田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2019-01-01から1年間の記事一覧

ヤマザキマリ 著『国境のない生き方 私をつくった本と旅』より。原発をやめられない社会と宿題をやめられない学校をどうするか。

閉塞感を感じたら、とりあえず移動してみる。旅をしてみる。 これは、私たちが生きていくうえでも有効だと思います。 どこかに行けば、今抱えている問題が解決するとは思わないけれど、自分が何にとらわれていたのかに気づくことはできる。 人間にとってすべ…

伊坂幸太郎 著『仙台ぐらし』より。法としての制度ではなく、思考習慣としての制度に注目して働き方を変える。

「そして、イギリスに連れ帰ってくれる船長に言われるんだ。『ちょっと一つ気になるんだが、どうしておまえは、そんなに大声で喋るんだ?』と」「大声で? どういうことですか」「ガリヴァーは、巨人と一緒にしばらく暮らしていたから、喋る時はいつも、でか…

猪瀬直樹 著『ゼロ成長の富国論』より。二宮金次郎に学ぶゼロベースの富「学校」論。

すでに述べてきたが、金次郎の方法は五公五民とか四公六民など領主が決めた税率ではなく、直近十年の平均納税実績を年貢の上限として設定する。 そのうえで領主や個別の農民(経営者)の生産高と借金を調べ、金次郎ファンドからの融資で高利の借金を低利で借…

小西貴士、河邉貴子 著『心をとめて 森を歩く』より。親は親を、子どもは子どもを生きられる社会を。

重い とか軽い とかも大切かもしれませんが誰もが背負うことがあるのだと想うことが生きる者の根っこの 根っこです「芽吹きのささやき」 (小西貴士、河邉貴子『心をとめて 森を歩く』フレーベル館、2016) おはようございます。昨年の夏、都会教師時代の師…

坂本龍一 著『音楽は自由にする』より。音楽は自由にする。変形労働時間制は不自由にする。

若いころはいろいろうまくいかなかったけれど、年を取ったからこそ、また二人と一緒に音楽ができるようになった、ということかも知れない。だとしたら、年を取ってよかったと思います。ポール・ニザンじゃないですが、若さなんて、全然いいものじゃないんで…

柳沢幸雄 著『母親が知らないとヤバイ「男の子」の育て方』。父親が知らないとヤバイ「女の子」の育て方。

男の子が母親と話さなくなるのは、自分の世界を母親に理解させるのが面倒だからだ、という話をしました。しかしもうひとつ、人類の根本的な、そして無意識的な習性として、「ヒトは第二次性徴を迎えたら、異性の親とは本能的に離れていく傾向がある」ことに…

三遊亭圓窓 著『日本人が忘れちゃいけないこの落語』より。神戸の女帝(教師いじめ)の話よりも、世の中に伝えたい夏みかんの話。

だから《平林》なんてのは、もう即国語の勉強になる。ひとつ字でも、いろんな読み方が、音訓の読みわけもあるし、そうじゃないのもありますんでね。面白い。そして、読み方を間違えてもがっかりすることはないんです。総理大臣になれる可能性は残されている…

平田オリザ 著『下り坂をそろそろと下る』より。競争と排除ではなく、寛容と包摂の社会へ。

だが、本当に、本当に、大事なことは、たとえば平日の昼間に、どうしても観たい芝居やライブがあれば、職場に申し出て、いつでも気軽に休みが取れるようにすることだ。職場の誰もが、「あいつサボっている」などと感じずに、「なんだ、そんなことか、早く言…

畑村洋太郎 著『技術大国幻想の終わり』より。大川小訴訟と台風19号から考える、わたしたちの責任。

自然環境の変化は本来、なかなかわかりにくい問題ですが、近年はそれが実感できるほど明らかな変化が見られます。たとえば近年は、降雨、台風など、様々な気象現象が明らかに激烈化しています。~中略~。 首都圏では死者1000人強、罹災者40万人強を出…

畑村洋太郎 著『続・直観でわかる数学』より。小学校教員資格認定試験、全員合格? 志はどこに?

