田舎教師ときどき都会教師

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四角大輔 著『人生やらなくていいリスト』より。「やった方がいい」から「やらなくていい」へ。

 これは、ぼくの苦労自慢じゃない。あなたへの「警告」だ。
 あの働き方は狂っていた。事実、常に体調不良を訴えていた同業者や同僚が体や心を壊し、時に亡くなることもあった。だから、睡眠時間を削っての深夜勤務や、休まず働いたりしてはいけない。
(四角大輔『人生やらなくていいリスト』講談社+α 文庫、2018)

 

 こんばんは。一般社団法人ライフ&ワーク代表理事の妹尾昌俊さんによれば、小学校の教員の「41%」が睡眠障害を患っているそうです。食欲と性欲と並ぶ、人間の三大欲求のひとつである睡眠欲を、約半数が満たせていないということです。満たせていないどころか、日常生活に支障をきたすような「障害」になってしまっているのだから、教員のなり手がいなくなるのも当然です。まともに眠ることすらできないような職業に、いったい誰が好き好んで就くというのでしょうか。私もその「41%」に入っているのは間違いありません。朝夕、電車に乗った途端、あっという間にカクンですから。

 

 この働き方は狂っている。

 

 

 四角大輔さんの『人生やらなくていいリスト』を読みました。Twitterで誰かが勧めているのを見て、思わずポチッとした一冊です。無意識に「学校やらなくていいリスト」を欲していたのかもしれません。英語を入れた方がいい、プログラミングもやった方がいい、少子化対策として恋愛の仕方も教えた方がいい、等々。社会学者の苅谷剛彦さんいうところの「ポジティブリスト」に悩まされる私たち教員にとっては、この「やらなくていい」という見方・考え方こそが必要、それも待ったなしで必要といえます。狂った働き方をやめるべく、

 

「やった方がいい」から「やらなくていい」へ。

 

 目次は以下。


 第1章 表現
 第2章 孤独
 第3章 仲間
 第4章 共創
 第5章 仕事
 第6章 信念
 第7章 感性
 第8章 挑戦

 

 目次も「超ミニマル主義」で、よい。

 

 作者の四角さん(1970-)は、レコード会社のもと「スーパー」プロデューサーで、現在はニュージーランドに移住し、湖のそばで半自給自足の森の生活を営んでいるそうです。プロデューサー時代には、絢香、平井堅、CHEMISTRY など、錚々たるミュージシャンを世に送り出し、ミリオンヒットを何度も記録したとのこと。ポイントは、移住したのが2010年、40歳のときということでしょうか。資本主義的な成功者のポジションを捨てて、森の生活を選んだというわけです。

 

 なぜ?

 

 無類の釣り好きだったから、というのが答えです。

 

 エサを水中に入れてしばらく待つ。すると突然、釣り糸を通して手に「ブルブルッ」という振動が伝わってきた。
「何かとつながっている!」という衝動に襲われ、全身がしびれたような状態に。釣れたのは、手のひらに乗るくらいの小さなフナ。

 だが、その「言葉にできないほど強烈な衝動」は、体の真ん中あたりに宿り続け、その後のぼくの人生をデザインすることになる。
 笑わないでほしい、これは本当の話だ。

 

 笑いません。当時、小学校に入学したばかりだった四角さんが、数十年後、フライフィッシングのメッカであるニュージーランドの湖(釣り場)で暮らしているという厳然たる事実があるからです。

 

 幼少期の経験って、でっかい。

 

 四角さんは《あなたにも「人生を変えるほどの衝動」が、体のどこかに残っているはずだ》と書きます。さらに、忘れているだけに過ぎない、と。それを思い出すためにも、私たち教員は狂った働き方をやめなければいけません。

 

 以来、放課後すぐに出かけ、真っ暗になるまで釣りをするのが日課となった。

 

 標準時数を減らして子どもたちに放課後の時間を確保しましょうという提案です、きっと。そうすれば、自動的に教員の働き方も改善されますよという提案です、きっと。

 そんなふうに読み替えたくなるようなエピソードをいくつも書いている四角さんですが、魚と話す(?)のは得意でも、人と話すのは苦手だったそうで、小学生のときも新入社員のときも、それが原因で「いじめ」られたとのこと。曰く《40歳をすぎてからやっとマシになってきた》云々。つまり、移住する前の「スーパー」プロデューサー時代も人と話すことが苦手だったということです。それなのに、ミリオンヒット連発って、

 

 えっ?

 

 その「えっ?」に答えてくれるのが「人生やらなくていいリスト」です。第1章から第8章までに、合わせて40の「やらなくていい」が紹介されています。四角さんはこれらの「やらなくていい」を使ってスーパープロデューサーになり、ありのままの自分でいられる「森の生活」を手に入れたというわけです。くまのプーさんでいえば、「何もしないをする」作戦です。例えば、

 

  • 隣の芝生は見なくていい
  • 好きな人としかつきあわなくていい
  • 長い時間働かなくていい
  • 常識に従わなくていい
  • できない自分でもいい

 

 隣のクラスと比較しなくていい、好きな同僚としかつきあわなくていい、定時になったら帰ればいい、前例踏襲なんてしなくていい、カリスマ教師なんて目指さなくていい。上記に挙げた「やらなくていい」を「人生」ではなく「学校」バージョンにすると、そんな感じになるでしょうか。

 

 睡眠は削らなくていい。

 

 おやすみなさい。

 

 

超ミニマル主義

超ミニマル主義

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