田舎教師ときどき都会教師

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ヤマザキマリ 著『仕事にしばられない生き方』より。思い込みの相対化 & おもしろがること。

 私達にとっても、これまでのやり方が疑わしく思える今こそ「とりあえず、風呂!」という一手が、きっと有効に違いないと思うのです。
 そうすると、決まって「何が風呂だ。こんな時に休んでいる場合か!」「もっと頑張らなきゃいけない時に、休んだりするから遅れをとるのだ」という批判が出てきそうですが、これまでのやり方が手詰まりになっているのに見ぬふりで突き進んだら、行き着く先はどうなるのか。歴史が、すでにそれを証明してくれていますよね。
(ヤマザキマリ『仕事にしばられない生き方』小学館新書、2018)

 

 こんばんは。台湾の蘇澳(スオウ)というところに、「とりあえず、風呂!」という一手があまり有効ではない浴場があります。入るとヒヤッとするのがその理由です。水温は年間を通して約22℃。だから浴場は浴場でも、そこは温泉ではなく冷泉と呼ばれています。冷泉だって(?)、それってただの生ぬるい水なんじゃないの。そう思うかもしれません。でも、違うんです。ただの水ではなく、冷泉は大量の二酸化炭素を含んだ炭酸泉なんです。

 

 台湾とイタリアにしかないといわれる、冷泉。

 

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台湾の蘇澳にある冷泉にて(98)

 

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冷泉の近くにある食堂にて

 

 ヒヤッとする水に浸かってジッとすること約5分。ガイドブックの説明通りに小さな気泡が肌を覆い、やがて体はポカポカに。なんてことは全くなく、私は震えながらヒヤシュワッとする水を後にしました。いったい何なんだ。憤慨していたところ、食堂のおばちゃんが笑顔で声をかけてくれて、さらに美味しい水餃子をおまけしてくれて、心がポカポカに。なるほど。ガイドブックにしばられている場合ではありません。何事もおもしろがるのが一番です。

 

 ヒヤシュワッ。

 

仕事にしばられない生き方 (小学館新書)

仕事にしばられない生き方 (小学館新書)

 

 

 ヤマザキマリさんの『仕事にしばられない生き方』を読みました。私が勝手にカテゴライズするところの生き方シリーズ第二弾。名著『国境のない生き方  私をつくった本と旅』の続編にあたる一冊です。結局、人。やっぱり、生き方。

 

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 ヤマザキマリさんといえば、やはり漫画というか映画というか阿部寛というか、とにかく『テルマエ・ロマエ』ですよね。ラテン語で「ローマの浴場」を意味するこの作品は、ひょんなことから古代ローマと現代日本を往き来することになった、設計技師ルシウス・モデストゥスのなんちゃって英雄譚です。ルシウスが設計するのは、浴場、すなわち風呂。

 

 井の中の蛙というけれど、自分が狭い価値観の中にいる時は、その特殊さを自覚することもできずに、自分のやり方や考え方を当たり前のことだと思っている。
 旅をして、自分が生まれ育った国とは、歴史的な背景も、文化も、宗教も異なる国に行くと、カルチャーショックを受けるのはそのせいです。外に出たことで、初めて自分がどんな場所にいたのかがわかる。自分のやり方が、どこの誰にでも通用するわけではないことを知るわけです。

 

 日本で生まれ育ったヤマザキマリさんは、17歳でイタリアのフィレンツェに渡り、二十代の最後に母親デビュー&漫画家デビューを果たします。そしてダブルデビューと同時に帰国。その後、2回目の結婚を機に、シリアのダマスカスやポルトガルのリスボン、アメリカのシカゴなど、引っ越しを繰り返しつつ、時空にしばられない生き方をしていたルシウスと同じように、国境にしばられない生き方を続けます。国境にしばられないことのよさは、

 

 思い込みを相対化できること。

 

 似たのも同士というかなんというか、同じく国境にしばられない生き方をしていた故・星野道夫さんが《つまりその旅は、自分が育ち、今生きている世界を相対化して視る目を初めて与えてくれたのだ》と同じようなことを綴っているのは、偶然ではないでしょう。

 

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 ヤマザキマリさんは、国境だけでなく、仕事にもしばられません。16歳のときにちり紙交換を体験したことを皮切りに、イタリアで観光客を相手に革製品を売ったり、日本に戻ってきてからは温泉レポーターを含む「10足のわらじ」を履いたりするなど、仕事の面でもノマド体質ぶりを遺憾なく発揮します。

 

 仕事とは何か。

 

 それを最初に教えてくれたのは《間違いなく、母でした》とのこと。ヤマザキマリさんの母親は《私はこうしてきたけど、マリ、あなたなら、どうする?》と、娘が何をしでかすのか、その出方をいつもおもしろがっていたそうです。どん仕事を選んだとしても、それをおもしろがってくれる母がいる。ずっとおもしろがってくれる人がそばにいる。だからどんな仕事もおもしろがることができる。そして仕事が合わなければ、母が孫のデルスのためにもってきたナナフシのように、脱皮すればいい。

 

 子どものやることをおもしろがる。

 

 もと陸上選手の為末大さんも、自身の母親とのかかわりについて、同じようなことを話していました。為末さんの母親の場合は、息子が何をしようと、評価はせずに「そうきたか!」って感心する。子育てに正解はありませんが、「『学ぶ』が勝ち」です φ(..)

 

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 最後にこれからの働き方について。

 

 裁判なんて起こしたら、その店で働けなくなってしまう、働き口がなくなるのは困ると、私はまずお金の心配をしてしまったのですが、ジュゼッペに言わせれば「明らかに労働法に違反しているのに、言うなりになって、我慢して働き続ける方がおかしい。キミのそういう姿勢が社会をダメにする」。

 

 英語にプログラミングに消毒作業にって、明らかに残業規制に違反しているのに、言うなりになって、我慢して働き続けるのはおかしい。教員のそういう姿勢が社会をダメにする。ジュゼッペは詩人です。学校の再開にあたって、これまでのやり方(定額働かせ放題)が疑わしく思える今こそ、仕事にしばられることなく、詩人の言葉に耳を傾ける余裕をもっていたいものです。

 

 思い込みの相対化と、おもしろがること。

 

 とりあえず、風呂!

 

 

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