それにしても、私は昔からフシギで仕方がなかった。みんな、なんで大きい方から考えないんだろう? 細かいことから考え始める人が、じつに多いのである。多すぎるのである。そして、それは数学の世界でも当てはまるのである。小学校で習う筆算がその筆頭であ…

平野啓一郎 著『ドーン』より。分人主義と学校教育について考える。

《ドーン》みたいに、六人の人間が、ずっと一緒にいると、その間、たった一種類のディブしか生きられないでしょ? 宇宙空間のストレスは、本当なら、地上のあちこちに、自由にばら撒かれていたはずのディブが、発生する余地がないっていうことが大きいんだ。…

平野啓一郎 著『ある男』より。文学ワイン会「本の音 夜話」で平野啓一郎さんの話を味わった翌日。

颯太がどことなく不安定なのは、この二週間ほどのことだった。公文の宿題をやらないと香織が叱りつけるので、元々、過熱気味の幼児教育に否定的な城戸は、「足し算なんて、どうせそのうち出来るようになるんだから、今そこまでしてやる必要はない。」と息子…

平野啓一郎 著『マチネの終わりに』より。平野さんの話を味わった夜。文学ワイン会「本の音 夜話」にて。

トーマス・マンは、「偉大さと大衆との断絶」に言及して、ゲーテが死んだ時には、「大いなる牧羊神の死を悼むニンフたちの嘆きの声ばかりではなく、『ほっ』という安堵の溜息もはっきりと聞こえたのでした。」と語っている。ゲーテでなくとも、天才とは、周…

福岡伸一 著『世界は分けてもわからない』より。繁忙期と閑散期に分けるだって? 世界は分けてもわからない!

外科医のメスは、身体中をくまなく巡り身体から嗅覚という機能を切り出すためには、結局、身体全体を取り出してくるしかないことに気づかされることになる。つまり、この思考実験で明らかにされることは、部分とは、部分という名の幻想であることに他ならな…

成毛眞 著『40歳を過ぎたら、三日坊主でいい。』より。40歳を過ぎていないなら、変化率の高い町で先生をやるのも悪くない。

もっとも好奇心を磨くのなら、旅行に行く場所も厳選しなければならない。 私は家族旅行では、変化率の高い街にしか行かなかった。(中略) 娘が大きくなってから、「ウチの親は先進国に連れていってくれたことはないんです。話のネタづくりのために、小さい…

本田直之 著『レバレッジ・リーディング』より。教員採用試験の面接のときに話したレバレッジ・エピソード。

レバレッジ(leverage)とは、聞き慣れない言葉かもしれませんが、英語で「てこ」の働きのことを指しています。かつて理科の時間に習った「てこの原理」のてこです。「てこ」を使うと、少しの力を加えただけなのに、重いものを軽々と持ち上げることができま…

徳川恒孝 著『江戸の遺伝子』より。参勤交代は「よかったね」。松井博さんのリプも「よかったよ」。変形労働時間制は「もう、やってられないね」。

彼らは帰国の時には少し都会風に粋になって、草紙や細工物、流行の刷り絵や簪をお土産にして帰って行きました。また翌年には次の若者たちが出てきます。これが二百四十年続いたのです。世間を知り見聞をひろめて視野を広くするその効果たるや、修学旅行の比…

安部公房 著『箱男』より。海の命と私たちの命。

ところが、眠り込んじゃった。工事用のローラーで敷きつぶされたみたいに、べったりと眠ってしまったんだ。おまけに、夢の見つづけで、夢の中では一睡も出来なかったから、さっきまで寝つづけてしまったのに、まだ睡眠不足なのさ。(安部公房『箱男』新潮文…

松井博 著『僕がアップルで学んだこと』より。神戸の4教員のいじめの記事と松井博さんの新刊&旧刊を読んで考えたこと。

私がアップルに入社していちばん驚いたこと、それはいろいろな意味で突出した人材の多さでした。まず頭のいい人の数。「人生の中でこんなに頭のいいヤツには会ったことがない」と思わせてくれる人々にしばしば遭遇します。特にどうってことのないポジション…

プラトン 著『饗宴』より。埼玉県・教員残業代訴訟。給食の時間に事務作業だって?

