田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

宮台真司 著『正義から享楽へ 映画は近代の幻を暴く』より。教育における直接体験や享楽はどうデザインすればよいのだろう。

子供らが草野球するのを、野原に降り立った火星人が見ている。フィジカル(物理的・身体的)な挙動は観察できる。でも何をしているのかは分からない。分かるには子供らの体験を追体験できなければいけない。火星人はやがて「こうではないか」と思えるように…

沢木耕太郎 著『旅のつばくろ』より。旅への強い思いを抱くために。今は充電期間。

恐らく、いまの子供たちは、岩井海岸に臨海学校に行っても、栗駒山に林間学校に行っても、いや行かなくても、私や理髪店の主人のように強い思いを抱くことは少ないような気がする。家族と泊まりがけの他の旅行と紛れて、淡い記憶しか残らないのではないかと…

岩田健太郎 著『感染症は実在しない』より。病気は現象、学力も現象。

(前略)インフルエンザは実在せず、私たちが認識する現象にすぎません。そして、私たちの認識のあり方は、どのように検査をしようとか、どのように治療をしようかという戦略性・恣意性によって変わってきます。私たちの態度、立場、恣意性がインフルエンザ…

中村文則 著『遮光』より。典型さについて。昼の光に、夜の闇の深さがわかるものか。

美紀が今いれば、私には違う人生があったし、それは美紀にとっても同じ事だった。私は美紀を幸福にしたかった。私は美紀と、よくある平凡な生活を、そういった典型的な生活を、ただしたかった。(中村文則『遮光』新潮文庫、2020) おはようございます。先月…

門井慶喜 著『銀河鉄道の父』より。厳しさと過保護の間で揺れ動く現代のお父さん。

もっとも多かったころは九人いたのだ。家族の数が半分以下になると、時の経つ速さは倍以上になる。そのことを政次郎ははじめて知った。 或る朝。 シゲとクニが学校へ行ってしまうと、がらんとした座敷に立って、(あ) 心が、棒のように倒れた。 倒れる音ま…

神保哲生、宮台真司、他『教育をめぐる虚構と真実』より。ペスト → 文芸復興(ルネサンス)。コロナ → 教育復興。

経済界は教育に「新しい産業構造に合った人材をくれ」と言いだします。利害関係者として当然の要求です。問題は、それにどの程度応じるべきなのか。あるいは、どの程度拒絶すべきなのか。経済が回らないと、社会は回りません。でも経済を回すために社会を犠…

神成淳司、宮台真司 著『計算不可能性を設計する』より。ICTを活用し、履修主義から習得主義へ。

では、教育のどの部分に人間が必要なのかと言えば、教科書に記述された内容とは別に、より実践的な要素を盛り込んだ教育の部分でしょう。テストでよい点を取るためではなく、実際に社会に役に立つような実践的な教育のことです。 例えば、物理・科学の実験で…

村上春樹 著『猫を棄てる 父親について語るとき』より。降りることは、上がることよりずっとむずかしい。

それが僕の子供時代の、猫にまつわるもうひとつの印象的な思い出だ。そしてそれはまだ幼い僕にひとつの生々しい教訓を残してくれた。「降りることは、上がることよりずっとむずかしい」ということだ。より一般化するなら、こういうことになる――結果は起因を…

沢木耕太郎 著『陶酔と覚醒』より。小学生は陶酔して「する」。教員は覚醒して「みる」。

もしかしたら、「みる」に対する言葉は「みられる」なのかもしれない。しかし、私には「みる」の対語は「する」であるような気がする。そして、その「みる」という動詞を人と結びつけるとするなら、「みる者」と「みられる者」ではなく、「みる者」と「する…

日垣隆 著『つながる読書術』より。コロナの夜長に、つながる読書を。

私自身が「本読み競争」に参加したのは高校三年の三月からです。それまで書店で本を買ったこともなく、本好きの姉にバカにされていました。「本を読まない男に価値はない」と宣告されたときは、「多感な年頃のかわいい弟に、こんな言葉を投げつけるとは」と…

若狭蔵之助 著『子どもと学級』より。自由からの逃走。歴史は繰り返す。

彼らは、身近な自然や社会にはたらきかけ、そこに興味を見出し、それを書いていくことに慣れていない。彼らはつねに、彼らの内からではなく外から課題を与えられてきた。したがって、彼らに課題を与えてきた教科書やドリル帳やプリントを取り除かれると、よ…

沢木耕太郎 著『無名』より。結局、親。やっぱり、育て方。

父が松原団地の病院に入院して、私が初めてひとりで看病することになった夜だった。 私は仰向けになって眠っている父の横顔を眺めながらぼんやりと考えていた。父と二人だけの行動というのがどれくらいあったか。父と二人で旅したことは……ない。父と二人で凧…

岩田健太郎 著『ぼくが見つけたいじめを克服する方法』より。昨夜、マル激に岩田健太郎さんが出ていました~🎵

私が他者とは違う。それは当然のことだ。当然のことが当然のこととして了解される。個人の中でそれが了解され、仲間のあいだでそれが了解される。 社会全体の中で「違い」が認識され、了解され、許容されるとき、現在も続く、昭和の時代からの「いじめの構造…

中村文則 著『逃亡者』より。なぜ神は沈黙しているのか。

なぜ神は、自分の信者が行う蛮行にまで、沈黙なさっていたのか。被害だけでなく、信者が加害者になることまで沈黙するとは、どういうことなのでしょうか。 フランスのヴェトナム植民地支配。元々は、キリスト教圏のヨーロッパ諸国による、大航海時代に遡りま…

メイソン・カリー 著『天才たちの日課』より。天才=クリエイティブ。クリエイティブ=子供。天才=子供。

「私は毎日書かなければならない。それは成果をあげるためではなく、習慣を失わないためだ」。これはロシアの文豪トルストイが1860年代の半ばに書いた数少ない日記のなかの一文で、『戦争と平和』の執筆に没頭していたころのものだ。トルストイはその日…