田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2020-01-01から1年間の記事一覧

山極寿一 著『スマホを捨てたい子どもたち』より。スマホをラマダンし、本をじっくり読みましょう。

サルやゴリラの世界から見ると、人間は、とてつもなくおせっかいな生き物に違いありません。子どもがやろうとしていることに手を貸すだけではなく、まだやろうともしていないことに対しても、「こうなったらいい」「あれを見て。君もいずれあのようになる」…

中原淳 監修、脇本健弘・町支大祐 著『教師の学びを科学する』より。Think different !!

「異動は最大の研修である」という言葉がある(例えば、大阪府教育委員会2008)。つまり、異動は、職能成長につながりうる最大の機会、という意味である。この言葉を聞いて、「その通りだ」とストレートに受け止められる教師はどの程度いるであろうか。とい…

ヨーラン・スバネリッド 著『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』&「マル激(第1012回)」より。変わらなきゃ。

そのため、日本ではメディアの教育と言えばもっぱら「どうやって有害な情報から身を守るか」が重視されているように思われます。これに対して、スウェーデンの教科書では「どうやって有益な情報を発信できるか」が重視されています。そして、その先にあるの…

岩瀬直樹、中原淳、妹尾昌俊、他『ポスト・コロナの学校を描く』より。「学校をどうするか」から「学校を変えられない社会をどうするか」へ。

軽井沢風越学園(以下風越)の3ヶ月の試行錯誤をベースに、ポスト・コロナの学校像を描いてみたいと思います。 今回明らかになったのは、物理的に登校しなくても学ぶことは十分可能ということです。午前中は家庭でオンラインを活用して個別的に学び、午後は…

中原淳 著『フィードバック入門』より。王様は裸だ(!)って、耳の痛いことを伝えないとダメ。

フィードバックの概念は、情報通知という側面(ティーチング的・一方向の情報伝達)と、立て直しの側面(コーチング的・振り返りの促進)の二つを含みうるものであるということです。要するに、フィードバックは「ティーチング」と「コーチング」を含みこむ…

西田亮介 著『コロナ危機の社会学』より。保護者の不安のマネジメントって、大事。

既知のとおり、コストカットとムダ取り、支出削減は日本社会の至上命題であり続けている。それは公務員についてもいえ、人口当たりの公務員数はすでに世界最低水準になり、業務は増大であるにもかかわらず強い削減圧力とバッシングが続いている。こうしたト…

中原淳 著『駆け出しマネジャーの成長論』より。駆け出し学級担任の成長論。折れないためにはどうするか?

しかし、部下育成の重要性はわかっていても、その原理については知らないという人も多いようです。中には、自分が若い頃に出会った上司のやり方をそのまま再生産し、部下を厳しく追い詰めるなどして、チームに悪影響を与えてしまっているマネジャーも見受け…

坂口恭平 著『苦しい時は電話して』より。Follow your bliss. 死にたくなるのは、懸命に生きているから。

僕は建築家を志してきましたが、結局、地面に定着している建築物はひとつも設計しませんでした。 でも、僕は自分なりの空間をつくったつもりです。 それは声だけの空間です。人間の声が行き交うことで発生する公共施設。 死にたい人がいつでも助けを求められ…

上田信行、中原淳 著『プレイフル・ラーニング』より。あなたが書くことができれば世界を変えられる。

上田 「学ぶこと」は、「変わること」であり、「変えること」です。「読むことは、あなたの世界を広げる。でももし、あなたが書くことができれば世界を変えられる」というような意味のことを言ったパウロ・フレイレ(Paulo Freire 1921-1997)は、すごいと思…

神保哲生、宮台真司 著『暴走する検察』より。「有能さ」のあり方について。

宮台 今回とても重要だと思ったのは、「有能さ」のあり方です。検事の有能さと医者の有能さは似ていると思いました。患者一人ひとりに向き合っていたら処理できない。簡単に言えば、流れ作業のような対処をしないと仕事が終わらない。介護の仕事をやっている…

中原淳 著『働く大人のための「学び」の教科書』より。2番を歌うな。で、そういう「あなた」はどうなのだ?

