田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

映画『RRR』(S.S.ラージャマウリ 監督作品)より。郷土愛があるかないかで、エネルギーの大きさも、教育の射程の広がりも、変わる。

 数ある見せ場の中で、インド映画最強の武器ともいうべきハイライトのひとつがダンス・シーン。特に、テルグのスターの中でも踊りの巧さに定評のある2人の "ナートゥ" ダンス対決は、これが無ければこの2人を共演させた意味が無いといえるほど、まさに「待ってました!」と声をかけたくなるほどの高揚感を味あわせてくれる。
(劇場用パンフレット『RRR』ツイン、2022)

 

 こんばんは。映画評論家の江戸木純さんのコラムより。テルグというのは《インド南部に住むドラビダ語系のテルグ語を話す人々の総称》(Wikipedia)のことです。映画『RRR』を「たまたま」観なかったら、一生目にしなかった言葉かもしれません。いくつになっても知らないことばかり。だからこそ、自分の興味・関心の外にあることにもコンタクト可能な余白とエネルギーを大切にしていきたいって、働き過ぎてはいけないって、新年の抱負として、そう思います。

 

 明けまして、おめでとうございます。

 

劇場版パンフレット「RRR」

 

 昨年の12月に、映画『RRR』(S.S.ラージャマウリ 監督作品)を観ました。98年に劇場で観た『ムトゥ 踊るマハラジャ』(K・S・ラヴィクマール 監督作品)以来となる、久しぶりのインド映画です。ちなみに『RRR』は日本におけるインド映画の興行記録を24年ぶりに更新したとのこと。その24年前の記録というのが『ムトゥ 踊るマハラジャ』というのだから、偶然というか、必然というか、繰り返しますが「自分の興味・関心の外にあることにもコンタクト可能な余白とエネルギー」って大切だなぁと思います。

 

 RRR!

 

 とある作家さんの誕生日パーティーにて。完全アウェイの中、隣の席に座っていたジェニー(映画のヒロインのひとり)のような美しいお姉さんから勧められたのが『RRR』です。インド映画が大好きだというそのお姉さんに「お勧めは?」と訊ねたところ、当然とばかりに勧められたのが「アールアールアール!」。即答でした。

 

 RRR?

 

 小学校の教員的には、3つのRといえば、Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)の「3R」ですが、映画の『RRR』は、Rise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)の略です。うん、全然違う。しかも「蜂起、咆哮、反乱」って、どれも興味・関心の外にある言葉ばかりです。だから「これ、おもしろそうだから観に行こう!」って、自分からは絶対になりません。

 

 でも、行きました。

 

 幾つもの偶然が届けてくれた映画だからです。作家さん然り、お姉さん然り、その他もろもろ然り。東浩紀さんいうところの郵便的誤配です。誤配を梃子にしないことには、自分の興味・関心の外には出て行けません。だからやっぱり、余白とエネルギーって、大事。残業している場合ではありません。

 

 しかも残業代ゼロ。

 

rrr-movie.jp

 

 で、観に行って正解でした。特に、このナートゥダンス。映画『ムトゥ 踊るマハラジャ』で植え付けられた「インド映画 ≒ 踊る」というイメージにぴったりのダンスです。何度観ても飽きません。ストーリーと相まって、中毒になっているファンも多いのではないでしょうか。

 

www.youtube.com

 

 ダンス対決をしている二人(N・T・ラーマ・ラオ・ジュニア、ラーム・チャラン)が主人公です。ハリウッドではなく、ボリウッドにおけるブラッド・ピットとトム・クルーズといえば、インド国内におけるこの二人の立ち位置がわかるでしょうか。このナートゥダンスが、映画『RRR』の大ヒットの要因(のひとつ)といわれています。

 

 なぜこんなにも魅力的なのか。

 

 パンフレットに載っている、「日印つなぐインフルエンサー」として知られるMAYOさんの言葉を借りれば、《深い愛国心と魂、そして色濃い文化にルーツを持つ最高にカッコいいダンスだから》となります。

 

 愛国心。

 

 郷土愛と言い換えることができます。ダンスに限らず、主人公二人の郷土愛(に基づく振る舞い)が最高にカッコいいんですよね。ふた昔前くらいの日本にはあったという「故郷に錦を飾る」的なカッコよさです。俺を育ててくれた故郷のために、俺を送り出してくれた仲間のために、宗主国であるイギリスの横暴に対して、ラーム・チャラン曰く、

 

 最後の最後の血の一滴まで立ち向かうのみ!

 

 この台詞の直前にある「責務とは行為であり結果ではない。私は結果は求めない」っていう、一見すると逆のように思える言い回しも、実に深くて、いいんです。ぜひ観てみてください。

 

気仙沼(2022.12.27)

 

 初任校でお世話になった気仙沼の師匠も、「地域のために」という郷土愛を強くもっている人でした。エネルギーの大きさも、教育の射程の広がりも、全然違うものになってくるんですよね、郷土愛があるかないかで。そして郷土愛のある教員の周りには、『RRR』の二人のように、自然と人が集まります。郷土愛という言葉は、作家・猪瀬直樹さんの著書でいうところの『公』とパラフレーズしてもいいかもしれません。いずれにせよ、

 

 サウイフモノニ

 ワタシハ

 ナリタイ

 

 今年もよろしくお願いいたします。