田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

松井博 著『僕がアップルで学んだこと』より。神戸の4教員のいじめの記事と松井博さんの新刊&旧刊を読んで考えたこと。

私がアップルに入社していちばん驚いたこと、それはいろいろな意味で突出した人材の多さでした。まず頭のいい人の数。「人生の中でこんなに頭のいいヤツには会ったことがない」と思わせてくれる人々にしばしば遭遇します。特にどうってことのないポジション…

プラトン 著『饗宴』より。埼玉県・教員残業代訴訟。給食の時間に事務作業だって?

総じてギリシャ人の間においてはホメロス時代以来飲み食いは単に肉体の栄養であるだけでなく、同時に精神の糧でもあるという考えが行なわれていた。したがって食卓で討論が行われるようなことがあっても、それは決して不思議ではなかったのである。(プラト…

野﨑まど 著『HELLO WORLD』より。読書の秋。沢木耕太郎さんと鳥山敏子さんの勧め。

だから僕は。 何の保証もないことを、言おうと思った。「きっとここは」 真っ白い世界に、最初の一行目を書き込む。 何を書いてもいい世界で、僕は。 何を書くかを、自分で決めた。「まだ誰も知らない、新しい世界なんです」(野﨑まど『HELLO WORLD』集英社…

堤未果、湯浅誠 著『正社員が没落する』より。僕らの責任は想像力の中からはじまる。

社会保障は、労働市場の質を保つために必要なんです。考えてみれば当たり前のことです。別に福祉国家は資本主義に対抗するために生まれてきたものではない。社会福祉政策はもともとドイツのビスマルクが導入したもので、資本主義を上手く生き延びていくため…

石井光太 著『物乞う仏陀』より。聖職のゆくえ、過労死レベルで働く教員は世界をどう見ているのか。

ただ、ここはカンボジアである。乞食には乞食の、地雷障害者には地雷障害者の生き方というものがある。おのおのが地雷を踏んだ運命をうけいれて自分なりの方法で生きている。 日本でいわれている乞食だとか地雷障害者のイメージとは程遠いけれど、彼らを非難…

中村文則 著『自由思考』より。上手く言えないが、平和って素晴らしいと思った。

足を開いた女優に、男優が真珠のネックレスを手に近づいていく。その設定の意味がもうわからないが、やがて男優は女性の首にそれをかけるのではなく、女性の大切な部分にその真珠のネックレスを入れていくのである。何でそんなものを入れるのか当時はわから…

鈴木大裕 著『崩壊するアメリカの公教育』& 映画『HELLO WORLD』(伊藤智彦 監督作品)より。髭ダンの人気と教ダンの不人気について。

「真に理性的な社会では、我々の中で最も優秀な者が教師になり、それ以外の者は他の仕事で我慢せざるを得ないであろう」。そう言ったのはアメリカの伝説的経営者、リー・アイアコッカ(Lee Iacocca)だ。教育関係者に限らず、この言葉に頷く人は少なくないだ…

宮台真司 著『 〈世界〉はそもそもデタラメである』より。教職を希望する若者こそ「踊れる身体」を持っていてほしい。

クラブブームだった90年代前半、学生らを連れていくと、すぐ踊れる学生と踊れない学生が分かれた。連れていく前から、誰が踊れ、誰が踊れないか、見当がついた。 ゼミで優秀な発言をする学生こそ「踊れる身体」を持っていてほしいと私は望んだ。期待を抱か…

川田龍平 著『川田龍平 いのちを語る』より。不幸だけれどしあわせ。

龍平 そうなのです。知らない、知識がないということが差別を生むことは少なくありません。理解しようとすることが大事なのです。ぼくは実際に大学で教えるようになって、ますます教育の必要性を感じました。今の大学生は薬害エイズのことも知りません。19…

博報堂大学 幸せのものさし編集部『幸せの新しいものさし』より。ものさしを変えて、他者と仕合う。

そのころ農家を回って聞いた話はショッキングだった。アメリカでは既に禁止されていた農薬を使い続けて意識障害を発病した農家の人の話、自家消費の野菜には絶対に農薬は使わない、という彼らの告白。気づいたのは、「知らないから何でもできてしまう」とい…

鶴見俊輔 編著『新しい風土記へ 鶴見俊輔座談』より。教員に「learn」と「unlearn」の時間を。

戦前、私はニューヨークでヘレン・ケラー(1880~1968)に会った。私が大学生であると知ると「私は大学でたくさんのことを学んだが、そのあとたくさん、学びほぐさなければならなかった」といった。学び(ラーン)のちに学びほぐす(アンラーン)。「アンラ…

村上春樹 著『中国行きのスロウ・ボート』より。きちんと芝を刈ることと、きちんと学級をつくること。

僕はその年、芝刈りのアルバイトをしていた。芝刈り会社は小田急線の経堂駅の近くにあって、結構繁盛していた。大抵の人間は家を建てると庭に芝生を植える。あるいは犬を飼う。これは条件反射みたいなものだ。一度に両方やる人もいる。それはそれで悪くない…

大前研一 著『マネー力』より。ストリート・スマートを育てるために、学校は午前だけでよい。

今後、日本の経済力が上がるかどうかは、ストリート・スマートをどれだけ輩出できるかにかかっているといってもいい。 ところが日本の教育界はこの期に及んで、まだアカデミック・スマートを育てることしか頭にないようだ。(大前研一『マネー力 資産運用力…

内田樹 著『修業論』より。昨夜、師匠と会って思い出した「いい人」の話。

Aさんは「理」を見るしかたをシベリアで学んだ。それに対して、元参謀はついに「理」を見ることができなかった。帝国の瓦解について、それがどういう理路によって起きたことなのか、ひさしく超法規的統帥権を行使してきた部署の責任者のひとりとして、一言…

日垣隆 著『学問のヒント』より。せっかく日本に生まれたんだ。神様がいろいろ見て回れって言ってるんだよ。

この偉大な翁がいたからこそ、日本の近代地図は鎖国時代に誕生することができ、江戸時代人は日本列島の自己像を、黒船ペリー来航のずっと以前に知悉しえたのであった。それゆえに、ペリー司令長官の配下によって列島で全国測量が強行される事態は避けられ、…