ちょっと前のことになりますが、かつて、東京糸井重里事務所(現・株式会社ほぼ日)を取材させていただいたときのことです。あるスタッフの人が「糸井さんがよくおっしゃる言葉」として、「2番を歌うな」という言葉を紹介してくださいました。 これは、昨日…

中原淳+パーソル総合研究所 著『残業学』より。ハッシュタグは「先生死ぬかも」ではなく「先生残業やめるってよ」に。

仕事を通じて「フロー」や「幸福感」を持つことができるのは、それ自体悪いことではありません。しかし、この「フロー」に近しい幸福感が、超・長時間労働において感じられているのであれば、話は別です。心身の健康を犠牲にしても仕事の手を止めず、依存症…

沢木耕太郎 著『星をつなぐために』より。たぶん、方法は力なのだ。児童をつなぐために。

沢木 しようがないことなんですよ。それは当たり前のことで、相手があることで、相手の持っているエネルギーによって、出来、不出来に差が出てくるのは当たり前じゃないかと。ところが書き手にとっては、そうかんたんにわりきれない。だって、自分という存在…

ポール・オースター著『ブルックリン・フォリーズ』より。おもしろい大人をたずねて三千里。

彼と同じく、私も大学で英文学を専攻した。そしてさらに、文学を引きつづき学ぶか、ジャーナリズムに挑戦するかといった夢をひそかに抱いていたが、私にはそのどちらを追求する勇気もなかった。人生が邪魔に入ったのだ――二年間の兵役、仕事、結婚、家族を持…

301回目の投稿。ひろゆきさん、宮台真司さん、妹尾昌俊さん、中原淳さんに感謝。他にもたくさん感謝。

「終わらない日常」を生きるとは、スッキリしない世界を生きることだ。何が良いのか悪いのか自明でない世界を生きることだ。私たちが今日生きているのは、すべてが条件次第・文脈次第で評価されるしかないような複雑なシステムである。にもかかわらず、条件…

本間浩輔、中原淳 著『会社の中はジレンマだらけ』より。人生もジレンマだらけ。時短の問題は、みんなの問題なのだ。

中原 部下育成には原理原則があります。人材開発研究で明らかになっている「人を育てる原理」とは、端的に述べるならば「マネジャーがリスクを取って部下に仕事を任せて、適切なタイミングでフィードバックをすること」、これに尽きます。この場合のリスクは…

浜屋祐子、中原淳 著『育児は仕事の役に立つ』より。もしも長時間労働が存在しなかったら、世界はどうなる?

中原 やはり、労働時間短縮がどの企業も共通テーマとなっていることが大きいですよね。結局、産休育休を取りやすい、といったファミリーフレンドリー系の施策をやるのと同時に、長時間労働の問題に手をつけなければ、夫の育児参加も、女性の両立支援も難しい…

為末大、中原淳 著『仕事人生のリセットボタン』より。踊り場での格闘、方向転換する覚悟、リセットボタンを押す勇気。

私たちは「右肩上がりの単線エスカレータに乗って組織キャリアを全うできる時代」に生きているのではない。むしろ「右肩上がりの単線エスカレータ」は多くの人々にとって存在してはいない。 途中で「踊り場」があったり、「方向転換」があったり、私たちは「…

遠野遥 著『破局』より。わたしのメダカ と わたしたちのメダカ。

生き物係、と私はすぐに答えた。教室で飼っていたメダカの世話をするのは麻衣子の仕事で、私は麻衣子がメダカに餌をやるのを時々隣で見ていた。麻衣子は常に、決められた間隔で、決められた量の餌をやった。水槽に少しでも異状があれば教師に相談して改善を…

映画『お名前はアドルフ?』(ゼーンケ・ヴォルトマン 監督作品)より。名は体だけでなく、親も表わす?

