田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

岩田健太郎 訳、ジェイムズ P.メザ、ダニエル S.パッサーマン 著『ナラティブとエビデンスの間』より。ダイヤモンド・プリンセスで起きているナラティブ。

本書を読むと、なるほど、ナラティブなくしてエビデンスなし、エビデンスなくしてナラティブなしなんだなぁ、と思います。両者は補完的なのではなく、一連の流れとして医療の実践のプロセスにビルドインされているものなのだ、と実感できます。(岩田健太郎 …

吉本隆明 著『ひきこもれ』より。休めメロス。

たとえば太宰治は、小説の登場人物に、学校なんてものは、カンニングしても何でもいいからとりあえず出ておけばいいんだと言わせている。また、武田泰淳は、大学を中退した奴じゃないと信用しないと書いています。 勝手な言い草のようですが、それなりの確信…

浅生鴨、幡野広志、田中泰延、他『異人と同人』&「幡野広志のことばと写真展」より。たくさんの好きと「わぁーーー。」って瞬間。

朝起きたら雪が積もって街が真っ白になっていたとか、美味しいご飯を食べたときとか、知らない街を歩いていて大きな交差点に来たときとか、友達と遊んでいてたのしいときとか、好きな人と一緒にいてドキドキしているときとか。 そういう「わぁーーー。」って…

岩本麻奈 著『人生に消しゴムを使わない生き方』より。同じことよりも違うことに価値を。

フランスは日本から見れば変わっている。試験の答案を鉛筆で書いたり、消しゴムで消したりするのを認めない。万年筆を使う。一度書いたものは(棒線で抹消しても)事実として残る。さらに奇妙なのは答案に「美しさ」を求めるのだ。数学で答えが間違っていて…

ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー『風をつかまえた少年』より。教科書を読むって、大事。

朝食抜きということもなくなる。学校を途中で辞めるということも。風車があれば、暗闇と空腹という問題からついに解放される。マラウイでは、風は神さまがたえまなく与えてくれる数少ないもののひとつだ。風は昼となく夜となく木のこずえを揺らしつづけてい…

鴻上尚史 著『不死身の特攻兵』より。「空気」を読んでも従わない。

けれど、このあとも練習機を含む「全機特攻化」は続いたのです。 それでも、美濃部少佐の存在と勇気ある発言は、海軍におけるひとつの希望だったと僕は思っています。あの時代に、「精神力」だけを主張する軍人しかいなかったわけではない、心の中で反論する…

岩田健太郎 著『食べ物のことはからだに訊け!』より。教師の直観はバカにできない。

感性が鋭くなると、同じ食事に飽きてきます。あっさりした食事が好きな人も、たまにはこってりした食事を食べるのがアクセントになってくれます。逆もまた然りです。 このような食の多様性は、食に対する寛容を生み出してくれます。あれが食べたい、これは食…

外山滋比古 著『「読み」の整理学』と髭ダンと無賃残業と無言給食。

十四世紀、イギリスに英詩の父と言われたジェフリー・チョーサーという詩人がいた。その詩の中に「彼は石のごとく読んだ」という一行がある。これはまぎれもなく黙読をしたことを示しているが、たいへん斬新な読み方をする文人、読書人であることを強調しよ…

鴻上尚史 著『「空気」を読んでも従わない』より。「世間」ではなく「社会」を生きる。

「どこで恋人を見つけましたか?」という質問を日本人にすると、「学校」「塾」「バイト先」「勤務先」というように、知っている人がいる場所、つまり「世間」を挙げます。 欧米では、「公園」「列車」「銀行」「レストラン」「バー」という、知らない人が出…

幡野広志 著『なんで僕に聞くんだろう。』より。エンドロールではない。

本当はたのしいはずの勉強を、相対的評価や成績やテストの平均点で、大人がつまらなくさせちゃったんじゃないかな。大人だって好きな趣味を相対的評価で成績つけられたら、上位の人はいいけど下位の人はイヤになっちゃうとおもうんです。子育てだって国から…

西智弘 著『がんを抱えて、自分らしく生きたい』より。何もしないということを、する。

私は、研修医のころからたくさんの患者さんの最期を見続けてきて、いまは「何もしないということを、する」というのが良い場合があると思っている。医師として「何もしない」というのは勇気がいることだ。「もっとできることがあるのではないか」という罪悪…

岩田健太郎、鷲田清一、内田樹、他『有事対応コミュニケーション力』より。コロナウイルスと口調について。

僕は医者なので、自然科学側の人間としていつも思うんですけど、一般的に自然科学のエキスパートは、あまり即答、断言はしないものなんです。「どうすればいいんですか」と聞かれて、「それはこうすればいいんんですよ」って即答できる人は、あまり自然科学…

幡野広志 著『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』より。安心と問いのハッピーセット。

「ぼくは写真のことしかわからないけど、なにかをやるときの技術って、全然たいした問題じゃないですよ。技術が上がるっていうのは、ただ『失敗の回数が減る』というだけのことですから。大事なのは、自分が好きなこと、自分で選んだことを、もっとわがまま…

映画『冬時間のパリ』(オリヴィエ・アサイヤス監督作品)より。不道徳を通して語ることの価値。

ここに愛し合う二人の男女がいて、幸せに、陽気に暮らしており、彼らの一人、もしくは二人ともが本当に優れた仕事をしていると、人々は、あたかも渡り鳥が夜間、強力な灯台に引き寄せられるように、その二人に確実に引き寄せられるものである。もしその二人…

太田哲雄 著『アマゾンの料理人』と、磯野真穂さん&古田徹也さんの対談より。

僕が真っ先に訪れたのは、ベレン・アルタ地区にある市場だ。治安が悪いスラム街にあり、旅行者はなるべく近寄らない方がいいと聞くが、「この世のすべてが揃う」と評判のアマゾン最大の市場を素通りできるはずがない。 僕は旅先でよく市場に足を運ぶ。世界に…