田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2021-01-01から1年間の記事一覧

梅棹忠夫 著『女と文明』より。男女のあいだに「ほんとうに人間的な愛情にみちた交渉をもつ」ためにも、長時間労働の是正を。

学校における保護者のつどいの変遷は、この事情をあきらかにものがたっている。むかしは、保護者といえば父兄であった。家長ないしはその候補者が、子女の教育の責任者であった。保護者会には父が出席した。それが、しだいに母におきかえられてきたのである…

猪瀬直樹 著『増補 日本凡人伝』より。凡人たちの声に耳を傾けることのできるリーダーを待望します。

この「凡人伝」のテーマがサラリーマンうんぬんっていうことになってるけれども、僕はしょせんサラリーマンなんてのはねえ、自分の人生観がどうのとか、カッコいいこと言ってるけれども、ホントのところはね、九割の人は無我夢中で、気がついてみたら四十、…

猪瀬直樹 著『さよならと言ってなかった わが愛 わが罪』より。全力投球でそれぞれの物語を咲かせてほしい。

7月4日木曜日の昼食会で全日程を終了した。東京から、恐れていた訃報は届かなかった。帰国する間際、太田選手と滝川クリステルさんに、ゆり子が危篤であるという事実を初めて打ち明けた。太田選手は号泣した。クリステルも細い腕を寄せ涙を流してくれた。 …

姫野カオルコ 著『彼女は頭が悪いから』より。いやらしい犯罪が報じられると、人はいやらしく知りたくなる

人間として生まれて来た哀しみを描くことが小説の重要なテーマとしたら、本作品はそれを見事に描いている。“無知は犯罪に及ぶ要因”という言葉があるが、この作品の一方の主人公である大学生は、無知の典型である。その無知は、勿論、彼等にも責任があるが、…

ブレイディみかこ 著『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』より。管理職も大変だよねって、その考え、違うから。

つまり、被害者役の参加者たちは、まさに「他者の靴を履く」ことによって健太郎の被害者の心情を想像しながら、同時に自分自身の被害者たちの靴も履いているのだ。そして彼らから被害者としての怒りや恐れをぶつけられている健太郎は、最初はまるで自分自身…

猪瀬直樹 著『黒船の世紀(下) あの頃、アメリカは仮想敵国だった』より。東京五輪未来戦記。作家の感度は、国民全体を反映する。

『海と空』の結末は、すでに記したような悲惨な東京大空襲で終わった。主人公は焼け跡に立ち、ひとりつぶやく。「戦争をするつもりなら、するだけの準備が必要だった。戦争をしないつもりなら、しないだけの心掛けが必要であった。するだけの準備もなく、し…

猪瀬直樹 著『黒船の世紀(上) あの頃、アメリカは仮想敵国だった』より。歴史年表の「行間」を読むということ。

日露戦争に勝利したのちにもなお、日本はロシアを恐れた。明治40年に「帝国国防方針」が定められている。山県有朋の初めの試案では、仮想敵国は徹頭徹尾ロシアであった。だが、この試案に海軍側が意義を唱え、アメリカを仮想敵国に加えさせた。アメリカの…

映画『ブータン 山の教室』(パオ・チョニン・ドルジ監督作品)より。歌も教育も、自分のことだけじゃなくて、他人のことを祈るためにあってほしい。

本作は、ブータンのさまざまな話を継承したいという想いから生まれました。この映画のストーリーのあらゆる要素は、私がブータン中を旅したときに聞いたエピソードや、出会った人々がベースになっています。そこにこそ、ブータンという国の本当の ”価値” が…

猪瀬直樹 著『明日も夕焼け』より。泣きごとは必ず云うな。

君の自主性を尊重するとか、自分で考え給えとか、格好がよいけれど決断という負担を単に押しつけているだけで、とても無責任なのである。確固とした価値観がなく臆病でなにかから逃げているだけにすぎないのに、ものわかりがよいふりをしている。 ときには、…

下條信輔、為末大 著『自分を超える心とからだの使い方』より。大村はまの「学びひたり 教えひたろう 優劣のかなたで」は「ゾーン」のこと。

このことと、なぜ、小さな子どもたちが夢中になりやすいのか、ということはつながっているような気がします。それはただ楽しいから没頭していくわけで、大人になればなるほど、善い・悪い、素晴らしい・素晴らしくない、未来がある・未来がないということが…

