田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2023-01-01から1年間の記事一覧

孫泰蔵 著『冒険の書 AI時代のアンラーニング』より。君が気づけば、世界は変えられる。

英語で "Thinking outside the box" という表現があります。これは「これまでとはちがう新しい視点で、型にはまらない考え方をする」という意味です。私たちは無意識のうちに「常識」という箱の中にいるので、まず「自分たちは箱の中にいる」と気づくこと。…

村上春樹 著『街とその不確かな壁』より。教員の前に立ちはだかる、長時間労働という不確かな壁。

「そういうことは、ここで日々仕事をしておられれば、おいおいおわかりになってくるでしょう。ちょうど夜が明けて、やがて窓から日が差してくるみたいに。でも今のところ、そんなことはあまり気にせんで、とりあえずはここでの仕事の手順を覚えて下さい。そ…

映画『ザ・ホエール』(ダーレン・アロノフスキー監督作品)より。メルヴィルの『白鯨』とのコラボが素晴らしい。

『ザ・ホエール』のチャーリーは、恋人を亡くした喪失感と自分が捨てた愛娘エリーへの罪悪感に苦しんでいる。そうしたチャーリーのつらい過去は主にセリフで語られるが、真っ先に観客のド肝を抜くのは体重272キロの尋常ならざる巨体だ。(劇場用パンフレ…

エーリッヒ・フロム 著『愛するということ』より。愛は技術です。習練を積みましょう。

わが国では、「男女交際のマニュアル」の類が氾濫している。最近の男の子たちは、雑誌を読んで恋愛のテクニックをおぼえるのだそうだ。デートのときには女の子をどこへ連れていけばいいか、どこで食事すればいいか、何をプレゼントすればいいか、女の子がこ…

西川純 著『教師がブラック残業から賢く身を守る方法』より。それほどたくさんのことができるはずないのだ!

勤務時間外の部活指導を命じられないことは法的には完全に明らかです。断わる障害としてあと残っているのは慣習的なものです。つまり、みんなが「しかたがない」と思っているからです。我々が「しかたがない」と思って引き受けることは、家庭的に追い詰めら…

高瀬隼子 著『おいしいごはんが食べられますように』より。教室をアジールに。

誰でもみんな自分の働き方が正しいと思ってるんだよね、と藤さんが言った。無理せず帰る人も、人一倍頑張る人も、残業しない人もたくさんする人も、自分の仕事のあり方が正解だと思ってるんだよ。押尾さんもそうでしょ、と言われて言葉に詰まる。(高瀬隼子…

イザベラ・ディオニシオ 著『平安女子は、みんな必死で恋してた』より。異次元の少子化対策のために、草食男子よ、『竹取物語』を読め!

「男同士は本来、お互いに無関心なものだが、女は生まれつき敵同士である」とは、何につけても悲観的な哲学者、アルトゥル・ショーペンハウアーが残した名言の一つだが、確かに思い当たる節がある。女同士の関係は、グループ内の派閥が激しく、男性が絡むと…

猪瀬直樹 著『猪瀬直樹の仕事力』より。親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている。

アメリカもフランスも、文盲率は15パーセントなんですよ。中国は50パーセント以上で、日本は文盲率ゼロでしょう。文盲率が15パーセントというのは、その人たちは本を読まないわけですね。それは逆の極にインテリが15パーセントいるということなんだ…

小川公代 著『ケアする惑星』より。ケアする人を大切に。

女性が孤立させられる社会においては、「ある協会」や『つまらぬ女』のような女性たちが連帯する物語がもっと語られてもよいのではないだろうか。(小川公代『ケアする惑星』講談社、2023) おはようございます。先週、卒業式が終わり、修了式も終わり、やる…

映画『茶飲友達』(外山文治 監督作品)より。茶飲友達、募集。

犯罪を許してはいけないが、正しさの押し付け合いの社会の中で、本当の正義とは何なのか。多様性が叫ばれる中で、この無言の同調圧力は何なのか。孤独とは、欲望とはなにかを正面から語る映画を、私は十年間ずっと作りたかったのである。(オフィシャルフォ…

勅使河原真衣 著『「能力」の生きづらさをほぐす』より。磯野真穂さんとのトークイベントに参加してきました♬

最後に。1994年冬、担任にハブられた私に両親は「もう学校行かなくていいよ」と言いました。愛で受け止めてくれたからこそ、翌日も何食わぬ顔をして学校へ行くことを自ら選びました。いつも多様な「正しさ」を見せてくれる両親に感謝します。親孝行する…

小川糸 著『あつあつを召し上がれ』より。本当に美味しい食べ物も、異性に対する好きという気持ちも、悩ましい。

「美味しい」 口の中にまだ熱々のしゅうまいを含んだまま、それでも驚きの声を上げずにはいられなかった。固まりの肉を、わざわざ叩いて使っているのだろう。アラびきの肉それぞれに濃厚な肉汁がぎゅっと詰まって、口の中で爆竹のように炸裂する。「うん、や…

藤原章生 著『酔いどれクライマー 永田東一郎物語』より。絵葉書ではなく、物語にしてもらえた先輩。

これは目標の喪失にもつながるが、常に最先端を意識していた永田さんはいつの間にか、登る動機が、高校時代に吉川智明さんと登ったときのような、「山の中にいる、ただそれだけの喜び」から、メディアへの評価へと変わっていった面もあったのではないだろう…

