田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

映画『茶飲友達』(外山文治 監督作品)より。茶飲友達、募集。

犯罪を許してはいけないが、正しさの押し付け合いの社会の中で、本当の正義とは何なのか。多様性が叫ばれる中で、この無言の同調圧力は何なのか。孤独とは、欲望とはなにかを正面から語る映画を、私は十年間ずっと作りたかったのである。
(オフィシャルフォトブック『family face』ENBUゼミナール、2020)

 

 おはようございます。昨日、知り合いが出演している映画『茶飲友達』(外山文治監督作品)を観てきました。二人でお茶すらしたことがない、東浩紀さんいうところの「弱いつながり」の知り合いですが、出口治明さんいうところの「本」「人」「旅」を中心にした生活をつくっていくためにも、未来のゲストティーチャー候補をつくるという職業的な目的のためにも、

 

 縁は育むもの。

 

 舞台挨拶のメンバーの一員として彼女もやって来るということで、数年ぶりに連絡を取って、いざ、みなとみらいへ。

 

 

www.countryteacher.tokyo

 

teafriend.jp

 

 役づくりにあたっては、その人物がどういう人生を送ってきたのかを、一人ひとりに考えてきてもらいました。監督が決めてしまうと、そのイメージに合わせようとするあまり、小さくなってしまって突き抜けた演技ができなくなってしまうからです。

 

 φ(..)メモメモ

 

 舞台挨拶の折に外山監督がそのようなことを話していました。職業病でしょうか。これは学級づくりや授業づくりでいうところの「子どもたちに委ねること」の大切さにつながるな、月曜日に教室で話をしよう(!)なんて、映画の内容はもちろんのこと、あらゆることを教育につなげて考えてしまいます。映画が終わって、舞台挨拶も終わって、その知り合いの俳優さんを待ち伏せしているときにも、これはストーカー行為ではなくいつかの授業のためだ(!)なんて、職業的な言い訳を頭の中で繰り返してしまいます。

 

顔にはその人の本性が宿る。

 

 外山監督は三島由紀夫の『金閣寺』に出てくる《みんなお前の面上にあらわれておる》という和尚の言葉を引き、この映画のキャスティングにあたっては、美醜ではなく、「いい面構え」であるかどうかを基準にしたといいます。「茶飲友達」という名前のパンフレットではなく、「family face」という名前のオフィシャルフォトブックを店頭に並べたのも、そういったメッセージを伝えるためでしょう。4年と約4ヶ月振りの再会となった知り合いも、さらに「いい面構え」になって、「あっ、〇〇さん!」と声をかけてくれました。

 

 茶飲友達になれるかもしれません。

 

オフィシャルフォトブック「family face」+ 記念品のお茶

 

 外山文治監督の映画『茶飲友達』を観ました。オルタナティブ家族をつくろうとした若者たちと、否、高齢者売春クラブをつくろうとした若者たちと、そこに集まったシニアたちの生き方を通して、冒頭の引用にある「本当の正義」や「同調圧力」、「孤独」や「欲望」を、道徳の授業よろしく多面的・多角的に描いた作品です。

 ネタバレになりますが、主演の岡本玲さんと菊池刑事(福田温子さん)とのやりとりに始まるラストが心に残りました。カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した映画『万引き家族』(是枝裕和監督作品)に出てくる、安藤サクラさんと宮部刑事(池脇千鶴さん)とのやりとりに負けず劣らずの見応えです。

 

マナは世の中の立ち直れない人を守ってる

 

 マナが刑事に対してそう言うんですよね。マナというのは岡本玲さん演じる高齢者売春クラブ、否、オルタナティブ家族の大黒柱です。クラスの子どもたちにも、マナのような大人になってほしい。世の中の立ち直れない人、すなわち弱い立場にいる人たちに気づいて、手を差し伸べられる大人になってほしい。そのために学力をつけてほしい。算数ができることが偉いのではなく、その力を他者のために役立てられることがあなたの魅力なんだって、気づいてほしい。例によって職業病的にそう思うのですが、菊池刑事はそんなマナを正面から否定するんですよね。台詞としてはうろ覚えですが、あなたは自分の寂しさを紛らわせるために高齢者の孤独を利用しているだけだって。教室でいうと、算数の得意な子がそうでない子に説明したり教えたりするのって、前者の優越感を肥大化させているだけなんじゃないの(!?)問題です。

 

 うん、難しい。

 

 マナと刑事の正義の押し付け合いの場面、道徳の授業でいうところの「考え、議論する」場面が終わった後に、ラストのラストで「毒親の典型」であるマナの母親が面会に訪れ、衝撃の言葉を口にします。

 

 衝撃過ぎて、脱力します。

 

 詳しくは映画館で。