田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2020-01-01から1年間の記事一覧

郡司ペギオ幸夫さんの『やってくる』刊行記念! 郡司ペギオ幸夫さんと宮台真司さんのトークイベントに参加してきました!

バラバラに見える人たちを何らかの指標で一般化し、理解する方法が、人工知能的理解です。特定の指標によって、個人の多様性がコミュニティでの立ち位置と理解され、その表現に成功すると、それ以外の指標や文脈の可能性は排除される。これで十分理解可能で…

リヒテルズ直子 著『オランダの教育』より。個性の重視と社会性の尊重=みんな違ってみんないい + 社会は教育よりもでっかい!

「オールタナティブ」という言葉には、「何かに取って代わる」とか「もう一つの別のやり方」というような意味合いがあります。ですから、オールタナティブ教育というのは、既存の教育に取って代わる別の教育、という意味です。ここで既存の教育といわれるの…

岩元美智彦 著『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』より。技術としくみとブランド。教職にもブランディングが必要。

ごみで走るクルマ「デロリアン」を映画に登場させた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの制作陣は、「循環型社会の到来」を思い描いていたに違いない。 そう思って、「2015年10月21日」までに、現実を映画に追いつかせたいと、かねがね考え…

猪瀬直樹 著『ペルソナ 三島由紀夫伝』より。これを読まずして、三島由紀夫を語ることなかれ。

原敬の暗殺を予期した人物がいた。 殺される八ヶ月ほど前、原は日記に、暗殺の危機を説く男の来訪を記している。大正十年二月二十日夜の来訪者は岡崎邦輔と平岡定太郎である。(猪瀬直樹『ペルソナ 三島由紀夫伝』文藝春秋、1999) こんばんは。今日は運動会…

リヒテルズ直子 著『残業ゼロで授業料ゼロで豊かな国 オランダ』より。みんな違って、みんないい。

よく考えてみれば、世の中の仕事というのは、誰か決まった一人の人間が、毎日まるまる8時間働かなければならないようなものばかりではありません。週のうち半分くらいでよいものもあるでしょうし、事務や秘書などの仕事は、うまく調整すれば、二人で交代で…

リヒテルズ直子 著『手のひらの五円玉 私がイエナプランと出会うまで』より。社会を変えたければ、学校を変えるよりほかないのです。

個別の違いに応じる体制がこれほど広く実現していた裏には、1970年代の教育改革が影響しています。学年ごとの必修課題をやめ、小学校終了時の目標を「中核目標」としたことで、学校は学年にこだわらず一人ひとりの発達のテンポに合わせられるようになっ…

宮台真司 著『日本の難点』& マル激「だから安倍・菅路線では日本は幸せになれない」(第1019回)より。このままでは日本は幸せになれない。

あらためて確認すると、ここでいう社会設計の目標は、社会の存続と両立しないような幸せ観の、背景にある感情や感覚の枠組を、社会環境を通じて取り除いていくことです。「他人の不幸せと無関係に成り立つ自分の幸せがあるという感覚」や「他人の理解や承認…

猪瀬直樹 著『僕の青春放浪』より。人はだれも自分の青春を救済するために一生を費やす。

五年過ぎたところで黒帯の試験を受けることになった。娘も同じとき二段の試験を受けた。いっしょに出かけたが、帰りは喧嘩になった。娘だけが受かって、僕が落ちたからである。不機嫌な父親は、娘に「おまえねえ、受かったからってあまりいい気になるなよ」…

幡野広志 作『気仙沼漁師カレンダー  2021』より。気仙沼のいちばんの魅力とは?

一昔前は借金返済のためにマグロ漁船にのる人が実際にいたそうだ。現在は日本で働く東南アジアの外国人漁師の存在によって人件費を抑えることができるうえに、彼らは漁業に必要な技術まで有している。 そういった背景があるので新人の若い日本人が高給という…

宮台真司 著『亜細亜主義の顛末に学べ』& マル激「政権中枢の思想と新自由主義に振り回され続けた教育改革」(第1018回)より。逆手に取ろう。

例えば日本の高校では、まだバイトを禁止している学校がある。それって一体何なんでしょう? 社会を観察する経験や自分を規律する経験が得られるチャンスだというのに。米国ではバイト経験がNPO経験と同じぐらい重要な社会経験としてカウントされます。 …

