田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、旅行、映画」

税所篤快 著『「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう』より。臨時休校の一報が届きました。

 スクリーンの向こうのスタッフが、巨大なシャボン玉を作る過程を説明し、それを僕が片言のベンガル語で子どもたちに伝える。
 大きなシャボン玉が空を舞うのを見た子どもたち「うわぁ!」と歓声を上げた。みな、身を乗り出さんばかりにしてスクリーンを見つめている。
 その瞬間、東京とアクラスプール村を隔てる何千キロもの距離は、消え去ったかのようだった。
 喜ぶ子どもたちを見て、僕は確信した。
「映像で授業を提供するアイデアは、やっぱりいける」
(税所篤快『「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう』飛鳥新社、2013)

 

 こんばんは。昨日のブログは、引用に続けて「国が何を言おうと、市立学校は市の方針に従うのが筋です」という勤務校の校長の言葉で始めました。市は県に従い、県は国に従うと考えれば、学校は国に従うと考えてもよさそうなものの、そうはなっていないなぁという話です。学校の方針 ≠ 国の方針。ところが、です。鶴の一声。きましたね~。さすがは花見の前に「鶴の間」を使っていたと噂されているだけのことはあります。ホテルニューオータニの「鶴の間」です。鶴の一声 = 議論を収束させる権力者の言葉。収束?

 

「全国すべての公立小中高休校へ 安倍首相が表明、新型肺炎で3月2日から」(産経新聞)

 

 19時のニュース(速報)を見て、長女と次女が「うわぁ!」と歓声を上げて小躍りしていました。昨夜、ブロガーのインクさんが「ハレが失われたケをどう生きるか」とツイートしていましたが、意味合いの異なる別次元のハレが近づいてくる予感に、ダンスダンスダンスではないですが、ちょっと興奮しています。

 

 

 明日以降、首相の表明を受けて各自治体がどう判断し、どう動くのか。気になるところです。とはいえ、音楽の続く限り、教員はとにかく踊り続けるしかありません。どれだけ馬鹿馬鹿しく思えても、疲れていても、ベストを尽くして、とびっきり上手に、みんなが感心するくらいに。「最高の踊り」を、世界の果てまで届けよう。

 

「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう

「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう

  • 作者:税所篤快
  • 発売日: 2013/06/11
  • メディア: 単行本
 

 

 発展途上国の農村に生まれると、奇跡でも起こらない限り、貧困のためにまともな高等教育を受けることができない。だから生まれた村を出ることができず、親の仕事を継ぐしかない。

 そんな運命の中にいるバングラデシュの高校生に、DVDで撮った「最高の授業」を届けることができたら、貧困の再生産を阻止することができるのではないか。税所篤快さんの『「最高の授業」を、世界の果てまで届けよう』には、そういったアイデアを行動力によってかたちにしていく過程が描かれています。

 かなり前に読んだ本ですが、全国の学校が休みになりそうな今、そして感染症予防のために基本的には「ひきこもれ」と言われている今、遠方にいる子どもたちに「授業を届ける」というアイデアを外国にまで広げてかたちにした税所さんの行動力って、やはりすごいなぁと思います。

 

 E- エデュケーションの映像授業。

 

 税所さんのアイデアとそれをかたちにした行動力によって、実際に農村から国立最高峰のダッカ大学(日本でいうところの東京大学)に合格者が出ます。しかも初年度に。貧乏人、田舎者はダッカ大学に行けないという常識を「21歳」の税所さんがひっくり返したというわけです。

 

 21歳。

 

 若い。税所さんは、坪井ひろみさんの『グラミン銀行を知っていますか』に刺激を受けて、19歳のときにバングラデシュに渡り、グラミン銀行グループの研究ラボ初の日本人コーディネーターに就任しています。翌年にはグラミン史上最年少で、事業「e-Educationプロジェクト」を立ち上げるといった活躍ぶり。いったい、どのような教育を受けたら税所さんのような若者が育つのでしょうか。教育に携わっている身としては、税所さんの授業観に興味を覚えます。

 

退屈な授業に体が拒否反応を示してしまい、どうしても教室に座っていられなかったのだ。

 

 これは早稲田大学の授業、いわゆる大講堂での一斉講義型の授業を振り返っての言葉です。高校のときにも同じような「拒否反応」を覚えたそうで、歴史の先生に次のような手紙を送ったとのこと。

 

 先生の授業を半年間受けてきましたが、熱意、使命感、覇気が感じられず、3分の2の生徒は寝ていて、残り3分の1は内職をしています。(中略)。教科書を読み上げるだけで、歴史のおもしろいエピソードや、それを学ぶ意義がぜんぜん理解できないのです。

 

 ちなみに高校は、芥川龍之介の母校として知られる都立の名門、両国高校です。中学高校と「落ちこぼれだった」と強調していますが、税所さんは地頭がいい。地頭のいい子って、自分で勉強できるんですよね。教科書を読めばわかります、みたいな。だから受け手とのインタラクティブのない一方的な授業で彼ら彼女らを惹きつけようとしたら、教師に相当な知性が求められます。しかし知性のある教師は数に限りがある。そうだとしたら、最高の知性をもった先生の最高の一斉授業をDVDで撮って、それを見た方がいい。税所さんは高校生のときに東進ハイスクールの映像授業に出会い、感動したそうです。「ひょっとして、これはすごいシステムなんじゃないか?」って。

 とはいえ、地頭がそれほどよくない中高生や、集中力をキープできない小学生には、やはり生(なま)の先生によるインタラクティブな授業が適している気がします。税所さんも次のように書いています。

 

僕自身の高校時代をふり返ってみても、T予備校の映像授業が有効だったのは、相手が生の先生でなくてもそれなりに集中力をキープできる年ごろだったこともあるだろう。小学生に、同じ理解力を期待するのは難しい。

 

 と、ここで、校長から電話がかかってきました。勤務校のある自治体は3月2日からの「臨時休校」を決定したようです。というわけで、今から明日の準備をしなくてはいけなくなりました。ブログもここまでです。税所さんもいうように「E- エデュケーションの映像授業」は小学生向きではありまん。だから臨時休校中、子どもたちには復習はほどほどにして、読書や何か夢中になれること、或いは「何もしないをする」をしてほしいと思います。地頭をよくするにはそれがいちばんのような気がするからです。言いたかったのは、そういうこと。もちろん、税所さんの本はお勧め(❗)ということもです。

 

 踊ります。

 

  

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  • 発売日: 2004/10/15
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ダンス・ダンス・ダンス(下) (講談社文庫)

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