「名前とは虚しきもの」とは、「ファウスト」第一部の中で、主人公ハインリヒ・ファウスト博士が言った言葉だ。ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテは1808年にこれを書き、名前がその人物や事柄を表わすわけではないことを言葉に表わした。ウィリアム・シェイク…

村上春樹 著『一人称単数』より。一人称単数として生き続けるためには、二人称や三人称が大事。

私のこれまでの人生に――たいていの人の人生がおそらくそうであるように――いくつかの大事な分岐点があった。右と左、どちらにでも行くことができた。そして私はそのたびに右を選んだり、左を選んだりした(一方を選ぶ明白な理由が存在したときもあるが、そん…

映画『インディペンデントリビング』(田中悠輝 監督作品)より。どん底にいる人たちの人生変えられたらおもろいで。

哲学者の内山節は「関係が価値を生みだす」と語り、「人間の価値はある関係の中で成立し、人間的な価値は関係の変容とともに非合理に変化し続ける」と述べている。その不安定な関係が “生きづらさ” を生み、関係の消失が人間の価値を見失わせているのではな…

西智弘 著『だから、もう眠らせてほしい』より。患者や児童と向き合い、揺らぐことの意味。

幡野が常々主張しているところの核心はここにある。 医療者と、家族、そして患者の目指しているゴールが異なる。そして医療者が自分のポリシーや家族の意向を尊重してしまう今の日本では、吉田ユカの言う通り「安心して死ねる場所がない」ということなのだ。…

内田樹、内田るん 著『街場の親子論』より。かわいい子には旅をさせよ → 待てば海路の日和あり。

家族の絆はつねにこの「変化するな」という威圧的な命令を含意しています。だから、若い人たちは成熟を願うと、どこかで家族の絆を諦めるしかない。子どもの成熟と家族の絆はトレードオフなんです。「かわいい子には旅をさせろ」と言うじゃないですか。(内…

坂口恭平 著『自分の薬をつくる』より。自分の日課をつくってみよう。自分の時間割をつくってみよう。

そう私が感じるのは、いのっちの電話をこれまでずっとやってきて、それこそ二万人近くの声を聞いてきて、感じてきたことがそれだからです。すべての人が同じ悩みなら、もうそれは悩みではなく、人間たるものみんなそんな状態にあるということですので、自然…

神保哲生、宮台真司 著『アメリカン・ディストピア』&「マル激(第1006回)」より。周りに合わせるのをやめよう、っていう倫理教育を!

宮台 とはいえ、普段から物事を考えている人間は、「ロジカルに考えろ」と言われればそれなりに考えることができて、OKなんですが、いままでロジカルに考えたことがない人間が急に「考えろ」なんて言われたって、考える手がかりがないので、「下手な考え、…

ブレイディみかこ 著『ワイルドサイドをほっつき歩け』より。シェリー  俺はうまく生きているか?

ふっと、日本の人と尾崎豊の話をしたときのことを思い出した。尾崎豊は盗んだバイクに乗って学校のガラス窓を打ち割って回っても、その気になれば大学に行って就職して家庭を築けた経済成長の時代の若者だったのであり、就職氷河期を見て育ち「もはや経済成…

ポール・ウィリス 著『ハマータウンの野郎ども』より。絶望の国の幸福な若者たちと似ているかもしれない。

けどね、たかが学校の成績のことを取りあげて世間はとやかく言うでしょ。たとえばジミーって子は出来は悪いですよ、しかし、あの子は立派な牛乳配達人になるかもしれないし、パン屋としてちゃんとやってくかもしれない。ところがね、世間ではこう言うんです…

映画『今宵、212号室で』(クリストフ・オレノ監督作品)より。何かなぁ、この手は。愛は思い出の上に築かれる。

人々が行き交うモンパルナスの通りを、マリアが少しだけ顔を上げて歩く。流れるのは、シャルル・アズナヴール。これを映画と呼ばずなんて呼ぶのだろう、と胸がいっぱいになる。そうだ、素敵な人がいれば堂々と振り返ればいい。いまを踏みしめながら生きると…

ブレイディみかこ 著『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』より。補償なき自粛要請も、代休なき土曜授業も、おかしい。

① 労働者が闘う労働者を侮蔑して妨害した時代から、② 労働者同士が団結して闘う時代に移行し、③ 別の問題で闘っている団体とも協力する時代が訪れ、④ 労働者たちが社会には様々な問題があることを知覚できるようになり、ユナイトしてすべての人々の権利のた…