田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

映画『つつんで、ひらいて』(広瀬奈々子 監督)と 平野啓一郎さんの「本が本であるためには」と 装幀者・菊地信義さんのモノづくりと。

映画『つつんで、ひらいて』の中でも、監督が「受注仕事」についてどう思うかと質問する場面がある。それに対して、菊地さんは、創作に於ける「他者性」と「関係性」の重要さを強調する。 これが、いかにも本心らしく響くのは、旧知の編集者と蕎麦屋で会話を…

上畠菜緒 著『しゃもぬまの島』より。夢を見ているかのような空気感と、しゃもぬまの精度&精算。

思えば、私は子供の頃から、よく何かに追いかけられていた。 それは人そのものであったり、人の声であったり、視線、噂、不安、死、罪、とにかくありとあらゆる何かだった。「お母さん、何か怖いのがくる」 私はそれらをうまく形容できなくて、何か、とか、…

ほぼ日刊イトイ新聞・編『岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。』より。あなたはいまハッピーですか?

会社がたいへんなときって「1週間後までにこれを仕上げないとたいへん!」という自転車操業状態がずっと続いているんです。ところが一度倒産してしまうと、まとまった時間を取ることができて、以前にできなかったことができるんです。 その「できなかったこ…

松井博 著『なぜ僕らは、こんな働き方を止められないのか』より。臨時休校を機会に「なぜ」を考えよう。

では、何が問題なのでしょうか? 僕は、日本企業の停滞の原因は「集団による意思決定」自体の問題ではないかと考えています。 アメリカの企業というのは驚くほどトップダウンなので、トップが決めたことに本当にみんなが粛々と従います。一方、日本は基本的…

映画『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督作品)より。格差と家族といい人たちと。

家族映画の傑作を作ってくださり、ありがとうございます。 いや、家族映画という言葉でくくるには……この映画はそれ以上のものだと思います。 なんと名付ければ良いでしょうか……。 シンプルに“是枝裕和の映画”と言ったほうが良いかもしれません。 そして、と…

日垣隆 著『脳梗塞日誌』より。新型コロナウイルスよりも過労による脳梗塞の方が怖い。

好きなことを続けることは問題にはならないのであり、嫌いで必要がないものもまた問題にならない。好きとは限らないもので、必要不可欠なものをどれだけ継続し得ているか。どれだけ多くの「たとえ嫌いでも私にとって、または我々にとって絶対に必要なこと」…

税所篤快 著『「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう』より。臨時休校の一報が届きました。

スクリーンの向こうのスタッフが、巨大なシャボン玉を作る過程を説明し、それを僕が片言のベンガル語で子どもたちに伝える。 大きなシャボン玉が空を舞うのを見た子どもたち「うわぁ!」と歓声を上げた。みな、身を乗り出さんばかりにしてスクリーンを見つめ…

浅田和伸 著『教育は現場が命だ』より。もしも文部科学省の官僚さんが校長になったら。

また、長く教育行政に携わる中で、自分たちが寝食を削ってやっている仕事が本当に学校現場のためになっているのか、学校や教育委員会、文科相を含む広い意味での教育の世界が、その他の世界とうまくつながっていないのではないか、という問題意識も強く持っ…

外山滋比古 著『思考の整理学』より。飛行機人間を育てるためにも、コロナの感染拡大を防ぐためにも、学校は臨時休校にすべき。

人間には、グライダー能力と飛行機能力がある。受動的に知識を得るのが前者、自分でものごとを発明、発見するのが後者である。両者はひとりの人間の中に同居している。グライダー能力をまったく欠いていては、基本的知識すら習得できない。何も知らないで、…

スベトラーナ・アレクシエービッチ 著『チェルノブイリの祈り』より。日出る国の祈り。

だれもなにひとつ理解していなかった。これがいちばん恐ろしいことです。放射線測定員がある数値をいう、新聞に載るのは別の数値だ。ははーん、ゆっくりとなにかがわかりかける。ぼくの家には小さな子どもと愛する妻が残っている。こんなところにくるなんて…

深沢七郎 著『生きているのはひまつぶし』より。やりがい詐欺にご用心。

オレは、武将っていうのはきらいだね。信長だって信玄だって、ああいうのみんな、欲かくために戦争したんだからね。権力と土地と財産がほしくて、戦争やったんだから。 信長に敗れた信玄の残党が、塩山(山梨)にある恵林寺に逃げ込んで、信長は寺に火をかけ…

幡野広志さんと大熊信さんのトークを聞いてきました。子育て、親、自己肯定感。

ドラえもんにでてくる、ジャイアンがぼくは嫌いです。人をボコボコにしてモノを奪って、映画になったら急に善人になる。どんなDV男だよ。ぼくはジャイアンのお母さんはもっと嫌いです。ジャイアンの意見には耳をかさず、やりたくない店番をさせ、暴力でジ…

西智弘 編著『社会的処方』より。薬を処方するよりも、教師が教えるよりも、つながりが大事。

社会的処方とは、薬を処方することで患者さんの問題を解決するのではなく、「地域とのつながり」を処方することで問題を解決するもの。 例えば、高齢で家に引きこもっている方が、「眠れない」ということを主訴に医者にかかったとする。普通の医者なら、睡眠…

岩田健太郎 訳、ジェイムズ P.メザ、ダニエル S.パッサーマン 著『ナラティブとエビデンスの間』より。ダイヤモンド・プリンセスで起きているナラティブ。

本書を読むと、なるほど、ナラティブなくしてエビデンスなし、エビデンスなくしてナラティブなしなんだなぁ、と思います。両者は補完的なのではなく、一連の流れとして医療の実践のプロセスにビルドインされているものなのだ、と実感できます。(岩田健太郎 …

吉本隆明 著『ひきこもれ』より。休めメロス。

たとえば太宰治は、小説の登場人物に、学校なんてものは、カンニングしても何でもいいからとりあえず出ておけばいいんだと言わせている。また、武田泰淳は、大学を中退した奴じゃないと信用しないと書いています。 勝手な言い草のようですが、それなりの確信…