犯罪を許してはいけないが、正しさの押し付け合いの社会の中で、本当の正義とは何なのか。多様性が叫ばれる中で、この無言の同調圧力は何なのか。孤独とは、欲望とはなにかを正面から語る映画を、私は十年間ずっと作りたかったのである。(オフィシャルフォ…
最後に。1994年冬、担任にハブられた私に両親は「もう学校行かなくていいよ」と言いました。愛で受け止めてくれたからこそ、翌日も何食わぬ顔をして学校へ行くことを自ら選びました。いつも多様な「正しさ」を見せてくれる両親に感謝します。親孝行する…
「美味しい」 口の中にまだ熱々のしゅうまいを含んだまま、それでも驚きの声を上げずにはいられなかった。固まりの肉を、わざわざ叩いて使っているのだろう。アラびきの肉それぞれに濃厚な肉汁がぎゅっと詰まって、口の中で爆竹のように炸裂する。「うん、や…
これは目標の喪失にもつながるが、常に最先端を意識していた永田さんはいつの間にか、登る動機が、高校時代に吉川智明さんと登ったときのような、「山の中にいる、ただそれだけの喜び」から、メディアへの評価へと変わっていった面もあったのではないだろう…
これは、ぼくの苦労自慢じゃない。あなたへの「警告」だ。 あの働き方は狂っていた。事実、常に体調不良を訴えていた同業者や同僚が体や心を壊し、時に亡くなることもあった。だから、睡眠時間を削っての深夜勤務や、休まず働いたりしてはいけない。(四角大…
うちに閉じこもらずに、他者に出会うことが、「想像力欠乏症」を治すための方法である。だから、現場に行かなければならない。現場で他者と出会い、自らの問題に向き合って「学び捨てる」ことが、新しい人々とのつながりを生み、新しい価値観を作り出すこと…
資本家の狙いは、労働力という「富」を「商品」として閉じ込めておくこと。「商品」に閉じ込めておくというのは、自由な時間を奪うということです。賃上げによる長時間労働は賃金奴隷の制度を守ることになるのです。 実際、多少賃金が上がったとしても、時間…
時間を遡れば、石原慎太郎は『太陽の季節』でスターになった瞬間の三島由紀夫との初めての対談で、「道徳紊乱」という語を知り、そこから自分で組み替えて自らを「価値紊乱者」と位置付けた。「嫌悪」の出発点である。(猪瀬直樹『太陽の男 石原慎太郎伝』中…
旅の話でもするか。よく旅をしたっけ。まだ誰もが外国なんぞに行けなかった頃の話をしよう。どこから書くか。整理がつかない。思い出すまま、気の向くままだ。 南まわりでヨーロッパに行ったっけ。金がないからソビエト航空、つまり「アエロフロートロシア空…
ちなみに、プーチンは大統領就任前に行われたジャーナリストとのロングインタビューで、KGBを志した動機を次のように語っている。プーチンによれば、少年時代の同人にスパイへの道を決心させたのは、ソ連時代のスパイ映画やスパイ小説であった。こうした…
岡崎さんのご経験としては、給特法成立初期のころの働き方はどのような感じでしたか。岡崎 確かに「四時退勤」を普通にしていましたよ。大内 それは驚きですね。それは岡崎さんだけでしょうか。皆さんそうでしたか。岡崎 当時も遅くまで仕事をしている人もい…
繰り返すが、日本人のとどまるところを知らない働きすぎ、つまりゆとりのないすさんだ心情は、近代化以降、欧米コンプレックスのなかで形成されたにすぎいない。 処方箋は、自画像の再構築の果てに存在するような気がする。(猪瀬直樹『迷路の達人』文藝春秋…
ぼくはしなないぼくはしぬかもしれないでもぼくはしねないいやしなないんだぼくだけはぜったいにしなないなぜならばぼくはじぶんじしんだから(・・・・・・・・・)(岡真史『〈新編〉ぼくは12歳』ちくま文庫、1985) こんばんは。先日、授業でコラボして…
中島 レシピ自体が極めて近代的なもので、政治学で言う設計主義なんですよね。人間がすべてをコントロールし、そして、こういうふうにやれば世の中がうまくいくという考え方。けれども現実は、それどおりにはいかないわけですよね。むしろそういうものが他者…
それは、親鸞が、「言葉の器」になろうとしていたからだと思います。親鸞にとって、『教行信証』を書く自分は、先人の言葉をつなぐ触媒にすぎません。言葉は私のものではなく、私にやって来て留まっているもの。自分がオリジナルの何かを表現できるというの…
