田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

埼玉教員超勤訴訟。食欲の秋なのに、給食の時間に事務作業だって?

 総じてギリシャ人の間においてはホメロス時代以来飲み食いは単に肉体の栄養であるだけでなく、同時に精神の糧でもあるという考えが行なわれていた。したがって食卓で討論が行われるようなことがあっても、それは決して不思議ではなかったのである。
プラトン『饗宴』岩波書店、1952)

 

 田舎の小学校で3年生(13名)の担任をしていたときに、農業を営むクラスの子のおじいちゃんとコラボして、20種類近くの野菜を育てたことがあります。テーマ「畑をつくって野菜を育てよう!」のもと、もともとあった畑にプラスして、校庭に新しい畑をつくり、総合の大単元として取り組んだものです。二十日大根に始まり、小松菜、ほうれん草、春菊、枝豆、人参、インゲン、トマト、オクラ、サニーレタス、トウモロコシ、キュウリ、落花生、ジャンボカボチャなど。当然といえば当然ですが、途中からは「野菜を育てよう!」ではなく「野菜を食べよう!」というニュアンスが強くなり、それこそ一年中何かを調理して食べていたような気がします。

 

 饗宴。


 一連の学習で得た教訓は「作って食べる共食の経験は、学ぶことのレディネス確保に効果的である」ということ。シュンポシオン(饗宴)を重ねるごとに、クラスの雰囲気が和やかになり、学び合いの土壌がスクスクと育っていったように思います。

 

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荒材で仕切る。みんなでここに畑をつくろう(2005.5.24)

 

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畑になった🎵(2005.6.6)

 

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もうすっかり畑(2005.6.21)

 

 人生初の畑作り。東京で生まれ育った身としては、子どもたちに負けず劣らず、楽しくて仕方がありませんでした。二十日大根なんて、その名の通り二十日でできて、すぐに食べられます。またの名をラディッシュ。そんなことすら知らなかった、都会育ちの田舎教師。これがまた美味しくて、

 

 休み時間になるたびに、子どもたちと一緒にムシャムシャ。

 

 田舎の小学校は「食べる」ことにほとんどバリアが存在しないので、本当に「ラク」です。食のバリアフリー。一方、都会の小学校では、その都度「許可」を得なければいけないというバリアが存在するため、自然と「食べる」ことから足が遠のきます。以前、都会で6年生の担任をしていたときに、理科で「地層」を学ぶに当たって子どもたちに小さなバームクーヘンを配り、半分に割って「活断層のずれ」をみんなで味わったところ、学年主任に見つかって大目玉を食らいました。やれやれ。 

 

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収穫(落花生、南瓜、二十日大根)

 

 総合の授業で育て、そして収穫したたくさんの野菜のその後はというと……。

 

 そのまま食べたり調理して食べたり、
 1年生や2年生にプレゼントしたり、
 ニンジンとオクラを使って保護者と一緒にカレーパーティーを開いたり、
 地域の公園で、高齢者に「リコーダー演奏」や「肩たたき」のおまけをつけて売ったり。

 

 子どもたちと一緒にいろいろ考え、たくさんの活動につなげることによって、学習材として、味わい尽くしました。

 

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公園での販売活動に向けて準備万端(春菊とサニーレタス)

 

 食は旅の醍醐味でもあります。異境へと旅立ち、ものを食う風景に飛び込んでいった辺見庸さんの『もの食う人々』なんてまさにそうだし、最近でいえば、太田哲雄さんの『アマゾンの調理人』なども、旅と食の切っても切れない関係を伝えてくれます。ちなみに昨年、その『アマゾンの料理人』の刊行記念トークショーを観に行ったところ、太田さんが「ホットアマゾンカカオ」(カカオの種と果実からつくったドリンク、ジャングルでとれたはちみつ入り)を振る舞ってくれて、遠路はるばる来た甲斐があったなぁ、とそのフレッシュさに酔いしれつつ、この喜びを誰かとシェアしたいと思った記憶があります。素晴らしい「食」には、やはり「饗宴」のかたちがふさわしい!

 

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太田哲雄さん、代官山蔦谷書店にて(2018.4.25)

 

 田舎の小学校でも、都会の小学校でも、給食のときの子どもたちは本当に楽しそうです。無言給食とかいう都市伝説的な話がリアルな指導として存在するのだとしたら、それから埼玉超勤教員訴訟で「給食の時間に事務作業ができる」とか宣っている埼玉県の主張が真意だったとしたら、給食は単に肉体の栄養であるだけでなく、同時に精神の糧でもあるという考えを、関係者には古典を読んでしっかりと学んでほしいと思います。なんといっても今は、

 

 食欲の秋ですから。
 

  

饗宴 (岩波文庫)

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もの食う人びと (角川文庫)

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アマゾンの料理人 世界一の“美味しい”を探して僕が行き着いた場所

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