猪瀬直樹 著『公』より。猪瀬直樹さんの「公の時間」と、村上春樹さんの「私の時間」と、「家長」不在の教育現場。

「公の時間」とは、家の土台のような確固たる事実が堆積した世界であり、個人の苦悩や葛藤という「私の営み」はその土台の上に構築されるはずだ。個別・具体的な「私の営み」を、普遍的な「公の時間」につなげるのがクリエイティブな作家の仕事である。(猪…

中原淳 著『知がめぐり、人がつながる場のデザイン』より。日々を丁寧に、かつ知的好奇心を絶やさずに。

まず、僕自身にまつわる変化です。ラーニングバーをはじめてからというもの、僕はいろいろな意味で、日々を丁寧に、かつ知的好奇心を絶やさずに生きていけるようになった、と感じています。 それは、どのようなテーマでバーを開催すればいいのか、誰を講師に…

西成活裕 著『シゴトの渋滞学 ―ラクに効率を上げる時間術―』より。30人学級よりも、専科の先生を増やしてほしい。

仕事の動きに臨機応変に対応するためには、渋滞を解消するためにクルマとクルマの車間距離をあけたように、スケジュールとスケジュールの合間も「車間距離」をあけて、仕事の安全運転をしておくべきなのです。 われわれのやっている新しい渋滞研究は、このよ…

猪瀬直樹 著『昭和16年夏の敗戦 新版』より。データより空気。これは過去の歴史ではない。今なお……。

二つの内閣が対峙した。いっぽうは第三次近衛内閣。もうひとつは平均年齢三十三歳の総力戦研究所研究生で組織する〈窪田角一内閣〉である。 ~中略~。長い一日がはじまりそうである。 十六年夏、彼らが到達した彼らの内閣の結論は次のようなものだったから…

松村真宏 著『仕掛学』より。仕掛をつくって、過労と休日出勤を回避。

アメリカのNASAは、宇宙飛行士を最初に宇宙に送り込んだとき、無重力状態ではボールペンが書けないことを発見した。この問題に対処するために、NASAの科学者たちはこの問題に立ち向かうべく、10年の歳月と120億ドルの開発費をかけて、無重力で…

古市憲寿 著『絶対に挫折しない日本史』より。展望台史観で歴史の概要をつかむ。小学6年生にお勧め。

旧石器、縄文、弥生、古墳、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、安土桃山、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和……。こんな時代区分を学生時代に暗記させられなかっただろうか。この分け方が無意味だとは思わないが、ざっくりとした歴史を把握したい本書に…

宮台真司、福山哲郎 著『民主主義が一度もなかった国・日本』より。「権威と市場」or「参加と再配分」。未来を託せるのは、どっち?

こういうことです。日本は経済を回すために社会を犠牲にしてきた。社会の穴を、辛うじて回る経済が埋め合わせてきた。だから経済が回らなくなったら、社会の穴が随所で露呈した。金の切れ目が縁の切れ目。これが続く限り、今後も経済次第で人が死にまくるの…

土井善晴 著『一汁一菜でよいという提案』より。簡単は手抜きじゃない。研究授業なんて要らない。

地球環境のような世界の大問題をいくら心配したところで、それを解決する能力は一人の人間にはありません。一人では何もできないと諦めて、目先の楽しみに気を紛らわすことで、誤魔化してしまいます。一人の人間とはそういう生き物なのでしょう。しかし、大…

筑摩書房編集部 編、宮台真司、大澤真幸、他『コロナ後の世界』より。これ、めちゃくちゃいいから読みなよ。

屋上や非常階段からの風景は、いつも見る街の風景とは違うし、夜の公園の風景も、いつも見る昼間の公園の風景とは違う。25年前に書いた「地上70センチの視線」論のように、地べた座りもそうだった。人が行き交う渋谷センター街の路上で地べた座りをすれ…

映画『行き止まりの世界に生まれて』( ビン・リュー監督作品)より。光と影。スケートシーンが、ひたすらに美しい。

ある時、セントルイスの橋の下のDIYスケートパークで知り合ったスケーターたちと「今日は父の日なのにみんなここにいるね」って話になり、そこから各々父親の話をしました。父親がいなかったり、暴力的な父親がいたり、疎遠だったり、みな何かしら親との…

