田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

滝田明日香 著『サバンナの宝物』より。強くなければ生きていけない。優しくなければ生きていく資格がない。

私は強くならなきゃ生きていけない環境にいた。強くならなきゃつぶされてしまう。自分のアイデンティティや存在さえも、強くアピールしなければ存在しないも同然の社会に連れてこられてしまったのだから。「自分の意見を持て。じゃないと白人社会につぶされ…

猪瀬直樹 著『ニッポンを読み解く!』より。戦後50年は金属疲労を起こしはじめた時間。では、その次の50年は?

⚪先日、あるテレビ番組で東京HIV訴訟原告団の川田龍平君といっしょになった。番組終了後、彼と雑談していたら、「いま、『日本/権力構造の謎』を読んでいるところなんです」と言うのです。つまり、ウォルフレンさんのいう日本的な〈システム〉、この場合…

磯﨑憲一郎 著『日本蒙昧前史』より。我々は滅びゆく国に生きている。

こういう面白い事件、後の時代であればぜったいに起こり得ない、人に語って聞かせたくなるような事件がじっさいに起こった分だけ、やはり当時の世の中はまだまともだった、そう思いたくもなってしまう、核エネルギーの平和利用は可能であると主張し、交通事…

滝田明日香 著『晴れ、ときどきサバンナ』より。多様性の時代だからこそ、一人ひとりの物語が語られねばならない。

私はいろいろな国で育ち、知らず知らずのうちに価値観の混ざった人間に育ってしまった。日本の文化の家庭に生まれ、外国の地で育った。様々な国の良い所と悪い所を見て、自分でいい所だけを取るように心がけていた。そして、放浪の暮らしをしているうちに、…

猪瀬直樹 著『東京からはじめよう』より。つねに好奇心をもちながら。

後藤新平という人物を考えるときに面白いと思うのは、彼は、岩手の水沢の出身なので、藩閥出身でないし、中央の出でもない。岩手で生まれて、名古屋に行って、台湾、満州で経験を積んで、最後に東京へ戻ってきた。だから、東京の問題点がよく見えて、改造の…

山竹伸二 著『共感の正体』より。共感の本質観取を試みる。

コールバーグは自身の理論を検証するために、10歳から16歳までの少年72人に次のような質問をしている。「ハインツの奥さんがガンで死にかかっている。特効薬で助かるかもしれないが、それを買うお金が半分しか集まらず、交渉したが断わられた。困った…

三浦英之、阿部岳 著『フェンスとバリケード』より。ジャーナリズムと同様、教育も語るものではない。それは実践するものである。

「何を背負って、何に向けてペンを握っているのかを、執筆する記事で示せるのがいい記者だと初任地の上司に言われました。自分の存在感と問題意識と個性は記事で示せと。それがかなわなくなっているので、朝日新聞を去ります。ちなみに辞めて何するかは全く…

小沢慧一 著『南海トラフ地震の真実』より。なぜ南海トラフ地震の発生率だけが他の地域とは違う計算モデルで出されているのか?

日本はどこでも地震が発生するし、現在の地震学にはそれがいつ、どこで起きるかはっきり予想する実力はない。そんな中で南海トラフや首都直下ばかりに注目が集まるような確率を出すことは、逆に他の地域の油断を誘発することになる。 とはいえ、私は南海トラ…

三浦英之 著『水が消えた大河で』より。根をもつことと翼をもつこと。

1990(平成2)年、信濃川沿いにJR東日本の新しい発電所が完成し、毎秒317トンもの大量取水が開始されると、信濃川中流域は一気に干上がり、慢性的な水涸れ状態に陥った。魚が死に、流域周辺の井戸が涸れ、人々が心の拠り所としてきた雄大な大河の…

布施祐仁+三浦英之 著『日報隠蔽 自衛隊が最も「戦場」に近づいた日』より。喜劇と悲劇。犠牲になるのはいつだって真実。

開示された日報を読んで私が最も強く思ったのは、このような現地の激しい戦闘の実態や派遣部隊の厳しい情勢認識が2016年7月の段階で公にされていれば、自衛隊の派遣期間延長や新任務付与は果たしてできたのだろうかということであった。 逆に考えると、…

三浦英之 著『牙』より。風が吹けば桶屋が儲かる。日本人が象牙の印鑑を買えば、どうなる?

