田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2020-05-01から1ヶ月間の記事一覧

神保哲生、宮台真司 著『地震と原発 今からの危機』&「マル激(第999回)」より。これからも種を蒔き続けます。

コンビニエント(便利)な街やアメニティ(快適)溢れる街はどこにでもある。そこでは場所と人の関係が入替可能になる。結果としてそこは住む人にとって便利ではあっても幸福を欠いた実りのない場所になる。そうした事態を避けるための議論が少なすぎる。 人…

宮台真司、鈴木弘輝、堀内進之介 著『幸福論 〈共生〉の不可能と不可避について』より。願わくば、我に支点を与えたまえ。

中央の集権的権力による「多様なものの強制」は複数の場面で可能ですが、最も即効的なのは「一流」大学の入試問題を「田吾作詰め込み主義」から解き放つことです。入試内容につられる形で、高校の授業が、正答がない課題に傾斜するように、誘導するわけです…

ヤマザキマリ 著『仕事にしばられない生き方』より。思い込みの相対化 & おもしろがること。

私達にとっても、これまでのやり方が疑わしく思える今こそ「とりあえず、風呂!」という一手が、きっと有効に違いないと思うのです。 そうすると、決まって「何が風呂だ。こんな時に休んでいる場合か!」「もっと頑張らなきゃいけない時に、休んだりするから…

日垣隆 著『学校がアホらしいキミへ』より。好奇心よりも探究心を。

『大辞林』を引くと、《珍しい事・未知の事に対して抱く興味や関心》とある。いかにも小難しい定義だ。わかりやすく、本質を突いたこういう定義はどうか。《あちこちに顔を突っ込んでは、つまみ食いする性癖。転職を繰り返して年収を下げていってしまう人や…

池井戸潤 著『下町ロケット』より。フェイスシールドだって? トンデモない。要・理系思考。

幼い頃、佃の夢は宇宙飛行士になることだった。図書館で読んだアポロ計画の物語に、佃少年は、それまで読んだどんな本よりも興奮し、没頭した。それはそうだ、なにしろここに書かれている冒険は、空想ではなく、紛れもない真実なのだから。 一九六九年七月二…

神保哲生、宮台真司 著『格差社会という不幸』より。仕事でも消費でも自己実現しないけど、人生は楽しいぞ。

そうじゃないでしょう。仕事は食いぶち。楽しみは趣味活動。これでいいはずです。どうしてそこまでして「仕事での自己実現」を求めるのか。昔の地域社会があれば――沖縄はいまもそうですが――所得が低くても夕方六時以降は泡盛パーティで盛り上がるような生活…

妹尾昌俊 著『教師崩壊』より。生存者に告ぐ、ティーチャーズ・クライシスを回避せよ。

横浜市立小中学校への調査(N=521)によると、教師の1ヶ月当たりの読書冊数は、0冊が32.4%、1冊が33.6%、2冊が16.1%です。3冊以上は2割もいません。 この結果が多忙のせいかどうかの検証はできていませんが、とても熱心に学び続けて…

宮台真司、藤井誠二、内藤朝雄 著『学校が自由になる日』より。佐藤学さんの「学びの共同体」と、学校の新しい生活様式と。

藤井 先ほどの話にも出てきたんですが、「学びの共同体」ということを提唱しているのは教育学者の佐藤学さんです。これまで話し合われてきた共同体主義者の旗頭のような人だと思いますが、リベラリズムを論じていく上では、彼の主張は無視できないと思います…

宮田珠己 著『旅の理不尽』より。理不尽をエンジョ~イする力を学ぶ。

旅とは何か。 それは、とても深い問題である。あまりにも深く難しいため、旅は人生であるとか、試練であるとか、出会いとか、めぐり会いとか、メグ・ライアンとか、いろいろ言われているが、その真相は謎のままである。 さて、私は、名もない一介の素敵なサ…

