田舎教師ときどき都会教師

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出口治明、鹿島茂 著『世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵』より。コロナ禍を奇貨として、教育に劇的ビフォアーアフターを。

鹿島 このコロナ禍で僕が一番困ったなと思っているのが、留学にしろ旅行にしろ、海外に行けないから、自分の価値観がひっくり返るような体験をできなくなっていることです。僕は大学でいつも言っているんですが、一つしか知らないと何も生まれない。比べるものがあって初めて、何かを考えたり、発想することができるからです。
(出口治明、鹿島茂『世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵』文藝春秋、2020)

 

 こんばんは。コロナ禍ということで、現在、わたしの自治体では時差出勤が認められています。7時すぎに学校に着き、16時前に学校を出る。夕方に会議があるときには帰れませんが、時差出勤ができなかったビフォアーコロナのときと比べると、格段に働きやすくなったなぁと感じています。満員電車のピークを避けることができるし、帰りは結構な確率で座れるし。コロナ対策のための暫定的な制度とはいえ、アフターコロナになっても認めてほしい「知恵」のひとつです。

 

 

 出口治明さんと鹿島茂さんの『世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵』を読みました。世界一子どもを育てやすい国にしよう(ウェッジ、2016)というタイトルの本で知られる出口さんと、子供より古書が大事と思いたい(文春文庫、1999)というタイトルの本で知られる鹿島さんの対談本です。目次は以下。

 

 第一章  感染症が世界史を変えた
 第二章  コロナが変える日本
 第三章  コロナと米中激突の行方

 

 第一章は「週刊文春」の2020年4月30日号、第二章は7月23日号、第三章は8月13日・20日号に載った対談です。それぞれ大反響を呼んだとのこと。本の帯には《コロナは日本を変えるチャンスだ》とあります。おそらくは第二章が肝なのでしょう。そのことを裏付けるように、帯にはチャンスをものにするためのカギも書かれています。オレンジ色の太字で《カギは昭和おじさん文化からの脱却にあり》と。

 

 どういうことか。

 

 時差出勤してパパが早く帰ってきたり、テレワークや在宅勤務でパパが家にいる時間が長くなったりすれば、親子の関係性が変わって、家庭の在り方も変わって、パパは大人にならざるを得ないということです。ここでいう大人とは、世界経済フォーラムが発表しているジェンダー・ギャップ指数を1に近づけることができるような男性のこと。すなわち家事や育児をママ任せにせず、仕事も含めてバランスよく生きられる成熟した男性のこと。

 

 0は完全不平等、1は完全平等。

 

 ちなみに2020年の日本のスコアは「0.652」で、順位は153か国中121位です。2019年の110位からさらに順位を下げるという体たらく。昭和おじさんも平成おじさんも、成熟した男性ではなかったということです。期待できるのは「令和おじさん with コロナ」かな。

 

出口 それで思い出すのは、今、いわゆる ”夜の街” での感染が問題になっていますが、僕がロンドン勤務になったとき驚いたのは、ロンドンには ”夜の街” がないんですよ。

 

 夜の街というのは《お姉さんが男性をケアするというビジネス》を指します。ろくでもない街です。出口さんに続けて、鹿島さん曰く《パリにある ”夜の街” だって、観光客向けです》云々。さすがフランス文学者です。著書に『パリ、娼婦の館』なんてタイトルの本もあるくらいだから、きっとそうなのでしょう。ではなぜロンドンにもパリにもそういった類いの夜の街が存在しないのか。

 

なぜかといえば、残業しないからです。

 

 残業がないから、長時間労働がないから、夜の街なんて生まれない。昼の光に、夜の闇の深さはわからない。日本独特の夜の街は《男性が働き、女性は家にいるという性分業の副産物》というわけです。要するに、日本がコロナ禍を転じて福となすためには、日本社会の1丁目1番地の課題である「長時間労働」をなんとかしないといけないということです。ずっと前から言われ続けてきたこと。だからこそ、この機会を逃すわけにはいきません。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 コロナが変える学校。

 

 運動会と卒業式と通知表と校内研究がコロナ前よりもシンプルになった。掃除と学芸会と宿泊体験学習がなしになった。短縮時程で15時前下校になった。時差通勤が認められるようになった。健康チェックや消毒作業など、ニュースで報道されるように増えた仕事もあるけれど、勤務校についていえば、全体としてソフィスティケートされて働きやすくなった。特に、行事が精選されるだけで、こんなにも授業にゆとりが生まれるのかって、正直驚いた。もちろん、それでも月の残業は60時間(持ち帰り仕事、等々)を優に超えるし、宿泊体験学習にも行きたかったなぁとは思うけれど、いずれにせよ、

 

 劇的ビフォーアフター。

 

 鹿島さんの言うとおり、比べるものがあって初めて、何かを考えたり、発想することができます。外山滋比古さんの『思考の整理学』に書かれている《ひとつだけでは、多すぎる。ひとつでは、すべてを奪ってしまう》という有名なセンテンスと同じです。第一章の「感染症が世界史を変えた」には、ペストがルネサンスを生んだ、とあります。未来に換言すれば、コロナが教育に劇的ビフォアーアフターをもたらした。って、そうなってほしいなぁ。

 

 教育ルネサンス。

 

 おやすみなさい。

 

 

世界一子どもを育てやすい国にしよう

世界一子どもを育てやすい国にしよう

 
子供より古書が大事と思いたい (文春文庫)

子供より古書が大事と思いたい (文春文庫)

  • 作者:鹿島 茂
  • 発売日: 1999/11/01
  • メディア: 文庫
 
パリ、娼婦の館 メゾン・クローズ (角川ソフィア文庫)