四角大輔 著『人生やらなくていいリスト』より。「やった方がいい」から「やらなくていい」へ。

これは、ぼくの苦労自慢じゃない。あなたへの「警告」だ。 あの働き方は狂っていた。事実、常に体調不良を訴えていた同業者や同僚が体や心を壊し、時に亡くなることもあった。だから、睡眠時間を削っての深夜勤務や、休まず働いたりしてはいけない。(四角大…

斎藤幸平 著『ぼくはウーバーで捻挫し、山でシカと闘い、水俣で泣いた』より。環境問題も労働問題も教育問題も、システムの問題。

うちに閉じこもらずに、他者に出会うことが、「想像力欠乏症」を治すための方法である。だから、現場に行かなければならない。現場で他者と出会い、自らの問題に向き合って「学び捨てる」ことが、新しい人々とのつながりを生み、新しい価値観を作り出すこと…

斎藤幸平 著『ゼロからの『資本論』』より。マルクスをアンラーンせよ。管理職は「働き方」をアンラーンせよ。

資本家の狙いは、労働力という「富」を「商品」として閉じ込めておくこと。「商品」に閉じ込めておくというのは、自由な時間を奪うということです。賃上げによる長時間労働は賃金奴隷の制度を守ることになるのです。 実際、多少賃金が上がったとしても、時間…

猪瀬直樹 著『太陽の男 石原慎太郎伝』より。学校現場に価値紊乱者を!

時間を遡れば、石原慎太郎は『太陽の季節』でスターになった瞬間の三島由紀夫との初めての対談で、「道徳紊乱」という語を知り、そこから自分で組み替えて自らを「価値紊乱者」と位置付けた。「嫌悪」の出発点である。(猪瀬直樹『太陽の男 石原慎太郎伝』中…

立川談志 著『立川談志自伝 狂気ありて』より。価値紊乱者ありて。

旅の話でもするか。よく旅をしたっけ。まだ誰もが外国なんぞに行けなかった頃の話をしよう。どこから書くか。整理がつかない。思い出すまま、気の向くままだ。 南まわりでヨーロッパに行ったっけ。金がないからソビエト航空、つまり「アエロフロートロシア空…

小泉悠 著『ウクライナ戦争』より。大統領にも社長にも学級担任にも、コンサルが必要。

ちなみに、プーチンは大統領就任前に行われたジャーナリストとのロングインタビューで、KGBを志した動機を次のように語っている。プーチンによれば、少年時代の同人にスパイへの道を決心させたのは、ソ連時代のスパイ映画やスパイ小説であった。こうした…

大内裕和 著『なぜ日本の教育は迷走するのか』より。給特法成立初期の頃は4時退勤が普通だった。

岡崎さんのご経験としては、給特法成立初期のころの働き方はどのような感じでしたか。岡崎 確かに「四時退勤」を普通にしていましたよ。大内 それは驚きですね。それは岡崎さんだけでしょうか。皆さんそうでしたか。岡崎 当時も遅くまで仕事をしている人もい…

601回目の投稿。猪瀬直樹さん、竹内慶至さん、駒崎弘樹さん、和田靜香さん、宮台真司さん、西田亮介さん、中原淳さん、等々。またまた感謝。

繰り返すが、日本人のとどまるところを知らない働きすぎ、つまりゆとりのないすさんだ心情は、近代化以降、欧米コンプレックスのなかで形成されたにすぎいない。 処方箋は、自画像の再構築の果てに存在するような気がする。(猪瀬直樹『迷路の達人』文藝春秋…

岡真史 著『〈新編〉ぼくは12歳』より。ぼくはしなない。なぜならば……。

ぼくはしなないぼくはしぬかもしれないでもぼくはしねないいやしなないんだぼくだけはぜったいにしなないなぜならばぼくはじぶんじしんだから(・・・・・・・・・)(岡真史『〈新編〉ぼくは12歳』ちくま文庫、1985) こんばんは。先日、授業でコラボして…

土井善晴、中島岳志 著『料理と利他』より。料理論と授業論はよく似ている。

中島 レシピ自体が極めて近代的なもので、政治学で言う設計主義なんですよね。人間がすべてをコントロールし、そして、こういうふうにやれば世の中がうまくいくという考え方。けれども現実は、それどおりにはいかないわけですよね。むしろそういうものが他者…

中島岳志 著『思いがけず利他』より。5年生の道徳の『手品師』は誠実? それとも思いがけず利他?

それは、親鸞が、「言葉の器」になろうとしていたからだと思います。親鸞にとって、『教行信証』を書く自分は、先人の言葉をつなぐ触媒にすぎません。言葉は私のものではなく、私にやって来て留まっているもの。自分がオリジナルの何かを表現できるというの…

映画『RRR』(S.S.ラージャマウリ 監督作品)より。郷土愛があるかないかで、エネルギーの大きさも、教育の射程の広がりも、変わる。

数ある見せ場の中で、インド映画最強の武器ともいうべきハイライトのひとつがダンス・シーン。特に、テルグのスターの中でも踊りの巧さに定評のある2人の "ナートゥ" ダンス対決は、これが無ければこの2人を共演させた意味が無いといえるほど、まさに「待…