岡崎玲子 著『レイコ@チョート校』より。人生いろいろ、教育もいろいろ、授業スタイルだっていろいろ。

しかし、なんといっても、数学の授業のスタイルが、今まで慣れてきたものと全く違ったので、戸惑った。宿題は、新しい章を読んで、問題を二十問ほど解くこと。数学の授業の前日、ずらりと並ぶ問題を目の前にして、私は、焦っていた。宿題は、授業で学んだペ…

宮台真司、永田夏来、かがりはるき 著『音楽が聴けなくなる日』より。音楽は自由にする。友達や仲間も、きっと自由にする。

もしかすると社会はそうなりかけているのかもしれない。この文章を書いている僕や、「なるほど」と思ってくれた貴方は、極く少数なのかもしれない。であればこそ、そうした少数者が連帯して、既に人間モドキだらけになった「社会という荒野」を生きねばなり…

為末大 著『Winning Alone』より。個人商店と呼ばれる小学校の担任にお勧めの一冊。

注意を向ける先が変われば動きは変化する。難しいのは変えたい対象そのものに注意を向けたからと言って、そこが変わるとは限らない点だ。右足を前に出したいと思っているときには、右足のことを考えるよりも右腕を引いた方が前に出る。さらには右足はみぞお…

宮台真司 著『「消えた老人」はなぜ生まれるのか』より。家族がいれば、仲間がいれば、老人は消えなくなる。

しかも、こうした事件が起こる度に、日本では行政の不手際が指弾されるということになっているのですが、これもちょっと国際標準的にはあり得ないことですよね。 それよりも、近隣の超高齢者が不在であることに気がつかない、そういう隣人たちから成る社会、…

宮台真司 編『教育「真」論』より。問題は学力ではなく、「社会的なもの」にコミットメントする動機づけ。

学力低下は本当に小さな問題です。「学校的なもの」から脱却すれば、そりゃあ学力は低下するでしょう。それでも「社会的なもの」にコミットメントする動機づけが強ければ、あとからいくらでも学んで、必要な領域については簡単に追いつくことができるでしょ…

村田沙耶香 著『消滅世界』より。Beforeコロナの世界と Withコロナの世界の狭間で。逆アダムとイブ。

夫の今の恋人とは、私も何度か会ったことがある。ショートカットの小柄な女性で、さばさばと明るく夫に軽口を言うのが可笑しくて、三人でたくさん笑いながら食事をした。 少し辛辣なところもあるが賢くて、素敵な女性だった。私は彼女が好きだったし、二人は…

鳥山敏子 著『賢治の学校』より。慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル サウイフ親ニ ワタシハナリタイ。

本当の楽しさには、いつ死ぬかもしれない危険が伴うこともある。そういう楽しさを保証しないと、子どものからだの野生やエロスは育たない。それを賢治は十分に知っていたのだと思う。けがをしたり、最悪の場合は死んでしまうかもしれないことを賭けて生徒の…

映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』(細川徹 監督)& 鈴木光司 著『パパイズム』より。学校を削って家庭に還す。ええ加減に。

「家族サービス」という言葉がきらいである。 この言葉のウラには、せっかくの休日を家族とともに過ごすのはもったいない気がするという発想がある。しかし、いまだかつてボクは一度もそんなふうに考えたことがない。ボクにとっては、いつも妻と子と一緒にい…

東浩紀 著『哲学の誤配』より。学校に誤配を。そして人生にも。

これから、観光は哲学的にも重要な概念になっていくでしょう。そもそもひとが観光するというのは、とても興味深い現象です。さきほどもいいましたが、観光地に行くとき、みなすでにその場所について知っている。にもかかわらず訪れる。「富士山っていったい…

