田舎教師ときどき都会教師

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中原淳 著『働く大人のための「学び」の教科書』より。2番を歌うな。で、そういう「あなた」はどうなのだ?

 ちょっと前のことになりますが、かつて、東京糸井重里事務所(現・株式会社ほぼ日)を取材させていただいたときのことです。あるスタッフの人が「糸井さんがよくおっしゃる言葉」として、「2番を歌うな」という言葉を紹介してくださいました。
 これは、昨日歌った1番のメロディをそのままに、今日も「続きの2番」を歌ってしまおうとする態度のことです。糸井さんがおっしゃりたいことは、仕事をするときは、オペレーションをこなすことを毎日繰り返すな、ということなのでしょう。
(中原淳『働く大人のための「学び」の教科書』かんき出版、2018)

 

 こんにちは。今週の水木金と教員免許の更新講習を受講する予定です。泣きっ面に蜂というか踏んだり蹴ったりというか、短い夏休みがこれでまたベリー・ショートになります。以前まで勤めていた自治体(他県)に留まっていれば、そこではなんちゃって主幹教諭だったので更新講習は免除の扱いだったのに。数年前に越境した際には更新講習の免除どころか危うく初任者研修を受けさせられるところでした。危ない危ない。せっかく越境したのに2番を歌わされている場合ではありません。ちなみに人材育成のプロである中原淳さんの言葉を引けば、越境するとは《端的にいえば「自分の慣れ親しんだ場所を離れて、違和感を感じる場所に行き、気づきを得る」》ということで、これは冒頭に引用した『働く大人のための「学び」の教科書』に出てくる「大人の学び」7つの原則のひとつとされています。まぁ、わざわざ採用試験を受け直して越境しろとは書いていませんが、我流で拡大解釈すると他県転々もありかな、と。《しかし、我流はときに迷走を生み出してしまうことも、また事実なのです》。嗚呼。そんなわけで、

 

 大人の学びを科学する!

 

 

 中原淳さんの『働く大人のための「学び」の教科書』を再読しました。日能研の「シカクいアタマをマルくする」と同じくらい、否、それ以上に中原研の「大人の学びを科学する」というキャッチフレーズは人口に、否、わたしに膾炙しています。大人の学びといったら中原さん。そんな中原さんが書いた「教科書」です。子どもたちにもよく言いますが、まずは教科書を読むべし。章立ては以下の4つです。

 

 Chapter1 僕たちはなぜ学び続けなければいけないのか?
 Chapter2「大人の学び」3つの原理原則
 Chapter3「大人の学び」7つの行動
 Chapter4 学び上手さんの「学びの履歴書」から学ぶ

 
Chapter1 僕たちはなぜ学び続けなければいけないのか?

 なぜならば、2番を歌い続けているとじり貧に陥って長時間労働から長期間労働へとシフトしていくこれからのワイルドな人生を謳歌できなくなるからです。少なくとも、その可能性が高い。なぜに対する「なぜならば」を短くまとめるとそういうことです。学び続けなければならないのに、わたしたちは「大人の学び方」を教わってきていない(!)。だから中原さんがこの教科書を書いたというわけです。感謝。

 
Chapter2「大人の学び」3つの原理原則

  まずは原理原則ですね。コンピュータでいうところの「OS」にあたるものです。これがアップデートされない限り、次の Chapter で説明する7つの行動という「アプリケーション」の数々がうまく動かなくなってしまいます。大人の学びの原理原則は、3つ。

 

 原理原則①  背伸びの原理
 原理原則②  振り返りの原理
 原理原則③  つながりの原理

 

 子どもの学びに置き換えれば、①は佐藤学さんの「背伸びとジャンプのある学び」、②は岩瀬直樹さんやちょんせいこさんの「振り返りジャーナル」、③は西川純さんの『学び合い』の大人版といえるでしょうか。なんとなくイメージがつきますよね。大人の学びと子どもの学びは180度異なる。なんてことは、まるでない。

 

 あなたは、子どもに学べという
 あなたは、子どもに成長せよという
 あなたは、子どもに変容せよという
 で、そういう「あなた」はどうなのだ?
 

 子どもに「教科書を読みましょう」というように、子どもに「学び」の原理原則を教授するように、あなたも原理原則に則って学び続けましょうというわけです。ちなみに上記の「あなたは、子どもに学べという」を読んでピンときたあなたは相当な「通」です。ピンとこなかったあなたには次の本を勧めます。名著すぎて泣けます。

 

 
Chapter3「大人の学び」7つの行動

 原理原則も大事ですが、やっぱり行動です。大人の学びに必要な7つの行動のひとつである「本を1トン読む」というのもそう。一見すると本を読むことに価値を置いていないかのように思える、寺山修司の『書を捨てよ、町へ出よう』というタイトルも、「捨てるような本すらないのはダメだよ」という意味でのアイロニーであり、本を読んで自分のなかに地図をつくってから町へ出ようという呼びかけ、すなわち行動の行動による行動のための呼びかけです。行動重視=“Do”-oriented。学級通信のタイトルにしたこともあったなぁ。Do!

 

 行動①  タフアサイメント=タフな仕事から学ぶ
 行動②  本を1トン読む
 行動③  人から教えられて学ぶ
 行動④  越境する
 行動⑤  フィードバックをとりに行く 
 行動⑥  場をつくる
 行動⑦  教えてみる

 

 それぞれ文字通りの「行動」です。だから、自分に足りない行動はどれかな(?)というふうに見ていくのが、よい。例えば教員をやっていれば⑦は日常的にあります。しかしこの⑦をよりよいものにするためには①から⑥が必要となります。

 私に足りないのは、⑤と「⑥=①」かな。年齢を重ねていくと、痛いことを言ってくれる人が少なくなるんですよね。⑥はコミュ障の性格的になかなかハード。ちなみにフィードバックというのは《耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと》です。中原さんの『フォードバック入門』にそう書いてあります。だから「とりに行く」のでしょうね。でも勤務校の校長、スラムダンクの安西先生みたいなんだよなぁ。ホッホッホ。とてもとてもいい人です。

 

書を捨てよ、町へ出よう (角川文庫)

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  • 作者:寺山 修司
  • 発売日: 2012/10/01
  • メディア: Kindle版
 

 
Chapter4 学び上手さんの「学びの履歴書」から学ぶ

 Chapter4では、実際に「大人の学び」を実践している格好いい大人がロールモデルとして紹介されています。今朝のインクさんのブログ「簡単にいえばこの国には夢がない」(ツイートの3行目)に、ロールモデルとなる大人がいないというようなことが書かれていましたが、子どものためにも、まさにこういった大人がもっとビジブルになることが必要なのではないでしょうか。

 

taishiowawa.hatenablog.com

 

人生観・価値観って、所属する職場や参加しているコミュニティによって左右されるのだと実感しましたね。

 

 Chapter4の最初に登場するMさん(46歳)の言葉です。私もそう思います。だから越境する。人と会う。本を読む。2番は歌わない。

 Mさん曰く《僕自身は20代の頃から危機感と知識欲が強く、「この先40年もこんな人生を歩むのか?」と心がザワザワしました》とあります。こういう心持ちの20代の先生って、たくさんいるんじゃないかなぁ。

 

 結局、人。やっぱり、学び方。

 

 そして学びはつづく

 

 

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