは人生を楽しむことを知らないから、是非共、欧米に来てみたらいい。みんな堂々と、接…

沢木耕太郎 著『凍』より。圧倒的な「凍」の世界で、待つということ。

何事も、あるていど長く続けているとマンネリになってしまうところがあるのかもしれない。経験することに新鮮さを失ってしまう。すべてはすでに経験しているという感じを持ってしまうのだ。以前は遠くに発生する大きな雪崩を見ただけで感動したりしていたが…

村上龍、村上春樹 著『ウォーク・ドント・ラン』より。自分をくっきりとさせる出会い。

ある作家の出現で、自分の仕事が楽になる、ということがある。 他者が、自分をくっきりとさせるのである。 ただし、そのためには、他者に相応の力がなくてはならない。(村上龍、村上春樹『ウォーク・ドント・ラン』講談社、1981) おはようございます。いざ…

吉本隆明 著『ふたりの村上』より。学校、再開するってよ。かっこう。

(前略)そういえば「僕」という主人公も、フリー・ライターで三十四歳の独身の男の子にしては、できすぎている。つまり作者の精いっぱいの理念と感性と資質を与えられて、作者の理想と等身大になっている。社会的には比較的自由なゼロにセットされているの…