東浩紀 著『新対話篇』より。それはレールモントフです。サウイフモノニワタシハナリタイ。

沼野 同じイベントかはわからないのですが、渋谷の小劇場ジャン・ジャンに五木さんが登壇されたとき、満員になった会場入り口で、強引に入ろうとするお客さんを追い払っていたのが、当時まだ学生だったわたしでした。消防法の規制で、定員以上入れてはいけな…

國分功一郎 著『哲学の先生と人生の話をしよう』より。コロナ時代の哲学対話、その作法は如何に。

シルバーハンマーさんが知識と考える力を身につけたいと思ったなら、ただそれをやればいい。しかし、それらを身につけたら自分の人生は大丈夫だと思っては大変な誤りを犯すことになります。「リア充な写真」をFacebookにアップしまくっている人間が、社会に…

西加奈子 著『i』より。みんな同じ → みんな違う → 考える → アイデンティティの確立。

日本では「みんな同じ」だった。 肩につく髪は結ぶこと、髪は染めないこと、スカートの長さはひざ下3センチであること、靴下は学校のエンブレムがついた白であること、靴は黒のローファーであること、バッグは学校指定の黒い革のものであること。 すべてを…

星野道夫 著『旅をする木』より。幸福とはどういうものか。よく生きるとは。

町から離れた場末の港には人影もまばらで、夕暮れが迫ってきた。知り合いも、今夜泊まる場所もなく、何ひとつ予定を立てなかったぼくは、これから北へ行こうと南へ行こうと、サイコロを振るように今決めればよかった。今夜どこにも帰る必要がない、そして誰…

諸富祥彦 編著『〈宮台真司〉をぶっとばせ! ”終わらない日常” 批判』より。コロナと共に、終わりなき日常を生きろ。

本書は宮台真司を批判する(ぶっ飛ばす!)本である。そして、私に与えられた課題は、彼の教育論を批判することである。しかし、何を隠そう、私は彼の教育論に結構共感してしまっている。(諸富祥彦 編著『〈宮台真司〉をぶっとばせ! ”終わらない日常” 批判…

三浦しをん 著『風が強く吹いている』より。親を喜ばせたいやつばかり、ってわけでもないんだよ。

「私自身、報われなかったのはがんばらなかったからだという考え方に納得がいかないからです。才能や実力のない人に到底たどりつけない目標を与えてがんばらせるのは、人間を不幸にすると思う。できる、できないという基準ではない価値を築けるかどうかを、…

宮台真司 著『社会という荒野を生きる。』より。コロナ禍という荒野を生きる。憲法の話と家族の話。

実際、奥平先生の憲法学がとりわけ強調するのが「憲法とは何か」なのです。共著の『憲法対論』でも「憲法とは何か」を分厚く語っていただきました。日本では「非常識な人」が多いので、「法律の一番偉いのが憲法だ」などと思っていますが、ありえません。 法…

伊坂幸太郎 著『逆ソクラテス』より。教え子との再会は教師冥利に尽きるという話。

僕が思い出したのは、父が前に、「お父さんたちも試行錯誤なんだよな」と言った時のことだ。「子育ては初めてだし、何が正解なのかいつも分からないから、ほんと難しいよ。ただ少なくともお父さんは、自分が親に言われたり、やられたりして嫌だったことはや…

東浩紀、宮台真司 著『父として考える』より。with コロナの時代に「親として考える」こと。

こうした「遊びからの学び」と、「お話を聞くときは手をおひざ」とか「犬と猫はどちらが大きいですか」みたいな教育と、どちらが子どもの将来の幸せにとって有効なのかは、言うまでもありません。何度も言うけど、自分の頭が悪くても、頭が良い子と友だちに…

宮台真司 著『正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く』より。教育における直接体験や享楽はどうデザインすればよいのだろう。

子供らが草野球するのを、野原に降り立った火星人が見ている。フィジカル(物理的・身体的)な挙動は観察できる。でも何をしているのかは分からない。分かるには子供らの体験を追体験できなければいけない。火星人はやがて「こうではないか」と思えるように…