田舎教師ときどき都会教師

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隂山英男 著『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』より。結局、親。やっぱり、生き方。一番は、あなたの笑顔です。

 子どもの幸せを一番に考えるのではなく、まず親自身がどうしたら幸せになれるか、どうしたら親が子どもの手本やロールモデルになれるか、そちらのほうをもっと一生懸命考えるといいのです。なぜなら、親も子どもも幸せを追求する共同体だからです。親が幸せでないのに、子どもが幸せになれるはずがないのです。
隂山英男『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』SB新書、2021)

 

 こんばんは。昨日、運動会が終わりました。放送担当だったのですが、遠くにいる先生の合図がよく見えなくて困りました。読み書き計算と同様に、視力って大事です。

 視力といえば、この話。中学生のときに見えづらさを感じて眼科に行って、そこで「視力回復センターに行ったら元に戻りますか?」と質問したところ、返ってきた医師の答えがふるっていたんです。曰く「もしも本当に効果があるなら眼鏡屋より視力回復センターの数の方が多くなってるよ」云々。なるほど。そして、この話でいうところの「視力回復センター」に相当するのが、

 

 百ます計算。

 

 そう思っているのですが、どうでしょうか。私の同僚には百ます計算のファンがいません。現在も、それから過去もです。著書『見える学力、見えない学力』で知られる岸本裕史さんが世に送り出し、隂山英男さんが世に知らしめた、計算力&集中力アップのトレーニング・ツール。私もかつて試してはみたものの、眼鏡屋のような確かさを感じることはできず、つまりときめかず、「ときめかないものは捨てる」というこんまりメソッドの登場を待つことなくさようならしてしまいました。

 百ます計算に別れを告げる一方で、逆に捨てられなかったのは、つまりときめいたのは、

 

 早寝早起き朝ごはん。

 

 これは「家庭への働きかけ」という意味で「眼鏡屋」に相当すると思います。セキスイハイムのキャッチフレーズでいえば「時を経ても、続く価値」のある運動です。子どもの幸せを考えたら、早寝早起き朝ごはんに限らず、家庭に働きかけることが一番ですから。

 

 

 陰山英男さんの『子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい』を読みました。子どもが幸せな未来をつかむために親がすべきことと、親自身が幸せになるための指針がまとめられた、これもまた「家庭へ働きかける」一冊です。それぞれの根拠になっているのが、

 

 隂山さんのライフヒストリー。

 

 これがまたおもしろくて、久米宏にインタビューされる教師になろう(!)という妄想を実現させたり、次女が東大に入る(!)という壮大なストーリーを明確な形にしたり、日本の教育界に大激震を与える『本当の学力をつける本』を文藝春秋から出版する(!)という非現実を現実のものにしたり、果てはセキスイハイムとコラボして『かげやまモデル』と呼ばれる子育て住宅までつくってしまったり。やがて東大を首席で卒業することになる思春期真っ只中の娘さんに《親の都合で勝手に転居しまくって》と罵られても、めげることなく自分の夢を追求したことが、結果としてお子さんの幸せにつながった(!)ということがよくわかる内容になっています。

 

 いわば、自伝的子育て。

 

 子育てというと、すぐ子どもにあれをしよう、これをしようという話になりますが、親自身が一人の人間として納得のいく生き方をしているか、自分の仕事に誇りを持っているか、人の幸せを考えているか、それが一番大切なのです。

 

 AさせたいならBと言え。

 

 子どもを幸せにしたいなら、まずあなたが幸せになりなさいという「家庭への働きかけ」です。真意は、その方が楽だし近道ですよ、と。ドロシー・ロー・ノルトが「親は子の鏡」と詠んだように、先人が「子は親の鏡、親は子の鑑」という格言を残したように、長年たくさんの子どもたちを教えてきた私たち教員も、親の魅力と子の魅力は比例するって、経験的にそう思っています。40年間、学力向上に力を入れてきた隂山さんも、子どもの学力は《家族の平和とお母さんの笑顔に支えられているものです》と書いています。

 

 結局、親。やっぱり、生き方。

 

 ただし例外もあって、それについての考察は、以下。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 例外はあれど、傾向としては、やはり「親は子の鏡」であり「子は親の鏡、親は子の鑑」であるように思います。でも、子どもは親を選べない。だからこそ隂山さんは「早寝早起き朝ごはん」運動やセキスイハイムとのコラボなどによって家庭への働きかけを続けたのでしょう。百ます計算の前に、早寝早起き朝ごはん。学力向上の前に、

 

 愛によって永続する関係性。

 

 社会学者の宮台真司さんが、ジャーナリストの神保哲生さんとの共著『教育をめぐる虚構と真実』に次のように書いています。首がもげるくらいに頷けるのではないでしょうか。

 

 先進国標準の社会的包摂という観点からいえば、百ます計算で計算能力がつくのも大事だけど、素敵な友だちや性的パートナーがいること、愛によって永続する関係性を獲得することのほうが、ずっと重要です。ひとりさびしく死んでいくことの恐ろしさを伝えることのほうが、はるかに大切です。このあたりまえが通用しないのが、昨今の日本です。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 で、話は変わりますが、隂山さんが相当な「筋トレ」推しになっていることを知ってびっくりしました。どれくらい推しているかというと、中学・高校の正課にしてもいいと書くレベル。成功と幸せの必須項目とまで書いています。筋トレは、

 

 読み書きそろばんに匹敵する、とのこと。

 

 ちなみに我流で筋トレをしていたときはあまり効果を感じなかったそうで、その絶大な効果に気付いたのは、パーソナルトレーナーのおかげとのこと。もしかしたら私がさよならしてしまった百ます計算も、筋トレでいうところのパーソナルトレーナーを付けていたら、ときめきを感じさせてくれるものになっていたのかもしれません。

 筋トレの他にも「節約するな、借金せよ」(9ヵ条)であったり、「心配するな。楽天的であれ!」(13ヵ条)であったり、1ヵ条から13ヵ条まで、読み応えのある教育&子育て論が並んでいます。が、いずれにせよ、子どもの人生をときめいたものにするためには、

 

 子どもの幸せを一番に考えるのをやめなさい。

 

 一番は、あなたの笑顔です。