田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

浅生鴨、幡野広志、田中泰延、他『異人と同人』&「幡野広志のことばと写真展」より。たくさんの好きと「わぁーーー。」って瞬間。

 朝起きたら雪が積もって街が真っ白になっていたとか、美味しいご飯を食べたときとか、知らない街を歩いていて大きな交差点に来たときとか、友達と遊んでいてたのしいときとか、好きな人と一緒にいてドキドキしているときとか。
 そういう「わぁーーー。」って瞬間にシャッターを押すんだ、それが感動をしている瞬間だから。だから被写体を探すのではなく、感動に気づくアンテナがとても大切なんだ。
(浅生鴨、幡野広志、田中泰延、他『異人と同人』ネコノス、2019)

 

 おはようございます。昨日は学校に行く予定でしたが、休日出勤はやはり阿呆らしいと思って、行き先を途中で大胆に変え、渋谷のパルコに行って「幡野広志のことばと写真展」を観てきました。

 感動に気づくアンテナと同じように、阿呆らしさに気づくアンテナも大切です。やりたいことをやるためには「やりたくないことをやらないこと」からはじめたほうがいい。先日、次女の友達のパパがそう話していましたが、アグリーです。たった一度の人生、休日出勤なんてしている場合ではありません。

 ちなみに今日は次女の誕生日です。あっという間に12歳。幡野さんのお子さんが真っ白な世界を歩いている写真を見て、次女も昔はこんな感じだったなぁって、記憶の雪融けとでもいうべき懐かしさに駆られました。幡野さんのことばと写真のように、優しい記憶です。

 

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幡野広志のことばと写真展(2020.2.16)

 

 展覧会の副題は「立ち止まらせる写真と、背中を押すことばたち」です。会場は渋谷のパルコの8階にある「ほぼ日曜日」のイベントスペース。イメージしていたよりも小さな空間でした。小さな、優しい空間。

 

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写真の裏や写真の脇にことばが添えられています🎵

 

「気仙沼漁師カレンダー」というものが2021年に発売されるそうです。撮影はもちろん幡野さん。上の写真の右奥にある作品が気仙沼です(手前もそうかもしれません)。写真の隣には《(前略)知らない世界を知れるのはたのしいし、それが自分にとって美しいものであれば最高だ》ということばが添えられています。私も気仙沼が大好きで、毎年のように足を運んでいるので、「知らない世界」というところにも「美しい」というところにも、記念碑的な共感を覚えました。カレンダー、めちゃくちゃ楽しみだなぁ。

 

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気仙沼漁師カレンダー、楽しみだなぁ🎵

 

 毎年のように足を運んでいる気仙沼ですが、写真に添えられたことばを見るまではそこが気仙沼だとはわかりませんでした。ことばを見て、気仙沼だとわかり、写真に親しみが増す。幡野さん曰く《写真は添えられる言葉で印象が変わる、焼肉だってタレで印象は変わるのだ》云々。焼肉のタレっていうところが幡野さんらしくていいなぁと思います。ユーモアが潤滑油となって、ことばにも写真にも、ますます親しみがわきます。

 

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ユーモアとあたたかさと

 

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写真の裏に、ことば(これまでの著書から)

 

 小一時間ほど幡野さんのことばと写真を味わってから、本を一冊購入し、会場を後にしました。購入したのは冒頭に引用した『異人と同人』で、幡野さんのことばをまとめたちいさな本『あなたがしあわせならそれでいいんです。』(非売品)もおまけ(?)としていただきました。しあわせです。

 

 

 文学フリマ東京(第二十九回・文学フリーマーケット東京)で頒布されたという同人誌『異人と同人』。クリックして拡大すればすぐにわかりますが、幡野さんだけでなく、『読みたいことを、書けばいい。』の田中泰延さんや、『嫌われる勇気』の古賀史健さんなど、執筆者としてそうそうたるメンバーが名前を連ねています。呼びかけ人は『中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい?』で知られる、元NHK職員の浅生鴨さんです。

 

 すこしは写真の話を。

 

 幡野さんは、お子さんの優くんに語りかけるかたちで、『すこしは写真の話を』という文章を寄せています。これがまた「すこし」ではなく「すこしだけど深い」話で、田中泰延さんの寄せた『うちゅうじん さぶろうさん』の「深さ」と相まって、とっても切なくなります。

 

写真というのは、たくさんの好きを重ねることが大切です。

 

 幡野さんの文章だけ、ルビが振ってあるんですよね。何年後になるか、何十年後になるか、それはわからないけれど、お子さんがいつ読んでもいいようにと、そういう配慮だと思います。我が子に優しい子になってほしければ、親が優しくあり続けるしかない。処女作の『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』の中で、そんなふうに語っている幡野さんらしい配慮(優しさ)です。

  

たくさんの好きを積み重ねると、自然と好きな写真ができるんだ。

 

 人生というのは、たくさんの好きを重ねることが大切です。たくさんの好きを積み重ねると、自然と好きな人生ができるんだ。「写真」を「人生」に置き換えると、パパからのそんなメッセージになります。

 

 たくさんの好き。

 

 12歳になった次女にも、15歳の長女にも、そして教え子たちにも、たくさんの好きを見つけて、幡野さんや未来の優くんと同じようにそれらを積み重ねていってほしいものです。ちなみに、幡野さんとはひと味違った「深さ」を感じさせてくれる田中泰延さんの『うちゅうじん さぶろうさん』も、ある意味「好き」を積み重ねた作品です。気になる人は、ぜひ購入してみてください。

 

 たくさんの好きと「わぁーーー。」って瞬間。

 

 大切にします。

   

 

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中の人などいない: @NHK広報のツイートはなぜユルい? (新潮文庫)

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