田舎教師ときどき都会教師

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外山滋比古 著『「読み」の整理学』と髭ダンと無賃残業と無言給食。

 十四世紀、イギリスに英詩の父と言われたジェフリー・チョーサーという詩人がいた。その詩の中に
「彼は石のごとく読んだ」
という一行がある。これはまぎれもなく黙読をしたことを示しているが、たいへん斬新な読み方をする文人、読書人であることを強調しようとしたのであろう。そのころ、すべての人は歌うように読んだと想像される。
(外山滋比古『「読み」の整理学』ちくま文庫、2007)

 

 こんにちは。昨夜、1月に続いて Official髭男dism のライブに行ってきました。年休2。場所は1月と同じくパシフィコ横浜です。Vocalの藤原聡さんが大好きだったというテレビドラマ『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(2016)でいうところの「ヨシヒコ~」ではなく「パシフィコ~」です。そのドラマの中で、とある「仏」が「ヨシヒコ」のことを「パシフィコ~」と呼ぶ場面があったとのこと。観たことがないのでよくわかりませんが、1月のときも今回も、MCのときに藤原さんがその話をしていました。藤原さん曰く「いつかヨシヒコ~ではなくパシフィコ~でライブをやってみたかった」。サヨナライツカ。いつか無賃残業ともサヨナラしたいところです。

 

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収録が入っていたようで、1月よりもテンション高め(2020.2.10)

 

 1月のライブではその日が日曜日だったということもあってアンコールの1曲目は「日曜日のラブレター」でしたが、今回は本日発売の話題曲「I LOVE」でした。藤原さん曰く、メンバーへの愛やメンバーからの愛、ファンへの愛やファンからの愛、家族への愛や家族からの愛、そして誰かから誰かへの愛など、世の中に存在する全ての「I」と「愛」について歌った新曲とのこと。愛と同じで、時間を重ねていくことで体に馴染んでいく名曲です。事前にダウンロードして何度も聞いてからライブに足を運んだので、大興奮でした。いや~、よかったなぁ~。ライブ中盤の「旅は道連れ」から「ブラザーズ」へと展開する流れも全人類に体験してもらいたいくらい楽しくてよかったです。We love 髭ダン。給食の時間に放送委員会の子どもたちが「髭ダン特集」を組むだけのことはあります。

 

 

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 昨年の4月、教室で髭ダンをかけたところ、子どもたちの反応は「誰?」っていう感じでした。一昨年、運動会で髭ダンを流したところ、保護者アンケートに「もっとメジャーな曲を流してください」と書かれて涙しました。当時は、給食の時間に髭ダン特集が組まれて何人もの子が歌いながら給食を食べている未来なんて想像することもできず。サヨナライツカ。世の中には「石のごとく食べた」とでもいうべき無言給食なんてものを実施している学校もあるそうですが、きっといつか変わります。「石のごとく」無賃労働を続けているわたしたちの今も。

 

 彼は石のごとく読んだ。

 

 

  冒頭の一節は、外山滋比古さんの『「読み」の整理学』の一節です。読むことについて書かれた本でいえば、ショウペンハウエルの『読書について』にある《読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことだ》と同じくらい好きな一節です。歌うように読んだり、自分でものを考えたり。わたしたちはもともと、そういう存在です。石のごとく食べたり、石のごとく働いている存在はデフォルトではありません。自分らしさに無関心になってはいけないって、髭ダンもそう言っています。

 

 非難の声恐れて
 無難な生き方貫いて
 自分らしさにさえ無関心になって
(中略)
 愛を持って「声」と「言葉」で聞かせてよ
 怖がらずに どうか 叫んで 歌って

 

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 アンコール2曲目の「異端なスター」より。1月も2月もアンコールの2曲目は「異端なスター」でした。メロディーはもちろんのこと、歌詞が大好きな曲です。毎月100時間を超えて「石のごとく」ただ働きをしている同僚が「未だに」半数近くいたり、そしてそのことについての管理職のコメントが「うまく調整してください」だったり(あなたの仕事です)、他県で講師経験のある同僚が、おそらくは自分でものを考えずに他県のやり方を踏襲して「石のごとく」食べることを子どもたちに強要した結果、クラスも自分自身も壊してしまったり……。愛を持って「おかしくない?」と叫びたくなるような事例に事欠かないのが学校現場です。外山さんに『「働き」の整理学』でも書いてほしくなります。

 

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パシフィコ横浜より(昨夜)

 

 1月も今回も、アンコールの3曲目(最後)は「宿命」でした。昨年の甲子園のテーマソングです。藤原さん曰く、いい音楽をつくって、いいライブをつくって、みんなに届けるのが僕たちの「宿命」とのこと。いい授業をつくって、いい学級、いい学年、いい学校をつくって、自分の頭で考えて自分の歌を口にすることのできる子どもたちを社会に送り出すのがわたしたちの「宿命」だとしたら、無賃労働や無言給食など、まずはどう考えてもおかしい現状から変えていくことが大切だろうって、そう思った横浜からの帰路でした。

 

 次回は6月、宮城セキスイハイムスーパーアリーナです🎵

 

 ヨシヒコ~。

 

 

読書について 他二篇 (岩波文庫)

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サヨナライツカ (幻冬舎文庫)

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  • 作者:辻 仁成
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2002/07/01
  • メディア: 文庫