2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧
私たちは、戦後ながらく、コミュニケーションの自由を求めてきた。しかし自由とは、コミュニケーションの失敗がもっぱら自己責任に帰属されることと同義である。私たちはそうした状況を、かつて一度も生きたことがない。長らく共同体的な存在だったというこ…
鴻上 もしブレイディさんのお母さんが人生相談に投稿するとしたら、うちの娘はもういくつになっても海外に行っては帰ってきて汚い格好をして、どうしたらいいですか、みたいな(笑)……。ブレイディ そんな相談がきたら、なんて答えるんですか?鴻上 いやもう…
「近内君、最近どう?」 ある飲み会の席で、加藤さんは気さくに声をかけてくれました。「今、いろいろ文章を書いてみているんです。でも、文章を書くと、ああ、自分はからっぽなんだなって思い知らされるんです」 僕は思わず加藤さんにそう漏らしました。 そ…
『ソワレ』は、役者志望の村上虹郎が「オレオレ詐欺」で日銭を稼ぎ、劇団員とともに故郷(和歌山)の老人ホームに慰問に出かけ、芋生遥と出会うところから物語が始まる。しかし、ドキュメンタリータッチで描かれる主役の二人に感情移入がしづらく、「点描」…
謎があればこころ穏やかならず、である。手紙の主は美人かもしれないという期待よりも、なによりも謎とあればすぐにそのとりこになる僕の貪婪な探究慾がまたもや首をもたげた。(猪瀬直樹『ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』文藝春秋…
上野 介護業界で非常に尊敬している研修のプロがいます。彼女と話した時、兵法には「戦略、戦術、戦闘」の3つがあって、戦略の間違いを戦術で補うことはできず、戦術の間違いを戦闘で補うことはできない。ところが、介護現場は戦略の間違いと、戦術の限界を…
作家という職業はなぜ生まれたのか。最初の自分探しは学歴エリートよりはじまるが、時間つぶしの余裕をもつ若者は時代とともに増えていき、今日のフリーターの原型のようなかたちで「文学青年」と呼ばれた一群が簇生する。しかし、彼らは生き抜かなければな…
死に場所を探して上野公園で何日か過ごすうちにくたびれ果てて、五年間もここに居着いてしまった。 冬場は辛い。 夜は寒くてよく眠れず、昼の間にコヤから出て猫のように日溜まりを追いかけてうたた寝する日々は、かつては家族の一員であったことを忘れそう…
いまや高柳健次郎の抱いたSF的な夢は技術的な努力の延長のうえに克服されたし、正力松太郎がとり憑かれた大衆を虜にする見世物は企業的に成功した。すでに僕たちはその結果を享受している。(猪瀬直樹『欲望のメディア』小学館、2013) こんばんは。すでに…
描かれるそんな恐ろしさとは別に、作品に登場する人々はとてもチャーミングで愛せる人たちだった。現CEOのリード・ヘイスティングスがどんどん洗練されて「業界の大物化」していくのに対して、インタビューに答える元NETFLIXのメンバーたちは一様…
ロンドンと東京、二つの大都市にそれぞれ田園都市が生まれ、歴史を刻みながら成長をつづけた。レッチワースの第一田園都市株式会社の実務家たちはハワードに冷淡だったが、そのプランを葬り去ることはできなかった。あらためて思想とは強靱なものだと思う。…
内田 セックスアピールって歴史の関数だから、時代とともに揺れ動くんですよ。イケメンのほうが社会的上昇の確率が高いという時代もあったのかもしれない。でも、いまは違う。贈与経済の話のときに岡田さんが言ったとおり、これからの時代、一番頼りになる人…
僕は作家として、作家だからできることを考えた。直感の力、記録し伝える力、という武器を駆使した。ビジネスマンなら、エンジニアなら、公務員なら、中小企業の経営者なら、スポーツマンなら、男でなく女だから、それぞれができることを提案し、提案するだ…