田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

ジョージ・オーウェル 著『動物農場』より。すべての動物は平等である。だが一部の動物は他よりももっと平等である。

 さて、レーニンには主要な部下が二人いた。片方はレオン・トロツキー。インテリで理論面でも演説もうまい。本書ではスノーボールのモデルだ。されに自ら赤軍の先頭にたって、政府軍や帝国残党との戦いを率いるというまったく予想外の軍事手腕も発揮し、外交手腕も見事だった。それと常に対立し続けたヨシフ・スターリンは、理論的にも軍事的にも経済政策的にも垢抜けず、恫喝と暴力的な手口によるゴリ押しが十八番ながら、それで新生ソ連の窮地を一応は切り抜けたことも多く、またそれなりの権謀術策と政治的駆け引きには長けていた。これはもちろん、ナポレオンのモデルとなる。
(ジョージ・オーウェル『動物農場』ハヤカワ文庫、2017)

 

 こんばんは。昨日行われた衆院3補欠選挙の投票率は、東京15区でも島根1区でも長崎3区でも過去最低を記録したそうです。東京15区に至っては40.7%です。約4割。30人学級だったら18人が投票しなかったことになります。残りの12人にお任せでいいのでしょうか。今日、一時1ドル160円台(!)という怖ろしいニュースが流れていましたが、本当にお任せでいいのでしょうか。1ドル70円台の時代もあったのに、本当に本当にお任せでいいのでしょうか。ちょうど社会科の授業で「選挙」のあたりを学習しているので、明日、クラスの子どもたち(小学6年生)にも訊いてみたいと思います。話のまくらとして『動物農場』の有名なスローガンを取り上げるのもありかもしれません。

 

 すべての動物は平等である。
 だが一部の動物は他よりももっと平等である。

 

 一部の動物というのは、ネット上のスラングでいうところの「上級国民」のことです。動物農場の中では「ブタ」を指します。スノーボールもナポレオンも、ブタ。訳者である山形浩生さんは、古典『動物農場』に登場するこの有名なスローガンを受けて、次のように書きます。

 

 それを避けるためにはどうするべきなのか、動物たちがどの段階で何をすべきだったのか ―― それを考えることこそが、いまここにある現在進行形の動物農場の一員としてのぼくたちに求められていることかもしれない。この新訳によって、一人でもそうしたことを考えてくれる読者が増えてくれれば、訳者としても本望だ。

 

 上級国民と一般国民に分かれてしまうような状況を避けるためにも、最低限、投票くらい行きましょうよ。山形さんもそう思っていることでしょう。クラスの子どもたちが大人になったときに、そういえば6年生のときの担任の先生が『動物農場』を手にしながら「投票くらい行きましょうよ」って話していたな、ちょっと行ってくるか、となれば、

 

 教育者として本望です。

 

 

 ジョージ・オーウェルの『動物農場』を読みました。訳者は山形浩生さん。オーウェルのもうひとつの傑作である『一九八四年』と並び称される古典です。古典あるあるですが、読み終えてからやはりこう思いました。

 

 読んでおいて、よかった。

 

 

 読んでおいて、よかった。そう思うと同時に、解説から読み始めてよかった、とも思いました。冒頭に引用した、山形さんの「訳者あとがき」のことです。

 

 ただ事実として、ここに収録したオーウェル自身の「序文案」にあるように、本書が直接の題材及び批判対象としているのは、ロシア革命と、その後のスターリニズムに続くソ連社会主義の倒錯だ・・・・・・
 ・・・・・・と書いたところで、多くの若い読者のみなさんは、そもそもスターリニズムとかソ連とかを知らないかもしれないので、ここで簡単におさらいしておこう。

 

 このおさらいがめちゃくちゃ勉強になるんです。若くない読者の私にとっても勉強になるんです。加えて『動物農場』は、『一九八四年』とは違って、おそらく6年生の子どもたちにも読めるんです。全員で読んで全員で話し合うことも、時間さえあればできるような気がするんです。

 

 そういった授業がしたい。

 

 そしてオーウェルが直接の批判対象としているもろもろだけでなく、間接の批判対象としている「投票率40.7%」の《いまここにある現在進行形の動物農場》についても考え、議論したい。そうしないと、次のような時代が訪れてしまう可能性があるからです。

 

でもかわりに訪れたのは ―― なぜだかはわかりませんでした ―― だれも思ったことを決して口に出せない時代、うなる恐ろしいイヌたちがそこら中をうろつく時代、衝撃的な犯罪を告白した同志たちが、八つ裂きにされるのを目にしなければいならない時代なのでした。

 

 もうすでに訪れているのかもしれません。何せ1ドル160円台ですからね。1ドル80円台の時代のことは、動物農場の動物たちが過去をどんどん忘れていっているように、もう誰も覚えていないのかもしれません。一般国民は、働かされすぎて、歴史を学ぶことができなくなっていますから。長時間労働が常態化している、現在の教員なんて典型です。

 

 どうも農場は豊かになったのに、当の動物たちは一向に豊かにならないようなのです ―― ただしもちろん、ブタやイヌたちは別です。

 

すべての動物は酒を飲んではいけない(2024.4.16)

 

 動物農場がスタートするに当たっての「七戒」のひとつです。すべての動物は酒を飲んではいけない。後半になると、格差社会になって、「ただしもちろん、ブタやイヌたちは別です」となります。

 ゴールデン・ウィークですが、今日も一昨日も学校に行って、両日とも4時間ほど仕事をしてきました。働き方改革という言葉はよく耳にするのに、一向に豊かにならないようなのです。ただしもちろん、ときどきビールを飲む程度の「自由」は許されていますが。もしかしたらその中途半端な自由こそが、ブタやイヌたちのねらいなのかもしれません。

 

 すべての動物は平等である。

 

 おやすみなさい。