数ある見せ場の中で、インド映画最強の武器ともいうべきハイライトのひとつがダンス・シーン。特に、テルグのスターの中でも踊りの巧さに定評のある2人の "ナートゥ" ダンス対決は、これが無ければこの2人を共演させた意味が無いといえるほど、まさに「待…
豪傑の客、「それなら、もしどこか凶暴な国が、われわれが軍備を撤廃したのにつけこんで出兵し、襲撃してきたらどうします。」 洋学紳士、「私は、そんな凶暴な国は絶対ないと信じている。もし万一、そんな凶暴な国があったばあいは、私たちはそれぞれ自分で…
僕は政治の世界にコミットしたつもりではない。太宰治や司馬遼太郎と共通の直観に突き動かされただけである(東京新聞8月6日付夕刊文化欄から)。(猪瀬直樹『日本システムの神話』角川oneテーマ21、2002) こんばんは。もしも太宰治や司馬遼太郎が政治家…
八歳の冬の日からずっと、強く輝くものが私の胸のうちに宿っている。夜道を照らす、ほの白い一等星のように。それは冷たいほど遠くから、不思議な引力をまとっていつまでも私を守っている。(三浦しをん『きみはポラリス』新潮文庫、2011) こんばんは。先日…
つまりはそういうことなのだ。私が認識している谷原京子と、周囲が見ている谷原京子とは少し違う。ひょっとしたら周囲が見ている自分は、私が見せたいと願っている自分の姿でしかなくて、それがなんとか成功しているからギリギリのところで周囲と折り合いを…
「結局、バッグに退職届を忍ばせている時点で、私たちは辞められないんだ。年月を経るたびに重たいものを背負わされていくし、ままならないことも増えていく。どんどん上の人間がバカに見えてくるし、バタバタしている自分がアホらしくなっていく。でもね、…
僕の小学校時代は、授業で学んだ知識以上に、強制的に集団生活を送る日々から学んだことの方が多かった。友人との出会いや、初恋なども経験したし、俳句大会で佳作に入ったことも小さな成功体験の記憶としてある。一方で、体育が苦手だった僕は運動会にはあ…
それでもいま教師になろうとする人の多くは、きっと教師という仕事を「それでもやりがいがあるはずだ」と選んでいるとおもいますし、実際に仕事をしながら、そのかたちはさまざまでしょうが、なんらかの意義を感じてもいるでしょう。でも、それがこのような…
やりたいことを継続することは無茶苦茶難しくて、やりたくないことを継続することは惰性でできてしまう。 何だか言葉で書いていると、そんなわけはないとみんなから言われそうですが、どうやら、こんな感じじゃないですか? 僕も書いてて、ちょっとびっくり…
この種の話は、苛立ち、もしくは反発を引き起こすかもしれない、あるいは、悪趣味だと非難されるかもしれない。何であれ、あることを経験したということが、それを書くという侵すべからざる権利を与えてくれるのである。真実に優劣の差はない。それに、この…
西川が疲れからついついうつらうつらしかかると、「寝るな」と揺り起こされてしまう。それは蒙古に帰ってからの土産話になるよう、できるだけ多くのものを見させようとする親切心からなのだった。 バルタンのこの幼児のような振る舞いに、西川も心を動かされ…
満州国は日本政府が捏造した紛れもない傀儡国家でしたが、建国大学で学んだ学生たちは真剣にそこで五族協和の実現を目指そうとしていた。私が建国大学を振り返るときに、真っ先に思い出されるのはそういうところです。みんな若くて、本当に取っ組み合いなが…
ものを書くという営みの時間は、恋の時間とは、まったく別物だ。 けれども、ペンを執った時点では、書くのは、まさにあの、見る映画の選択から口紅選びまで、何もかもが同じ方へ、ある人の方へ向かって流れていた時間の内にとどまるためだった。最初の数行か…
近代をおさらいするのにうってつけの一冊が、猪瀬さんが著された『ミカドの肖像』です。事実を不可視化するシステムの中で、視えないものをあえて視ようとする日本人のマインドが、圧倒的なボリューム感で描き出されています。猪瀬さんは、自身が「MIKADO」…
いま何をしているのかしら。この頃、テレビで、脚色者としてちょいちょい、出てくる私の名を、彼は見てくれてるかしら。 青年ジルとアンヌ姫のように、私とアイツは、あそこで石になった。そうして三たび、私は目から鱗がおちたようにわかったのだが、アイツ…