田舎教師ときどき都会教師

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中野民夫 著『学び合う場のつくり方 本当の学びへのファシリテーション』より。ワークショップって、何? 楽しく学び合える場を創ろう。

 私は、大学に入った頃、一方的な講義を聞くだけの大教室にげんなりしながら他方で、少人数ゼミや学外の大人のフリースクールなど、「学びたい人が自然に集まって学び合う」場に魅かれ、触発された。さらに登山や世界への一人旅の体験のなかで身をもって学んだ。就職した広告会社博報堂では大阪の営業所で社会勉強し、思い立って休職・私費留学したカリフォルニアで、「ワークショップ」や「ファシリテーション」という参加型のスタイルに出会った。確かに、聞いたことよりも、自分で体験し発見し獲得するなかで、学び、成長させてもらった。
(中野民夫『学び合う場のつくり方 本当の学びへのファシリテーション』岩波書店、2017)

 

 こんばんは。以前、中野民夫さんと会議でご一緒するという僥倖に恵まれたことがありました。打ち上げの場(横浜中華街)で、ご本人から「もしよかったら」と手渡されたのが、ディスカウント価格 & メッセージ入りの『学び合う場のつくり方』です。

 

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中野民夫さんがその場で書いてくれました🎵(17)

 

 中野民夫さんは、日本におけるワークショップの第一人者として知られています。ワークショップという言葉は、ファシリテーターやファシリテーションなどとともに、今ではもうすっかり人口に膾炙していますが、言葉が認識を生み、認識が行動を生み、行動が変化を生むということを考えると、中野民夫さんが『ワークショップ』や『ファシリテーション革命』などの本を通して世の中に与えた影響は計り知れません。学校現場における「アクティブラーニング」や「主体的・対話的で深い学び」も、ワークショップの普及の延長線上にあるといっても過言ではないと思います。

 

 教えるより、楽しく学び合える場を創ろう。

 

 大賛成です。しかしここ数年、学校に限らず、ワークショップの粗製濫造とでもいうような状況が生まれ、これは本当にワークショップの名に値するのか(?)と疑問に思うことが多くなってきました。疑問に思ったら、学び直しです。即位礼正殿の儀が執り行われ、祝日となった昨日。某NPO団体の主催する「よいワークショップってなんだろう?」という会に参加し、ワークショップの定義や歴史などを改めて学んできました。

 

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参加者12名、教員は私ひとり。

 

 ① 会議の場がワークショップ化している。
 ② イベントがワークショップ化している。

 

 ワークショップの現状として、最初にそんな話がありました。さらに、現状のマイナス面として、①については「意見はあるが意志はない」という状況があり、②については「主催者の意図が見えなくなり、楽しそうだからOK」のような状況が生まれているとのこと。なるほどなぁと思います。

 学校の授業にもそういった傾向があります。主体的・対話的で深い学びの視点から「子どもたちが生き生きと話していて、楽しそうでよかった」みたいな。「課題は、深い学びですね」みたいな。

 

「誰でも言えるだろ、それ」みたいな。

 

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ライブレコーディング

 
 ワークショップの可能性について、あなたの意見は?
 ワークショップの課題について、あなたの意見は?

 

 ワークショップの歴史や定義などについてレクチャー形式で学んだ後に、4人グループでワークショップの可能性と課題について話し合いました。レクチャーや話し合いの中で刺さった言葉を書き出すと、以下の通りです。

 

  • ワークショップについて考える前に、前提の確認。いわゆる「ガチガチの会議」や「ガチガチの講演会」を何とかしようという、「ガチガチ」に対するアンチテーゼとしてワークショップにスポットライトが当たった。90年代にはそういうコントラストが明確だった。だから「ガチガチ」をほぐすという意味で、ワークショップには可能性があるといえる。
  • ワークショップと体験学習は区別した方がいい。例えば「稲刈り」を体験するだけだったら、それはワークショップではない。
  • ワークショップをするときに「安心で安全な」という言葉を使うことがあるが、日本のそれと欧米のそれは全く違う。日本は「批判は駄目」、欧米は「批判も含めて受容」という意味で「安心で安全な」と言っている。
  • ワークショップの課題としては、形式化の先にある目的化などが考えられる。
  • ワークショップに限らず、場に対しては、常にその場を苦手とする人がいるということを忘れてはいけない。
  • これもワークショップに限らないが、嘘のない場をつくることが大切。「何か違うな」と思っている人がそのことをしっかりと口にしない限り、その場はよくならないし、変な方向に行ってしまう。

 

 テーマはワークショップでしたが、授業づくりや学級づくりに応用できる話が多く、とても勉強になりました。中野民夫さんが書いているように「学びたい人が自然に集まって学び合う」場は、おもしろい。

 

 学びたい人は、自然に集まり、学び合う。

 

 教員って、本来そういう人の集まりのはずですよね。放っておいても自然に、或いは勝手に学ぶ人。だから働き方改革を進めるのであれば、げんなりするような研究や研修はゼロにして、放っておいてほしい、と思います。学ぶ場所も、学ぶ手段も、かつてないくらいにたくさんありますから。天皇陛下が好きな人は、自然と即位礼正殿の儀に参列するし、学ぶことが好きな人は、自然と楽しく学び合える場を創ります。

 

 本当の働き方改革へのファシリテーション。
 

 革命を🎵

 

 

学び合う場のつくり方――本当の学びへのファシリテーション

学び合う場のつくり方――本当の学びへのファシリテーション

 
ワークショップ―新しい学びと創造の場 (岩波新書)

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ファシリテーション革命 (岩波アクティブ新書)

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