「本当にひどい」と滝田は意図的に言葉を尖らせて言った。「なんで日本人はそんなに象牙の印鑑を欲しがるのかな? 私は6歳で父の仕事の関係で日本を離れてしまっているから、そこら辺の事情、よくわからないのよ。印鑑にしても、アクセサリーにしても、それ…

三浦英之 著『帰れない村 福島県浪江町「DASH村」の10年』より。十年一昔ではない。断じて違う。

「彼らはいつもハキハキとしていて、一生懸命農作業に取り組んでくれた」 古民家を舞台にアイドル自らが田植えや炭焼きを体験し、自給自足の生活を送る。そんな農作業の風景が高齢者には懐かしく、都会の若者の目には新鮮に映った。 TOKIOは「農業アイ…

フィリップ・K・ディック 著『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』より。学力も大事だけど、共感性はもっと大事。

あんなにすばらしい歌手だったのに――映話をすませて受話器をもどしながら、リックはそう考えた。おれにはわからない。あれだけの才能が、どうしてわれわれの社会の障害になるわけがある? だが、問題は才能じゃない、と自分にいいきかせた。アンドロイドだっ…

ボブ・グリーン 著『デューティ』より。原爆を落とした男のこと、知っていますか?

「トヨタを購入する前に躊躇しませんでしたか?」「わたしはその日本車が気に入っている。なんの含むところもない。いい製品だし、理想どおりだった。だから購入したのだ」「おかしな気分にはなりませんでしたか?」「全くならなかった。わたしは日本人に敵…

ピート・ハミル 著『ニューヨーク・スケッチブック』より。恋愛というのはできるうちにせっせとしておいた方が良い。

長い沈黙のあとで、彼女は声をふるわせて言った。「あたし、あの頃とは見分けがつかないくらい老けちゃったわよ」「おれだってそうさ」サルの声は、歌手志望の頃の低音域に落ちた。「あたし、成人した子供が三人いるの。それから、毎日庭の手入れなんかして…

朱野帰子 著『わたし、定時で帰ります。3』より。100年前に闘ってくれた労働者に申し訳ない。

「残業時間は月20時間まで。超過はダメですよー。東山さんの評価に響いちゃうので。」(朱野帰子『わたし、定時で帰ります。3』新潮文庫、2023) こんばんは。これですよ、これ。職員室でも聞きたい台詞は。引用の《東山さん》は管理職です。だからこの台…

池田信夫 著『日本人のためのピケティ入門』より。資本主義では格差も不平等も拡大する。

今までの経済学では「資本主義の発展とともに富が多くの人に行き渡って所得分配は平等化する」とされてきました。これは資本の生産性が労働を上回れば投資が増えて資本収益率が下がり、労働生産性に近づくと考えられていたからです。現実にも、クズネッツな…

三浦英之 著『太陽の子』より。日本がアフリカに置き去りにした秘密とは?

コンゴは世界的に見ても資源が極めて豊かな国であり、それゆえにその膨大な資源の恩恵に与ろうと先進国が蟻のように群がっている。地下の資源が豊かすぎるために、地上では何かを生み出そうとする産業が育たず、人々はレオポルド二世の時代から何一つ変わる…

沢木耕太郎 著『夢ノ町本通り』より。深夜特急の旅に出る直前に書いたという幻のエッセイを初収録!

以前、私は書く側における「方法への疲労」というものについて考えたことがあった。明確な方法意識を持って書きつづける書き手には、ある時、その方法に対する疲労感とでもいうべきものが生まれ、そこからの脱出を夢見るようになるのではないか、と。しかし…

三浦英之 著『白い土地 ルポ 福島「帰還困難地域」とその周辺』より。How wonderful my life with you is !

