田舎教師ときどき都会教師

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中原淳 著『フィードバック入門』より。王様は裸だ(!)って、耳の痛いことを伝えないとダメ。

フィードバックの概念は、情報通知という側面(ティーチング的・一方向の情報伝達)と、立て直しの側面(コーチング的・振り返りの促進)の二つを含みうるものであるということです。要するに、フィードバックは「ティーチング」と「コーチング」を含みこむ、より包括的な部下育成手法なのです。
(中原淳『フィードバック入門』PHPビジネス新書、2014)

 

 おはようございます。昨日、仕事帰りに Tully's に寄って「職員会議が年に3回しかなくて今日なんて5時間目まで授業があったのに15時前には職員会議が終わって教室に戻った時には『今から定時まで自由だ』って涙が出そうになってそれというのも前の県もその前の県もそのまた前の県も『毎月1回』&『定時超過』が当たり前だったからで先駆者には感謝しかない」とツイートしたところ、結構な数のフィードバック(いいねやリツイート)があって、それは帰宅してから呟いた「仕事帰りに Tully’s で珈琲を飲んでいるところを高校生の長女に見つかって『パパ!』って声をかけられてそれを見ていた店員さんの『何だお前パパだったのか、しかも(こんなに可愛い)高校生の』っていう都合よく解釈した視線がちょっと優越感って妻に話したらいいねあなたは自由でって心底不機嫌そう」というツイートへのフィードバックよりも明らかに数が多くて、ってこんなふうに句点を打たずに文章を続けている書き手に対して「独りよがりで読みにくいですよ」と耳の痛いことをしっかりと伝え、成長を促すのが、人材開発の第一人者である中原淳さんが最強の部下育成法とうたっている「フィードバック」です。

 いいねやリツイートのようなプラスだけのリアクションは本当の意味でのフィードバックでは、ない。

 

 

 

 中原淳さんの『フィードバック入門』を再読しました。 フィードバックというのは冒頭の引用にもあるように、教えると引き出すを包括的に止揚したもので、都知事ふうにいえばティーチングとコーチングをアウフーベンしたものです。架空の辞書で引いた「フィードバック」の例文には「ロックダウンとかオーバーシュートとか東京アラートとか、横文字ばかり使っていると都民に情報がうまく伝わりません。都庁には、都知事に対して、そんなふうにフィードバックできる勇気をもった職員はいなかった」とあります。ないけど。

 都知事はポジション的になかなかフィードバックを得にくいですよね、きっと。『フィードバック入門』には、自身の成長を止めたくなければ、自分自身もフィードバックされる機会を持つこと、すなわち「自らフィードバックを求めにいく人材になれ」とあります。フィードバックがなくなると、人は無能になるまで出世するという、いわゆるピーターの法則に従ってしまいますからね、人生が。だから自分が無能扱いされることを恐れる人は、自分の城を出てフィードバックを受けられる環境にわざわざ身を投じるというわけです。

 

 王様は裸だ!

 

 城から出てきた王様に放たれた子供の言葉。上司へのフィードバックとして、これほど有名なものはないのではないでしょうか。映画監督でありドキュメンタリー作家でもある森達也さんは、著書『王様は裸だと言った子供はその後どうなったか』の中で、子供の放ったフィードバックが群衆に伝わり、そして王様にもはっきりと伝わったときの様子を次のように書いています。

 

 たぶんこのとき王様は、パニックの渦中にあったと想像する。人は自分にとって都合のよい考え方を捨てることはなかなかできない。本当なら群衆の声など無視したかっただろう。でもこの瞬間、王様は気づいたのだ。あの機織師たちは確かに愚か者には見ることができないと言っていたが、でも愚か者には触ることもできないとは言っていなかった。ところが見えないどころか、この服には感触そのものがない。

 

「王様は裸だ」というティーチング(教える、情報通知)と、「王様は気づいたのだ」というコーチング(引き出す、振り返り)の合わせ技一本です。教えるも引き出すもどちらも大事ということ。それがフィードバック。こうして王様はまともになり、トップがまともになると同時に国もまともになっていったとさ。めでたしめでたし。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 フィードバックは最強の部下育成法であるだけでなく、トップやマネジャーにも使える。

 

 そして学校にも。

 

「授業が変われば学校が変わる」かもしれないけれど、どちらかというと「校長が変われば学校が変わる」だなって、そう思われているくらいにトップの影響力が大きく、そしてもちろん児童の育成がレーゾンデートルである学校現場において、この「フィードバック」を学ばない手はないのではないでしょうか。

 中原さんの『フィードバック入門』は、基本的に企業で働く人たちに向けて、上司(マネジャー)が部下を育てるにはどうすればいいのかという視点で書かれたものですが、上司(≒管理職)が部下(≒教職員)からフィードバックをもらう「アシミレーション」という手法であったり、対大人とはいえ対子供にも応用できそうな「タイプ&シチュエーション別フィードバックQ&A」であったりも書かれていて、教員にとっても、それこそ読むだけでフィードバックをもらえる一冊となっています。例えば次のような文章。部下を子供に置き換えると、正直「耳が痛い」なぁと思います。

 

 鈴木さんの事例で最も印象的なのは「すべてのフィードバックの起点は、本人がどうなりたいかにある」という言葉です。ついつい、私たちはフィードバックをする際、「ああなってほしい」「こうなってもらわなければならない」という風に、自分の「なってほしい像」を部下に提示することにやっきになります。そして、そんなとき、ともすれば「部下自身が、どのように思っているのか」を忘れがちです。

 

 クラスの子は、どのように思っているのか。
 パートナーは、どのように思っているのか。

 

 忘れず。

 

 行ってきます。