田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

変形労働時間制ではなく、ゼロベースの富「学校」論を!

 すでに述べてきたが、金次郎の方法は五公五民とか四公六民など領主が決めた税率ではなく、直近十年の平均納税実績を年貢の上限として設定する。
 そのうえで領主や個別の農民(経営者)の生産高と借金を調べ、金次郎ファンドからの融資で高利の借金を低利で借換えさせ、冥加金を推譲させる。用水や堰や道路や公共事業に投資し、生産環境を整え、一人当たりの生産高を増やし利益率を上げさせる。ヤル気を起こさせるために入れ札でリーダーを選び、積極的に表彰して自己責任と共同責任の自覚を促し、貸付の利息や推譲により増えたファンドはつぎのプロジェクトの原資とする。これを繰り返せば、隣の村、隣の藩も豊かになる。ひいては天下が豊かになる……。

猪瀬直樹『ゼロ成長の富国論』文藝春秋、2005)

 

 あの銅像の示すものは、努力というより、効率である。猪瀬直樹さんの書いた『ゼロ成長の富国論』の中に、そんな一文が出てきます。あの銅像とは、子どもたち曰く「薪を背負って本を読んでいる人」=「二宮金次郎」のこと。私の母校にも、次女の通う小学校にも、初任校にも次の学校にも、そのまた次の……、そして現任校にも、少年金次郎の像が立っています。

 

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前々任校の二宮金次郎(12)

 

 昼の仕事をすまして、
 家へ帰ると、
 夜おそくまで起きてわらじをつくりました。
 のちにえらい人になりました

 

 昔の教科書に載っていた、類型としての金次郎の物語。のちにえらい人になりました。さて、どんな人になったのでしょうか。猪瀬直樹さんは、金次郎を「人口減少社会でどう豊かに暮らしていくのか」という大きな課題を見据えながら、荒れた学校の、否、荒れた村の復興に挑戦し、成し遂げた「えらい人」として描きます。

 そのための方法論は最初の引用にある通り。ざっくりいうと現状の見える化ボトムアップでの「できることの明確化」、及び労働環境の整備と権限委譲による労働者一人ひとりの「ヤル気」アップです。

 

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台湾の台中にて。笑う門には福来たる(99)


 のちに、二宮金次郎は優れた方法論とリーダーシップによって、小田原藩から再建を依頼された荒地「桜町領/東沼村、横田村、物井村」を復興させ、村人の笑顔を取り戻します。笑う門には福来たる。徹底した合理主義者であり、ずっと先を見据えて、効率よく努力を継続した人。金次郎のその後の活躍を追うと、そんな姿が浮かんできます。

 

 文部科学省がやるべきことって、そういうこと。
 教育委員会がやるべきことって、そういうこと。
 校長副校長がやるべきことって、そういうこと。
 

 すぐれた学級担任は、そうやってクラスを経営しています。

 

 現状の見える化はすぐにできます。現場の先生たちが、全ての仕事とそれにかかる時間をリストアップすればいい。そうすれば、法定労働時間とセットで、ボトムアップでの「できることの明確化」もできます。おそらくは授業と授業の事前事後にかける時間だけで法定労働時間を超えるでしょう。二宮金次郎だったらその結果を見て、合理的に業務をカットするはずです。バッサリと。だってそうしなければ労働環境を整備することはできませんから。

 

 ゼロ成長の富国論に基づく、
 ゼロベースの富「学校」論。

 

 イリーガルな労働環境を変形労働時間制の導入によって隠すのではなく、ゼロベースの富「学校」論によってリーガルな働きやすい労働環境をつくっていくこと。そうすれば優秀な人材が学校現場に集まるようになり、権限委譲もしやすくなります。教員に限らず、優秀な人間の「ヤル気」アップには、誰も望んでいないような研修ではなく、放っておくことが一番ですから。

 

「役職の特権を私ごとに利用し、世評や利欲に動く家臣が出て、政治が行き届かず、でたらめな政治のためか、村々の大小の農民の風俗は悪化し、人情は惰弱になり、農民は法を守るかたちで道理を破るようになった」

 

 再び『ゼロ成長の富国』より。二宮金次郎の生きた江戸末期の人口減少社会。似ていますよね、現在の教育現場と。変形労働時間制のでたらめさ然り、道理のかけらもない「教員いじめ」然り。尊徳よりも損得が優先され、無理が通って道理が引っ込む、令和初期の人口減少社会。

 だからこそ、二宮金次郎の手法はヒントになる。学び=真似びです。せっかくほとんどの学校に二宮金次郎銅像がたっているのだから、努力はほどほどにして「効率よく」真似すればいい。ちなみに、二宮金次郎は自身の方法論をこう呼んでいます。

 

 報徳仕法
 
 御意。 

 

 

ゼロ成長の富国論

ゼロ成長の富国論