そこで私はふと毎夏ニュースになる「パチンコをやっていて子どもを高温の車中に置き去りにしてしまう」親のことを思い出しました。もし私にもっと仕事のストレスがかかっていたら? 家族からDVを受けていたら? 子猫よりもっともっと手のかかる人間の赤ちゃんの夜泣きに毎日悩まされていたとしたら? 周囲に悩みを聞いてくれる人が誰もいなかったら?
(松本俊彦、横道誠『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』太田出版、2024)
おはようございます。松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡をまとめた長~いタイトルの本の編集担当者である藤澤千春さんのコラムより。そうか、毎年のように「またか」と憤りを覚えてしまうあのニュースの背景には「やめられない」があったんだ。やめられない、すなわち依存症(進行性の病気)のことです。
なるほど。
不勉強で、そういった見方・考え方を働かせたことはありませんでした。酒をやめられない文学研究者やタバコをやめられない精神科医もいるのだから、パチンコをやめられない親がいたっておかしくありません。おかしくないというか、そりゃ、いるでしょう。叱る依存をやめられない教員だっているくらいですから。つまり、
みんな違って、みんなダメ。
横道さんが仲良くしている発達仲間(発達障害の当事者仲間のこと)がそのようなことを言っていたそうです。金子みすゞの「みんな違って、みんないい」と合わせると、「みんな違って、みんなダメ。でも、みんないい」となるでしょうか。そうすると「落として、上げる」という意味で、松本さん言うところ《アディクションはリカバリーの始まり》みたいな感じがするから、
とてもいい。
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』を読みました。「やめられない」の当事者である二人が「心のパンツ」を脱いでさまざまな角度から「依存症」に迫った一冊です。ちなみに松本さんは「依存症」を専門とする精神科医であり、横道さんはアルコール依存症の当事者であると同時に発達障害(ASD、ADHD)の当事者でもあります。
性の問題と言うと、この前の2回目の打ちあわせで、「マコトはこの連載で最初からパンツを脱いだぞ、トシはどうするんだ」問題について語りあって、私が「松本先生に愛人とかはいないんですか。いるんだったら、それについて書いてパンツを脱ぎましょう!」と提案したら、トシが「いたとしても、それはこんなところに書けないよね!?」とマジメに即時却下をくだしたのが、おもしろい一幕でした。
楽しそうです。この往復書簡という企画が持ち上がるまで、二人に面識はなかったそうなので、その二人を引き合わせ、《そんなおふたりが対話することで、何かが起こるのではないか。そしてその対話を読んでいる人にも、きっといい影響があるのではないか》と思考し、期待し、行動し、一冊の本にまとめ上げた担当編集者の藤澤さんの先見の明たるや、
教育者のごとし。
その藤澤さんが、私がポストするたびにリポストしてくれるのだから、それこそアディクティドです。
やめられない。
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「1 ヘイ、トシ!」(横道さん担当)に《トシが紹介してきた、アディクションは快楽に溺れるためではなく苦痛から逃れるためにハマってしまうという「自己治療仮説」には非常な説得力を感じます》とある。当事者の横道さんが言うと、非常な説得力を感じます。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 15, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「3 自助グループと地獄行きのタイムマシン」(横道さん担当)に《私が主催する自助グループでは「神さま」には退場してもらったけど、トシも感動したという「仲間」には大活躍してもらっている》とあり、教室でも子供たちの自治が大切という思いを新たにした。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 15, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「5 無力さの受容と回復のコミュニティ」(横道さん担当)に《アディクションは治療が非常に困難だし、発達障害はそもそも治療ができない。それでも、どちらも対話によって状況が悪化することを防ぐことできる》とあって、脱字を見つけたものの直せない無力さ。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 15, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「7 当事者イメージの複雑化と新しい自助グループを求めて」(横道さん担当)に《薬物乱用防止という錦の御旗があっても、当事者をゾンビやモンスターのような恥辱的表現で描写してはいけない》とあって、薬物乱用防止教室のときにはそのことも伝えようと思う。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 15, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「9 ヘイ、トシ(再び)」(横道さん担当)に《このふたつの時期って、私はじぶんの人生でもとくにつらい時期でもあったと思うんだよね。だから、ゲームもやっぱり「自己治療」だったとしか思えない》とあり、ゲーム依存の10歳前後の小学生への見方が変わる。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 15, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「11 紳士淑女としてのドーパミンのたしなみ方」(横道さん担当)に、文章を書くのがとても楽しいのは《アディクションへの対抗措置としてハームリダクションをやっているのだな、という考え方が湧いてきました》とある。自己療養へのささやかな試み、だろう。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 16, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「13 自己開示への障壁と相談できない病」(横道さん担当)に《じぶんのやっていることが「じぶんらしい自然な振るまい」というよりも、むしろ「精神疾患的なもの」だと気づくことで、ふだんの言動を大幅に修正》できたとある。その気づき、小学生には難しい。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 16, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「15 依存症と共同体、仲間のネットワークへの期待」(横道さん担当)に《トシのように「福祉的なアプローチを併用する精神科医」が増えると、多くの精神疾患はグッと治りやすくなるはす》とある。福祉的なアプローチを併用する教員が増えれば、不登校も減る。
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 16, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの往復書簡の「17 依存症を引き起こすのは、トラウマ? ADHD? それとも?」(横道さん担当)に《自閉スペクトラム症の男性で、結婚することができるのは約1割だという残酷な噂を聞いたことがあります》とある。その1割が結婚できた要因を知りたい。運? それとも?
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 16, 2024
松本俊彦さんと横道誠さんの『酒をやめられない文学研究者とタバコをやめられない精神科医が本気で語り明かした依存症の話』読了。横道誠さんの「おわりに」に《読者にアディクションのようなものを体験させなければならない》とある。体験させられました。往復書簡も藤澤千春さんのコラムも💮#読了 pic.twitter.com/eG0VYHUed3
— CountryTeacher (@HereticsStar) September 16, 2024
ポストにいくつか誤字があって、「2 ヘイ、マコ!」ではなく「2 ヘイ、マコト」です。それから「グッと治りやすくなるはす」ではなく「グッと治りやすくなるはず」です。他にもあるかもしれません。
まぁ、それはともかくとして、今日、早速クラスの子どもたち(小学6年生)にこの本を紹介しようと思います。特に、ポストにも書きましたが、松本さんの鉄板ネタという、次の実験のことを伝えたい!
この往復書簡第6回でごく簡単に触れましたが、ラットパーク実験という有名な実験があります。檻に閉じ込められた孤独なネズミはもっぱらモルヒネという麻薬入りの水ばかり飲むのに対し、もう一方の、仲間たちとじゃれ合いながら過ごしているネズミたちはというと、麻薬入りの水には見向きもせず、ふつうの水しか飲まない・・・・・・という実験です。
つながりだったり仲間だったりが大事だよという話です。一人で困っている人がいたら気にかけてあげようねという話です。小学校の教員にとっても、鉄板ネタとなるエピソードではないでしょうか。あっ、またまた横道さんの新しい本が出るようです。速いなぁ、筆が。そして長いなぁ、タイトルが。なぜスナフキンは旅をし、ミイは他人を気にせず、ムーミン一家は水辺を好むのか。
問いがおもしろいなぁ。
行ってきます。