湯浅誠 著『つながり続ける こども食堂』より。方向はこっち。学校も、こども食堂に追いつこう。

人を年齢で割らない。何歳の人が来てもいい。子どもも、親も、地域の高齢者も。人を所得で割らない。年収いくら以下の人は無料とか、いくら以上の人は500円とか、割らない。そういう「タテにもヨコにも割らない」場所だから、上下がない。上下はないが、…

重松清 著『まゆみのマーチ』より。失われた風景を取り戻すために、昔のわたしに会う。

わかった。わたしがこの町でいちばん会いたかったのは、昔のわたしだったんだ、と思った。だいじょうぶ。ちゃんといた。マチコさんがこの町で暮らしたことの証は、ここに残っていた。(重松清『まゆみのマーチ 自選短編集・女子編』新潮文庫、2011) こんば…

隂山英男 著『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』より。結局、親。やっぱり、生き方。一番は、あなたの笑顔です。

子どもの幸せを一番に考えるのではなく、まず親自身がどうしたら幸せになれるか、どうしたら親が子どもの手本やロールモデルになれるか、そちらのほうをもっと一生懸命考えるといいのです。なぜなら、親も子どもも幸せを追求する共同体だからです。親が幸せ…

佐伯夕利子 著『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』より。この本を学習指導要領の総則にしてほしい。

自分で考え、主張できる文化へと変わらない限り、サッカーの練習に来た子どもに「自分で考えろ」と命じてもハードルが高いでしょう。学校の教室が変わらなければ、根本的なことは変わらない。スポーツも社会も、その基盤は教育なのです。(佐伯夕利子『教え…

武田信子 著『やりすぎ教育』より。やりすぎ教育の裏にやりすぎ労働あり。ほどほど教育&ほどほど労働への変化を、見たい。

ガンジーは、読み書きができればいいという西欧の教育観は間違っていると言い続けていました(『ガンジーの教育論』、片山佳代子訳・編、星雲社)。彼自身は高等教育まで受けた人ですが、インドの人々を学校に行かせることで、彼らがより多く生計を得るよう…

平野啓一郎 著『本心』より。分人概念と、最愛の人の他者性と。

それにしても、現在を生きながら、同時に過去を生きることは、どうしてこれほど甘美なのだろうか。僕が、〈母〉を必要としなくなったのも、それが却って、母の記憶を生きることを邪魔していたからかもしれない。今の僕は、母が死んだ世界でも、やはり正しく…

吉藤オリィ 著『ミライの武器』より。世の中は未完成で、生き方に正解はない。十七にして惑わず。

少なくとも生きることがつらいと思うことは減り、死んでしまいたいと思うことは無くなった。「世の中は未完成で、生き方に正解はない。だから私にもできることがあるかもしれない」。なんの根拠もないただの勘違いだ。でもそんな勘違いが、17歳の私を研究…

妹尾昌俊 著『教師と学校の失敗学 なぜ変化に対応できないのか』より。おっしゃる通りです。しかし~。

休校中は、小中高のほとんどの先生にとって、新型コロナのことで精神的にはキツかったでしょうが、授業も部活動も生徒指導もないなか、残業時間は格段に減りました。「こんなに家族と夕食を食べたことはない」と言う先生もいました。しかし、学校再開後はま…

斎藤幸平 著『人新世の「資本論」』&『マル激(第1047回)』より。3.5%のひとりを育てること。資本主義が終わる前に。

豊かさをもたらすのは資本主義なのか、コミュニズムなのか。多くの人は、資本主義だと即答するだろう。資本主義は人類史上、前例を見ないような技術発展をもたらし、物質的に豊かな社会をもたらした。そう多くの人が思い込んでいるし、たしかに、そういう一…

映画『エポックのアトリエ 菅谷晋一がつくるレコードジェケット』(南部充俊 監督作品)より。好きになる。夢中になる。生き方になる。

目に見える相手が必要とする分だけを供給すればよかった作り手は、市場の拡大とともに、次第に直接関係を持たない第三者に対してアピールする必要性に迫られる。資本主義の成立とともに、活用されるようになったのがデザインの力だ。成長の一途を辿る産業の…

映画『ラブ・セカンド・サイト』(ユーゴ・ジェラン監督作品)より。愛を手に入れたのに他に何を望む? これが答えだ!

