田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

日垣隆 著『つながる読書術』より。コロナの夜長に、つながる読書を。

 私自身が「本読み競争」に参加したのは高校三年の三月からです。それまで書店で本を買ったこともなく、本好きの姉にバカにされていました。
「本を読まない男に価値はない」と宣告されたときは、「多感な年頃のかわいい弟に、こんな言葉を投げつけるとは」と少々落ち込みましたが、今思えばこれは、神田川くらいには深い姉心。自分の弟が、侮辱されると奮起するということを知っていたのでしょう(ということに、とりあえずしておきます)。
「負けてたまるか」と意地になった私は、大学入学直前の春休みから「一日一冊」というノルマを掲げ、飲み過ぎや発熱で朦朧としていても本を読み続けました。
(日垣隆『つながる読書術』講談社現代新書、2011)

 

 おはようございます。昨夜、自宅で『ロケットマン』を観ました。トランプ大統領がそう呼んでいる「北朝鮮の最高指導者」を描いた映画です。否。世界的ミュージシャンの「エルトン・ジョン」の半生を描いた自伝的な映画です。ロケットマンって、曲のタイトルなんですね。知りませんでした。エルトン・ジョンのことも実はよく知りません。

 

 知らない ≒ 興味がない。

 

 興味がないのにもかかわらず、わざわざこの映画を選んで観たのは、監督を務めたデクスター・フレッチャーに興味があったからです。

 デクスター・フレッチャー監督といえば、そうです。クイーンです、フレディ・マーキュリーです、伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』です。コロナの「コ」の字もなかった2年前、日本でも大ヒットしましたね。友人に勧められて、私も映画館に足を運びました。一回では満足できず、もう一度観に行きました。あの『ボヘミアン・ラプソディー』の監督がつくった作品であれば、おもしろいに違いない。そう思っての『ロケットマン』という選択です。

 

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 映画は監督で選ぶ。

 

 学生時代、無類の映画好きだった友人にそう教えてもらいました。書籍でいうところの「作家を見てから本を選ぶ」という「当たり前の話」と同じです。ある監督の映画が気に入ったらその監督の別の作品も観る。ある作家の本が気に入ったらその作家の別の作品も読む。日垣隆さんの『つながる読書術』に倣えば、つながる映画術ってところでしょうか。

 

 

 日垣隆さんの『つながる読書術』を再読しました。ここでいう「つながる」には、次の五つの意味が込められています。クラスの子どもたちにも毎年教えている読書の効能です。

 

 ① 次の本へと、つながる。
 ② 人と人とが、つながる。
 ③ 私と名著が、つながる。
 ④ 私と世界が、つながる。
 ⑤ 私の行動に、つながる。

 

 まぁ、それぞれ文字通りの意味です。何となくイメージできますよね。好きな作家の作品を芋づる式に読み進めていこうとか、インプット(読む)だけでなくアウトプット(書く、話す、読書会、等々)を前提として読もうとか、寺山修司的に「書を捨てず、旅に出よう」とか、そういった話です。《本を読まないから時間がない》という名言で知られる本田直之さんの『レバリッジ・リーディング』や、原尻淳一さんの『READING HACKS!』など、多くの類書にも書かれていることです。

 では、日垣隆さんの『つながる読書術』だけの魅力は何かといえば、それはもう、エルトン・ジョンに負けないくらいの、著者のぶっとんだおもしろさにあります。そしてそのぶっとんだおもしろさの陰にはぶっとんだ読書量があります。陰日向に咲く。日垣隆さんは、人間が読書をするその最大の理由を《「おもしろいから」でしょう》と書きます。食べるのは生きるため、読むのはおもしろく生きるためというわけです。本を読まない男に価値はない。価値=おもしろさです。

 

 おもしろい本を読むことは、おもしろい人生を築く万能の手段ではありませんが、確実に大きな一助となります。そのためには、おもしろい本を選び、おもしろくなる読み方を知り、さらにそれをおもしろい人生へとつなげていく技術が必要となります。

 

 読書術を武器に、おもしろい人生を築いていった日垣隆さんのことを、ウィキペディアでは次のように紹介しています。

 

 日垣 隆(ひがき たかし、1958年7月30日 - )は、ギャンブラー、作家、英語学校経営、トレーダー、ジャーナリスト。少年犯罪を扱ったノンフィクションや、時事問題を扱ったコラムなど幅広い著作で知られる。2012年より英語学校の主宰も始めた。中華人民共和国、イタリア、フランス、大韓民国、台湾、北中南米などで、300点近くのほぼ全作品が翻訳出版されている。有料メルマガは世界で3万2,500部を突破。日本ではほぼ活動していない。

 

 間違いなくおもしろい人生です。作家よりもギャンブラーが先にきているところなんて特に。本業のジャーナリストが最後かよ。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 では、どのようにしておもしろい本を選び、おもしろくなる読み方を知り、さらにそれをおもしろい人生へとつなげていけばいいのでしょうか。結論からいうと、本の目利きになるためには《大量に本を買い、大量に本を読み、大量に失敗するしかありません》。ベースはそこです。全ては「量」からです。読書に王道なしというわけです。英語の学習と同じですよね。量をこなさないことには、話せるようにも書けるようにもにもなりません。そしてそのようにはっきりと書かれていることが、この『つながる読書術』の信頼を担保しています。

 

 極端さはノウハウの母。

 

 ノウハウは、量をこなすことによって生まれてきます。そしてそのノウハウは、日垣隆さん曰く《人によって違う》とのこと。類書が多く出ているのもそのためです。それらを大量に読んで、自分に合うノウハウを選べばいい。

 就職、結婚、育児と人生のステージが変わっていくにつれて、本との向き合い方も変わってきます。子育てが典型ですが、日垣隆さんも《読書よりもっと大切なことを、犠牲にしてまで読む必要はありません》と書いています。ちなみに私の場合、結婚前のステージでは日垣隆さんいうところの「一日一冊」(絵本も可、ブックレットも可、広告のパンフレットも可)を目標にして「量」にチャレンジし、結婚&育児のステージでは「量」を減らしつつも「読書記録と学級通信のリンク」によって読書を仕事に役立たせ、育児の後半戦(中高生)に入っている現在はブログを活用して新しい本だけではなく過去に読んだ本を再読するということを「ノウハウ」というか「趣味」としています。趣味が高じて、人とのつながりもできました。まさにつながる読書術。コロナ騒ぎが終わったら、また飲みましょう。

 

 祝、200日目。

 

taishiowawa.hatenablog.com

 

 コロナの夜長に。

 

 つながる読書を。

 

 

レバレッジ・リーディング

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  • 発売日: 2006/12/01
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陰日向に咲く (幻冬舎文庫)

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