総じてギリシャ人の間においてはホメロス時代以来飲み食いは単に肉体の栄養であるだけでなく、同時に精神の糧でもあるという考えが行なわれていた。したがって食卓で討論が行われるようなことがあっても、それは決して不思議ではなかったのである。(プラト…

野﨑まど 著『HELLO WORLD』より。読書の秋。沢木耕太郎さんと鳥山敏子さんの勧め。

だから僕は。 何の保証もないことを、言おうと思った。「きっとここは」 真っ白い世界に、最初の一行目を書き込む。 何を書いてもいい世界で、僕は。 何を書くかを、自分で決めた。「まだ誰も知らない、新しい世界なんです」(野﨑まど『HELLO WORLD』集英社…

堤未果、湯浅誠 著『正社員が没落する』より。僕らの責任は想像力の中からはじまる。

社会保障は、労働市場の質を保つために必要なんです。考えてみれば当たり前のことです。別に福祉国家は資本主義に対抗するために生まれてきたものではない。社会福祉政策はもともとドイツのビスマルクが導入したもので、資本主義を上手く生き延びていくため…

石井光太 著『物乞う仏陀』より。聖職のゆくえ、過労死レベルで働く教員は世界をどう見ているのか。

ただ、ここはカンボジアである。乞食には乞食の、地雷障害者には地雷障害者の生き方というものがある。おのおのが地雷を踏んだ運命をうけいれて自分なりの方法で生きている。 日本でいわれている乞食だとか地雷障害者のイメージとは程遠いけれど、彼らを非難…

中村文則 著『自由思考』より。上手く言えないが、平和って素晴らしいと思った。

足を開いた女優に、男優が真珠のネックレスを手に近づいていく。その設定の意味がもうわからないが、やがて男優は女性の首にそれをかけるのではなく、女性の大切な部分にその真珠のネックレスを入れていくのである。何でそんなものを入れるのか当時はわから…

鈴木大裕 著『崩壊するアメリカの公教育』& 映画『HELLO WORLD』(伊藤智彦 監督作品)より。髭ダンの人気と教ダンの不人気について。

「真に理性的な社会では、我々の中で最も優秀な者が教師になり、それ以外の者は他の仕事で我慢せざるを得ないであろう」。そう言ったのはアメリカの伝説的経営者、リー・アイアコッカ(Lee Iacocca)だ。教育関係者に限らず、この言葉に頷く人は少なくないだ…

宮台真司 著『 〈世界〉はそもそもデタラメである』より。教職を希望する若者こそ「踊れる身体」を持っていてほしい。

クラブブームだった90年代前半、学生らを連れていくと、すぐ踊れる学生と踊れない学生が分かれた。連れていく前から、誰が踊れ、誰が踊れないか、見当がついた。 ゼミで優秀な発言をする学生こそ「踊れる身体」を持っていてほしいと私は望んだ。期待を抱か…

川田龍平 著『川田龍平 いのちを語る』より。不幸だけれどしあわせ。

龍平 そうなのです。知らない、知識がないということが差別を生むことは少なくありません。理解しようとすることが大事なのです。ぼくは実際に大学で教えるようになって、ますます教育の必要性を感じました。今の大学生は薬害エイズのことも知りません。19…

博報堂大学 幸せのものさし編集部『幸せの新しいものさし』より。ものさしを変えて、他者と仕合う。

そのころ農家を回って聞いた話はショッキングだった。アメリカでは既に禁止されていた農薬を使い続けて意識障害を発病した農家の人の話、自家消費の野菜には絶対に農薬は使わない、という彼らの告白。気づいたのは、「知らないから何でもできてしまう」とい…

鶴見俊輔 編著『新しい風土記へ 鶴見俊輔座談』より。教員に「learn」と「unlearn」の時間を。

戦前、私はニューヨークでヘレン・ケラー(1880~1968)に会った。私が大学生であると知ると「私は大学でたくさんのことを学んだが、そのあとたくさん、学びほぐさなければならなかった」といった。学び(ラーン)のちに学びほぐす(アンラーン)。「アンラ…

村上春樹 著『中国行きのスロウ・ボート』より。きちんと芝を刈ることと、きちんと学級をつくること。

僕はその年、芝刈りのアルバイトをしていた。芝刈り会社は小田急線の経堂駅の近くにあって、結構繁盛していた。大抵の人間は家を建てると庭に芝生を植える。あるいは犬を飼う。これは条件反射みたいなものだ。一度に両方やる人もいる。それはそれで悪くない…