彼はきっと「知らない」のだ ―― かつての私がそうであったように。 廃炉作業が思うように進んでいない福島第一原発の現実も。《白地》と呼ばれる100年以上も住民が住めない帰還困難地区が広がる沿岸部の風景も。そこで暮らす人々の気持ちも。ただ故郷で暮…

畠山理仁 著『黙殺』より。映画『NO 選挙,NO LIFE』(前田亜紀 監督作品)とセットで、ぜひ。

2017年に行われた衆議院議員総選挙では、被選挙権を持つ25歳以上の有権者のうち、立候補した人の割合は「約7万5千人に1人」だった。2019年の参議院議員通常選挙(被選挙権30歳以上)では「約25万人に1人」の計算だった。この数字を見れば…

今井孝 著『らくらく売る人のアタマの中』より。らくらく売って、らくらく贈る人に。

ここで、最も楽な集客方法をこっそり教えます。 それは、「一人ひとりに声をかけること」です。 そう言うと多くの人が「面倒だ!」「余計にしんどい!」と言います。 しかし、これはウソではありません。本当にそれが最も楽に集客できるのです。(今井孝『ら…

村上靖彦 著『仙人と妄想デートする』より。自らの自由な実践の土台となるプラットフォームを生み出す。

看護実践は無数の多様さへと開かれている。看護師の個性だけでなく、さまざまな疾患に応じて、さまざまな病棟文化に応じて、個々の患者や家族の個性や文脈に応じて、一つとして同じ実践はないであろう。本書では精神科と助産、訪問看護を中心に、保護室での…

尾登雄平 著『「働き方改革」の人類史』より。映画『NO 選挙,NO LIFE』をもじれば「NO 労働,NO LIFE」。それって、本当?

ビジネス書は読者を啓発するためのものなので、ネガティブなことにはあまり触れません。あなたはどうすれば成功するのか、生き残れるか、といったことを書きます。「できない」人は想定読者ではないので、当たり前と言えば当たり前です。ただ、同じ社会の構…

ジョン・ハンター 著『小学4年生の世界平和』より。エンプティー・スペース(考える余地)をたっぷりと生み出す。

母は私に――それどころか誰にも――答えを与えてはくれなかった。その代わり、私たちが探求者、探検者、開拓者になれるだけの余地を創り出してくれた。こうして私はわずか9歳の小学生ではあったが、あのエンプティ・スペースに秘められたパワーのすごさに気づ…

阿部彩 著『弱者の居場所がない社会』より。弱者の居場所がある教室をつくる。

どのような状況にあっても、彼らが最後までかじりついていたのが「つながり」であり、「役割」であり、「居場所」であった。私たちが当たり前のように享受しているこれらが人間の生にとって、いかに大切なのか、いかに基礎的な存在なのか、それを彼らのエピ…

チョ・ナムジュ 著『82年生まれ、キム・ジヨン』より。それで、あなたは何を失うの?

「それで、あなたが失うものは何なの?」「え?」「失うもののことばかり考えるなって言うけど、私は今の若さも、健康も、職場や同僚や友だちっていう社会的ネットワークも、今までの計画も、未来も、全部失うかもしれないんだよ。だから失うもののことばっ…

東浩紀 著『訂正する力』より。東浩紀はじつは・・・・・・と言っていた。

訂正する力は、そのような「事前承認」は求めません。単に「このルールはおかしいから変えるべきだ、否、じつはもともとこう解釈できるものだったのだ」と行動で示し、そのあとで事後承認を求める。それが訂正の行為です。だからそれは、ある観点では単なる…

姫岡とし子 著『ヨーロッパの家族史』より。家族とはなにか。

16世紀フランスの哲学者モンテーニュは、「乳児期の子どもを2、3人なくし、残念に思わなかったわけではないが、ひどく悲しむというほどのことではなかった」と述べている。彼が特別だったわけではなく、乳幼児死亡が非常に高かった18世紀半ばころまで…

赤松啓介 著『夜這いの民俗学・夜這いの性愛論』より。この子の顔、俺に似とらんだろう?

結婚と夜這いは別のもので、僕は結婚は労働力の問題と関わり、夜這いは、宗教や信仰に頼りながら過酷な農作業を続けねばならぬムラの構造的機能、そういうものがなければ共同体としてのムラが存立していけなくなるような機能だと、一応考えるが、当時、いま…