宮台真司 著『宮台教授の就活原論』より。経済よりも社会、仕事よりも家族。

グローバル化が進み、消費性向が高まりつつあるにもかかわらず生産人口が減りつつある日本では、夫の稼ぎで妻の食い扶持を支えることはできません。金持ち以外は夫婦で働くしかなく、従って長時間労働は家族と地域の空洞化につながります。 空洞化は、英国の…

ヤマザキマリ、中野信子 著『パンデミックの文明論』より。小さな物語をどれだけ確保できるか。

中野 そう、若者のパーティにお年寄りが来たりするし、公園で一緒にチェスに興じたり。それにひきかえ、日本では「シルバー民主主義」みたいなことが言われて、選挙に必ず行く高齢者のほうが強い発言力を持っているようでいて、街中では若者と交ざり合うこと…

ヤマザキマリ 著『たちどまって考える』より。ジョーからルフィーへ、ソロからグループへ。

まず、かつてのアイドルのように一人でステージに立つ場合、その歌手は「絶対に間違えない」という緊張を一身に纏います。ソロで活動していれば、人の求める期待に応えなければならない、というプレッシャーをすべて一人で背負わなければならないわけです。…

エマニュエル・トッド 著『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』より。我々は学業と知性の分断が起きている時代を生きている。

分断を招くという文脈においての教育とは、もはや高尚な意味での教育ではなく、ただ単純に取得できる「資格」を指します。今考えなければいけないのは、この教育と知性の関係性でしょう。能力主義という理想が高まった時代には、学校教育で成功するためには…

内田樹、岩田健太郎 著『コロナと生きる』より。学校の労働環境の当たり外れもストカスティック。

なぜ、対談が好きかと言うと、「他者の言葉」に興味があるからです。「他者」というのは、「自分とは同じようなことを言わない、考えない」人のことです。内田先生のお言葉は(あるいはその著書でも)「そうか、そういう考え方もあったのか」という驚きをし…

ミシェル・クオ 著『パトリックと本を読む』より。でも僕は貧しくて、持っているのは夢ばかり。

社会学者のオーランド・パターソンに言わせれば、「生涯にわたる心的態度が形成されている時期に、アフリカ系アメリカ人とヨーロッパ系アメリカ人がともにいること」が人種融合教育のもたらす効用なのだ。黒人がいる学校に通った白人は「アフリカ系アメリカ…

ノーム・チョムスキー 著『9.11』より。5年生の国語の教材「たずねびと」を読みながら思い出したこと。

9月11日に起きた恐るべき残虐テロは、世界の出来事においてきわめて新しいものである。規模とか性質の話ではない。標的が違うのだ。米国は、1812年の英米戦争以来、本土を攻撃されたことはなく、脅威すら受けたことがない。多くのコメンテイターが、…

森達也 著『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』より。自己犠牲は難しい。陶酔と相性がいいからだ。

「お早う、お父さん」 父親はちらりと顔を上げて息子に視線を送ってから、深々とため息をついた。昨日は王様も恥ずかしさのためかずっと城に引きこもっていたようだが、このまま事態が収束するとはとても思えない。誰が最初に「王様は裸だ」と言いだしたのか…

マイク・マグレディ 著『主夫と生活』より。雨上がりの虹に感動する感受性を、自分で守れ。

俺にとってこの一年は楽しかった! 確かに退屈もしたし、繰り返しにうんざりもしたし、内容のなさに馬鹿馬鹿しくもなったが、それでも、この一年は、俺にとって近来まれな楽しい一年だった。新聞社で絶えず原稿の締め切りに追い廻されていると時間の感覚とい…

宮台真司、岡崎勝、尹雄大 著『子育て指南書 ウンコのおじさん』より。損得よりも正しさ。カネよりも愛。

政治に必要な「損得よりも正しさ」や、恋愛に必要な「カネよりも愛」が、枯渇して、損得に拘泥する浅ましい生き方が蔓延し、いまや政治が支える国と、恋愛に始まる家族の、持続すら怪しくなった。 欠けるのは知識ではない。バランスを超えた過剰への、〈交換…