田舎教師ときどき都会教師

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本間浩輔、中原淳 著『会社の中はジレンマだらけ』より。人生もジレンマだらけ。時短の問題は、みんなの問題なのだ。

中原 部下育成には原理原則があります。人材開発研究で明らかになっている「人を育てる原理」とは、端的に述べるならば「マネジャーがリスクを取って部下に仕事を任せて、適切なタイミングでフィードバックをすること」、これに尽きます。この場合のリスクは、部下にその能力に見合う仕事を任せるのではなく、それよりちょっと難しめの仕事を任せることで生じます。つまり、任せ方は「部下の能力」と「仕事の難易度」の関数で決まる。
(本間浩輔、中原淳『会社の中はジレンマだらけ』光文社新書、2016)

 

 おはようございます。ジレンマといえば、道徳ですね。会社とは違ってジレンマだらけではありませんが、例えば「星野くんの二塁打」などは、モラルジレンマの資料としてよく知られています。監督の「バントの指示」に従わず、二塁打を放った星野くん。その振る舞いは是か非か。そういったお話です。

  

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 お盆休みはステイホームに徹するべきか、帰省すべきか。思春期の娘の暴言をスルーすべきか、叱るべきか。今回で300記事目となるブログを続けるべきか、やめるべきか。人生はいつだって無きにしも有らずの自問葛藤に満ちています。ブログを書いているのも、結局のところ、そんなジレンマだらけの人生と折り合いをつけるためのささやかな試みに過ぎないのかもしれません。村上春樹さんいうところの「自己療養へのささやかな試み」です。

  

 

 本間浩輔さんと中原淳さんの『会社の中はジレンマだらけ』を再読しました。本間さんはヤフーの執行役員、中原さんは経営学習論や人的資源開発論を専門とする大学の先生です。中原さんには、前回のブログを Facebook と Twitter で紹介していただき、また、前々回のブログを Twitter でリツイートしていただきました。学生だけでなく、読者へのフィードバックも欠かさない姿勢に、さすがは『フィードバック入門』の著者だなぁと思います。ちなみに十数年前には Learning bar で、数年前には当時働いていた自治体の10年次研修で、中原さんの謦咳に接しました。金井壽宏さんとの共著『リフレクティブ・マネジャー』を読んで以来のファンとしては、Facebook や Twitter で反応していただけること自体が夢のようで、夢よもう一度とばかりに今日もまた中原さんの本を読み返しています。

 

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 世の中はジレンマに満ちています。そんな一文で始まる『会社の中はジレンマだらけ』の章立ては、以下の通りです。5つの「なぜ」に対する「なぜならば」が気になったときには、是非『会社の中はジレンマだらけ』を購入し、夏休みの大人の課題図書に加えてください。

 

  • 第1章 なぜマネジャーに ”現場仕事” が増えるのか
  • 第2章 なぜ産休社員への人員補充がないのか
  • 第3章 なぜ「働かないおじさん」の給料が高いのか
  • 第4章 なぜ新規事業のハシゴはすぐ外されるのか
  • 第5章 なぜ転職すると給料が下がるのか

 

 第1章から順に各章の冒頭で例示された「ジレンマ」を簡単にまとめると、次のようになります。

 

  • 重要な仕事を自分自身でこなすか、部下に任すか。
  • 部下の家庭事情を優先するか、職場全体の士気を優先するか。
  • 仕事をしない年上の部下に言いたいことを伝えるか、やり過ごすか。
  • 新規事業部署への異動を希望する部下を送り出すか、引き留めるか。
  • 年収が減っても新天地に行くか、今の会社に留まるか。

 

 第1章のジレンマについては、冒頭の引用が答えです。シンプルにいえば「任せてみる」ではなく「任せて、見る」ということ。上司も教師も、基本は「見る」です。部下や子どもをしっかりと観察して、家庭事情も考慮した上で、適切なフィードバックを与える。部下育成の原理原則。児童指導の原理原則です。

 

 部下の家庭事情を優先するか、職場全体の士気を優先するか。

 

 第2章に登場するこのジレンマについて、中原さんは「時短の問題は、みんなの問題なのだと、毎日でも伝える」、本間さんは「仕事のために家族を犠牲にすることは絶対にあってはいけない」と結論づけています。二人の結論、神です。

 

中原 ところで、ヤフーでは時短勤務の社員は多いんですか。
本間 多いですよ。小学六年生までの子どもをもつ社員は時短勤務が可能です。

 

 聞いたか、公立学校の管理職&教育委員会&文部科学省。仕事のために家族を犠牲にすることは絶対にあってはいけないんだぞ。勤務時間内には逆立ちしたって終わらない仕事を任せるなんて、ありえないんだぞ。どんなに優秀でも、どんなにがんばっても、終わらないんだぞ。休憩時間もないんだぞ。残業代だってないんだぞ。土日も盆休みも持ち帰り仕事だぞ。同僚が復職できないのも、同僚が療休に入ったのも、同僚が不機嫌なのも、全部そのせいだぞ。聞いているか!

 中原さんのいう「時短の問題は、みんなの問題なのだ」という捉えは本当に大事で、時間を気にせずにただで働く先生がいる限り、育児や介護をしているまともな大人は教職を続けることができません。勤務時間に無頓着な先生は無自覚に世界を壊します。そのことについては下のブログに書きました。中原さんや本間さんは、そのことというかその複雑さがよくわかっているから、「みんなの問題」&「絶対にあってはいけない」と結論づけているのでしょう。

 

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 年収が減っても新天地に行くか、今の会社に留まるか。

 

 第5章に登場するジレンマです。これについては、転職ではないものの、いざ新天地へ(!)と採用試験を受け直して何度か他県へと「Go to」した経験から、特に若者には「留まるな」と言いたくなります。給料か経験かでいえば、やはり経験に価値があると考えるからです。でも、年収が100万円くらい下がったことがあって、さすがにあのときは凹んだなぁ。

 

 301記事目を書くか書かないか。

 

 そしてジレンマはつづく。