その人にとって最も大事な人と出会わなかったら、その人の人生はどうなっていたのだろうと考えてみたんだ。その疑問の答えを探していると、結果的にこの映画の企画になった。男だろうと、女だろうと、独身でも恋人がいても、この人と出会わなかったら自分は…

宮台真司 著『崩壊を加速させよ』より。微熱の街と子供の領分と。もうひとつの世界へ。

遠い昔の話だと思われがちです。でも、視線が邂逅する街、見る・見られるが輻輳する街、「森」のような「微熱の街」は、『トロピカル~』のイサーンや90年代半ばまでのバンコクや渋谷のように最近まで実在しました。「森」だった街を実際に経験した僕ら世…

角幡唯介 著『極夜行』より。極夜の果てに昇る最初の太陽を見たとき、人は何を思うのか――。太陽と、出産と。

しかし私は極夜にひきつけられたのだった。気になってしょうがなかった。太陽のない長い夜? いったいそこはどんな世界なのだろう。そんな長い暗闇で長期間旅をしたら気でも狂うのではないか。そして何よりも最大の謎、極夜の果てに昇る最初の太陽を見たとき…

映画『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督作品)より。ランドの美しさがノマドの精神性を際立たせる。だからこそ……。

放浪が好きで、車上生活をライフスタイルとして選んでいるノマドの一群もいます。一方で、主流の社会からはじき出されて、放浪を余儀なくされている人たちもいます。そういう人たちは、新しい暮らし方と安息の場所を路上に見つけようとしています。私はファ…

竹沢うるま 著『ルンタ』より。歌は終わった、でもまだメロディは鳴り響いている。

その旅は私に大きな変革をもたらした。世界が広がり、多様な心の流れを知り、そして未知なる自分を多く見出した。自分の人生にとって、最も大きな出来事を挙げろと言われれば、私はこの世に生を受けたことと、この旅を挙げるだろう。前者は与えられたもので…

坂口恭平 著『躁鬱大学』より。非躁鬱人であっても「これは私のことだ」と思える「言葉」に出会えます。

われわれ躁鬱人は、完全に鬱になる前にカンダハシが指摘するように「しっかりしなければ」と考え始めてしまってます。もしくは「きちんとしなければ」という言葉を使う人もいるでしょう。ちゃんとしないと、とか、真剣に取り組まないと、とか、物事の深刻さ…

日垣隆 著『「松代大本営」の真実』より。時のふりかけと人のふりかけ。教科書の類は死ぬほど退屈でも、単純な問いから発する歴史探訪はめちゃうま。

あるいはまた「一億玉砕」に代えて、いきなり「一億総懺悔」を喧伝した東久邇宮首相らの偽善を糾弾する人々は多かったにせよ、40年には7193万人、45年には7215万人というのが厚生省統計による「日本の人口」であって、朝鮮半島と台湾の人口を足…

中原淳、小林祐児、パーソル総合研究所 著『転職学』より。ゴーギャンの問いかけに答えよう。青い鳥ではなく、学び鳥になろう。

転職とは、「自分に最適な場を探そうとすること」ではなく、「自分が場に最適に適応すること ―― すなわち新たに学び、変化する覚悟をもつこと」によってこそ、成功にたどり着けるものです。本書は、この信念に基づき編まれています。(中原淳、小林祐児、パ…

重松清 著『卒業ホームラン』より。努力ではなく、報われるという定義を考える。

パパの買ってくれたコーヒーは無糖ブラックだった。甘くないコーヒーを飲むのなんて、生まれて初めてだ。それに、たしかコーヒーはミルクを入れないと胃に悪いんだとなにかの本に書いてあった。 でも、まあ、いいか。 一口啜って、舌が苦さを感じないうちに…

東田直樹 著『跳びはねる思考』より。ありのままの自分で社会につながるということ。

―― 今、東田さんは「居場所がない」とおっしゃいましたが、東田さんの考える居場所とは、どういった場所なのでしょうか。東田 自分らしく生きられるところだと思います。おわり。―― 東田さんは、どういう時に、自分らしく生きていると感じられますか。東田 …