田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

幡野広志 著『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』より。安心と問いのハッピーセット。

 「ぼくは写真のことしかわからないけど、なにかをやるときの技術って、全然たいした問題じゃないですよ。技術が上がるっていうのは、ただ『失敗の回数が減る』というだけのことですから。大事なのは、自分が好きなこと、自分で選んだことを、もっとわがままになってやるっていう、それだけだと思います」
 それは、作曲の道へ進もうとする彼女へのエールでもあり、ぼくが自分自身に言い聞かせることばでもあった。
(幡野広志『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』ポプラ社、2019)

 

 こんばんは。昨日、幡野広志さんのコラム「あなたのいちばんの理解者はスマホです」 (cakes)に、Twitterでリプライしたところ、私にしてはたくさんの「いいね」がつきました。幡野さんの人気ぶりがうかがえます。
 

 

 不安と答えのハッピーセットによって、親や教師にコントロールされながら育った子どもは将来どうなるのか。幡野さんのコラムには、そういったことが書かれています。判断力や思考力を奪われ、自分では何も決められない大人になってしまうというのが「答え」ですが、過労死レベルで働いていることに何の疑問も抱いていない教員も、もしかしたらそういった大人に分類されるかもしれません。

 勉強しないとあとで困るぞ、と言われて不安になる子ども。
 不安になった子どもに答えを与えてコントロールする教師。

 答えに当たるものは「宿題」とか「真面目に取り組む態度」とか「思考停止に近い従順さ」とか、そういったものでしょうか。「忖度して行動する力」も入っているかもしれません。それらの答えと、幡野さんの言う《自分で選んだことを、もっとわがままになってやるっていう》答えは、往々にしてバッティングします。では、どうすればいいのでしょうか。

 

 安心と問いのハッピーセット。

 

 幡野さんの「不安と答えのハッピーセット」という言い回しを受けて、Twitterのリプライにはそう書きました。しかし、わかってはいてもなかなかうまくいかないというのが実際のところです。家庭環境の異なる40人の子どもが教室にいて、教科と内容と時数が決まっていて、教室のサイズや窓の向きまで決まっていて、子どもたちがビシッと統率(管理)されている状態をよしとする保護者や同僚や管理職がいて、相も変わらず「前へならえ」なんて号令をかけざるを得ない集団行動指導が多々行われているところ、それが学校です。大人のマインドセットも公教育のストラクチャーも変えずに「不安と答えのハッピーセット」をゼロにしたら、きっと「自分で選んだことをもっとわがままに」なんて言っていられないくらいカオスな状態になります。「安心と問いのハッピーセット」で子どもたちに人生のコントローラーを段階的に手渡していくためには、換言すれば、ぼくたちが選ばなかったことを選びなおすためには、テニスコートを野球場に変えるくらいのスキームチェンジをしなければなりません。

 

 

 

《生きるとは、「ありたい自分を選ぶこと」だ》。幡野さんはそう言います。《学校は理不尽さを学ぶところだ》。幡野さんはそうも言います。

 そんな幡野さんの本やコラムを読んでいると、公教育が子どもたちを囲いすぎている気がしてなりません。単純に長いですよね、学校。6時間目まであって、居残りや宿題もあって、それでいて学校で過ごす時間は、構造上、不安と答えのハッピーセットで人生のコントローラーを手放す時間として位置づけられている。

 

 午前だけで十分。

 

 授業時数を減らし、給食を食べたら「さようなら」くらいの囲い方に留めて、子どもたちをさっさと家庭や地域に帰せば、そこに「安心と問いのハッピーセット」があるかどうかはわかりませんが、少なくとも子どもたちが人生のコントローラーを自分でもつ時間は増えます。そうすれば、将来、家庭や地域の意識だって変わるかもしれません。現状、過労死レベルで働いている先生たちも「ぼくが子どものころ、ほしかった先生」になれるような気がします。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 不安と答えのハッピーセットを安心と問いのハッピーセットに変えていくためにはどうすればいいのか。幡野さんは「なんで僕に聞くんだろう。」と言うかもしれませんが、聞いてみたいところです。明後日に発売される幡野さんの新刊『なんで僕に聞くんだろう。』が待ち遠しいなぁ。

 

 なんで僕に聞くんだろう。

 

 安心と問いのハッピーセットがもらえるからですね、きっと。

 

 

なんで僕に聞くんだろう。

なんで僕に聞くんだろう。

  • 作者:幡野 広志
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2020/02/06
  • メディア: 単行本