田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

ウィリアム・カムクワンバ、他『風をつかまえた少年』より。教科書を読むって、大事。

 朝食抜きということもなくなる。学校を途中で辞めるということも。風車があれば、暗闇と空腹という問題からついに解放される。マラウイでは、風は神さまがたえまなく与えてくれる数少ないもののひとつだ。風は昼となく夜となく木のこずえを揺らしつづけている。風車を手に入れることは単に電力を得るというだけでなく、自由を得ることでもある。そういうことだ。
 その本を見ながら書棚のそばに佇み、ぼくは自分の風車をつくろうと決意した。
(W・カムクワンバ、B・ミーラー『風をつかまえた少年』文春文庫、2014)

 

 おはようございます。昨日の朝、今日はやけに空いているなぁと思って電車に乗り込んだところ、車内に吐瀉物が広がっていて、文字通り閉口しました。鼻も閉じたかったのですが、一瞬のことで、物理的にそれは適わず。匂いとともにコロナウイルスをつかまえていたらどうしよう、と不安になったし、今も不安です。以前、授業参観の直前に嘔吐した子がいて、慌てて処理したところもろに「感染」してしまった経験があるからです。あのときはノロウイルスで、たしか2日後に体調を崩しました。風をつかまえて、不安もウイルスもどこかへ吹き飛ばしたいものです。

 

 

 学ぶということが、これほどまでに人生を豊かにしてくれるとは。私たち日本人が忘れていたことを、この本は教えてくれます。

 

 ジャーナリストの池上彰さんが解説を書いている『風をつかまえた少年』は、著者のひとりであるウィリアム・カムクワンバの自伝ともいえる回想録で、2018年には映画(キウェテル・イジョフォー監督)にもなっています。

 

《本を何度も読んで、全部ひとりでやりました》。

 

 1987年にアフリカの最貧国マラウイで生まれたウィリアム少年が、「エネルギーの利用」という題名のアメリカの教科書と出会い、その教科書の表紙に載っていた「風車」(風力発電)をつくりあげることで、人生の風をもつかまえてしまうというトゥルー・ストーリー。ウィリアム少年が最初にその教科書を目にしたときには、そこに写っている「風車」(風力発電)がなんなのかも知らなかったというから驚きです。

 中学1年で学校を中退して、NPOがつくった図書室へ行って、風車のことを知って、トライして、そしてやり遂げた。

 人口の2%しか電気を使うことができなかった国で、14歳のときに独学で風力発電をつくった少年は、その後アメリカに渡り、TEDカンファレンス(2007)のプレゼンテーションで拍手喝采を受けるほどに、さらには「トライして、そしてやり遂げました!」という言葉を流行らせるほどに「ビッグ」な存在となります。2010年にはアメリカの名門・ダートマス大学への進学を果たし、2013年にはタイム誌の「世界を変える30人」に選ばれるなど、風をつかまえた少年はどこまでもどこまでも飛んでいきます。

 少年がつかまえた「風」は、一冊の教科書がもたらしてくれた「知識」です。そしてその「知識」が生きたのは、少年がもっていた、レヴィ=ストロースいうところの「ブリコラージュ」の能力です。知識をもとに、ありあわせのものを使って風力発電を完成させた、少年の「野生の思考」。

 

 ひとりで教科書を読む力って、大切ですよね。

 

 先日、土曜公開授業の後にとった保護者アンケートに、「楽しい授業」だったかどうかや「わかりやすい授業」だったかどうかを訊ねる項目があり、職員間での事前の内容確認(検討)もなかったので、正直、がっかりしました。またか、とも思いました。以前に勤めていた小学校でも、赴任した当初、同じような項目の保護者アンケートがあったことを思い出したからです。

 

 楽しいか楽しくないかは、授業の本質ではない。
 わかりやすいかどうかも、授業の本質ではない。

 

 教師が「楽しい授業」や「わかりやすい授業」に走れば走るほど、子どもたちは教師に依存するようになります。だって楽しいし、わかりやすく説明してもらえるし、依存したほうが「ラク」だからです。授業は見ているだけでOK。聞いているだけでOK。もしかしたら見ていなくても聞いていなくてもOKかもしれない。だってがんばるのは先生だから。私たちががんばる必然性はないから。

 

 私たちは受け身でOK。

 

 そうすると、誰も「教科書を読んで自分で考えよう」とは思わなくなります。ひとりで教科書を何度も読んでその内容を理解する力はもちろん、ブリコラージュの力だってつくわけがありません。実際、教科書を読まない(読めない)子どもがたくさんいます。書籍のタイトルにもなっている「教科書が読めない子どもたち」ってやつです。だから「楽しい授業」や「わかりやすい授業」はあくまで呼び水であって目的にするのはやめたほうがいい。では、どのような項目であればよいのか。

 

 考えさせる授業。

 

 今のところ、そう思っています。子どもたちが頭をアクティブに働かせる時間をいかにつくっていくのか。

 よくまわる独楽は静かにまわります。参観者からするとあまり楽しそうな授業には見えないかもしれません。わかりやすい授業にも見えないかもしれません。でも考えるってそういうものです。独学のできる、自立した学習者ってそういうものです。風をつかまえるって、そういうことです。わかりやすい授業でつかんだ風(≒知識)は、すぐに吐き出されてなくなってしまいますから。

 

 鼻がムズムズします。

 

 薬をもらってきます。

 

  

風をつかまえた少年(字幕版)

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