田舎教師ときどき都会教師

読書のこと、教育のこと

2025-06-01から1ヶ月間の記事一覧

猪瀬直樹 著『戦争シミュレーション』より。あの戦記をしてあの未来あり。

排日移民法制定と同時期、日本における日米未来戦記を定着させる上において、大きな役割を果たしたのが、ヘクター・C・バイウォーターの『太平洋大戦争』(1925年)の翻訳刊行だった。ここで、水野広徳に続く海軍出身作家の石丸藤太が登場し、毎年のよ…

江國香織 著『冷静と情熱のあいだ Rosso』より。自分の責任で自由に愛す。

梅ヶ丘のアパートは、小さいけれど居心地がよかった。絵の具と油の匂いがしていて、雨の日はそれが一層つよくなる。窓からみえる目の前の公園の、長い階段と濡れそぼつ枯れ木。ほんとうに死にたくなるような雨だった。あの冬のあの雨。私はあの部屋にとじこ…

辻仁成 著『冷静と情熱のあいだ Blu』より。果てないこの盤上でまた出会えるかな?

それほど大きくない窓があった。室内が薄暗いせいで、外の光がハレーションを起こし、窓の枠がトンネルの出口のように見える。その先に広がる風景は、工房の作業場の小さな石窓から見えていた景色とも、アルノ川沿いのぼくの部屋の窓からの眺めとも違い、も…

水野敬也 著『夢をかなえるゾウ0』より。読むと、指導力が上がるゾウ。

「いつもと違う道を歩く、普段とは違うものを買う、見知らぬ店に入る・・・・・・どんなささいなことでもいい。日々の生活に『初めて』を取り入れなさい。そして、人間は、未知なるものにこそ喜びを見出す存在であることを――未知の要素がないのなら最高の楽しさは…

伊坂幸太郎 著『パズルと天気』より。いかに合わせるか、いかに楽しむか。

「他人のことはパズルだと思うよりも、天気だと思ったほうがいい、とも言っていた。頑張って、ピースを探すのがパズルだけど、天気は自分の力じゃどうにもできない。晴れるのも雨が降るのも操作はできないから、逆にこっちでそれにいかに合わせるか、いかに…

紀藤正樹 著『マインド・コントロール』より。だましの手口を一挙公開、マインド・コントロール教室。

現在の日本は、巨大カルトが登場しにくくなる一方で、霊能者や占い師などの個人が、別の個人や家族、あるいはせいぜい20~30人以下といった小さな集団をマインド・コントロールする事件が増えていることも、強調しておきたいと思います。(紀藤正樹『マ…

東畑開人 著『野の医者は笑う』より。心の治療と同様に、教育の考え方や手法もまた、時代を映す鏡。

「ヤブ医者」というのは、腕の悪い医者の意味ではない。朝廷に仕える正規の医師と違って、「野」にいて、それでいて「巫」、つまり巫女(みこ:ふじょ)のようなシャーマニックな治療を行う人たちのことを言ったのだ。祈禱師や陰陽師のような人たちだ。『源…

五木寛之 著『こころの散歩』より。結局、人。やっぱり、生き方。

「ヒゲダン」というバンドがいま人気絶頂だという記事が出ていた。正確には「Official 髭男 dism」というグループらしい。この「ヒゲ」という字がどうしても書けない。 電子辞書を引くと、〈「髭」は口ひげ、「鬚」はあごひげ、「髥」はほおひげ、総称として…