田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

田辺聖子 著『孤独な夜のココア』より。純度の高い恋愛は他から見るといやらしいものだ。でも、かっこいい。

いま何をしているのかしら。この頃、テレビで、脚色者としてちょいちょい、出てくる私の名を、彼は見てくれてるかしら。 青年ジルとアンヌ姫のように、私とアイツは、あそこで石になった。そうして三たび、私は目から鱗がおちたようにわかったのだが、アイツ…

東畑開人 著『聞く技術 聞いてもらう技術』より。聞いてもらうから、はじめよう。

「聴く」よりも「聞く」のほうが難しい。 心の奥底に触れるよりも、懸命に訴えられていることをそのまま受けとるほうがずっと難しい。 ならば、どうしたら「聞く」ができるのか。これがこの本の問いです。(東畑開人『聞く技術 聞いてもらう技術』ちくま新書…

三浦英之 著『災害特派員』より。未来がどうなるのかなんて、結局誰にもわからない。

「今になって色々なことを言う人がいるけれどさ」と渡辺は出てきたソーセージを楊枝の先でつつきながら言った。「当時を知っている人間からすればさ、あの日、自分たちの住む町にあんなに大きな津波が押し寄せてくることを予測できた人なんて、一人もいなか…

苅谷剛彦 著『思考停止社会ニッポン』より。自粛の要請という言い回しも、教員が「自発的に残業している」という言い回しも、非科学的。

道徳とは共同体のルールである。しかも、そこでの善悪の基準は、時代によって変化し、多数派の価値観や特定のイデオロギーが力を得たりする。時に恣意的でさえある。合理的・合法的判断より情緒的判断が優先される場合も少なくない。 ここから引き出すことの…

辻仁成 著『目下の恋人』より。担任は人類学者たれ。

「じいちゃんとばあちゃんは学者だった。俺の親とは違って、頭がいいんだ。俺が頭がいいのは二人の血のせいだよ」「頭良かったっけ?」「うるせえ、いいんだよ。能ある鷹は爪を隠すって言うだろうが」「諺? どういう意味か知らない」 ヒロムは笑った。「学…

角幡唯介 著『狩りと漂泊』より。極地探検家の目下の生き方。漂泊が、すべてを生み出すのだ。

このようなわけだから、計画にもとづいて効率性を優先するかぎり、どうしても人は、そのとき起きた予想外の出来事や、その土地ならではの生の風景を見ようとしなくなる。もちろん実際に風景を見てはいるのだが、それは単に網膜に像が映っているだけ、という…

宮台真司、藤井聡 著『神なき時代の日本蘇生プラン』より。君たちが頓馬であれば、クラスは出鱈目に機能するよ。

キャンプファイヤーをやったことのある人はわかるけど、大切なのは歌や踊りじゃない。火を囲んで座っているだけで、いつもなら話さないことを友人どころか知らない人にまで話してしまうマジックです。パチパチという木の爆ぜる音を一緒に聞いているだけでも…

映画『LOVE LIFE』(深田晃司 監督作品)&『マル激(第1121回)』より。他者理解は、わかりあえないことから。

この作品に限らず、映画を作るときに一貫しているモチーフは個の孤独です。もちろん、一本の映画にはいろいろなモチーフが組み合わさっていますが、中でも自分が一番信じられるもの、普遍的だと思うものが人は孤独であるということであり、それが作品の世界…

西剛志 著『低GI食』より。脳科学者が勧める食事術。家庭科の授業にも、ぜひ。

実は糖質をたくさん摂りすぎると、逆に「血糖値スパイク」という現象が起き、脳のエネルギー不足を引き起こしてしまいます。 スパイクというのは、鋭く尖ったという意味で、シューズのスパイクの先端のように血糖値が急上昇して、急降下する様子を意味してい…

川上弘美 著『センセイの鞄』より。ひとつとして、同じ形をした愛は無い。

くそじじい。わたしは胸の中で言い、それから口に出して「くそじじい」と繰り返した。くそじじいはきっと元気に島を一周でもしているんだろう。センセイのことなんか忘れて宿の小さな露天風呂にでも入ろう。せっかく島に来たんだから。センセイがいようがい…

リチャード・ワイズマン博士 著『運のいい人の法則』より。運も実力のうち? それとも、実力も運のうち?

運がいい人のキャリアを大きく左右するのは、ビジネス界だけの話ではない。一九七九年に映画監督のジョージ・ミラーは、新作『マッドマックス』の主役にふさわしい俳優を探していた。戦いに疲れて傷ついた、しかしタフな男が理想だった。オーディション前日…

内田樹、平川克美 著『東京ファイティングキッズ・リターン』より。安倍、お前だったのか。

平川 そういうことだろうね。マヌーヴァーを演じるための実体が裏側にあるわけなんだけれども、そこがなくなっちゃった。はなからなかったのかな。内田 どうもないみたいよね。安倍晋三もそんな感じがするしね。おもしろかったのは福田康夫でさ、いまどき珍…

広田照幸 著『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』より。教育は、君と世界をどう変えるか。

目先の利益とか、自分の家族のことだけに気をとられているような、いまの大人たちは情けない。学校の先生も、テストのこととか入試のことばかり口にするような先生には期待できません。 私は若い世代の皆さんに期待をしたい。どうか、「家庭・友人・学校のあ…

奥澤高広 著『町田独立宣言』より。小学校の統合ってどう? 本当にそれでいいのでしょうか?

町田市では、少子化と深刻な学校施設の老朽化という問題に対応するために、2040年度までに、市立小学校を42校から26校、市立中学校を20校から15校に統合する計画が発表されています。統合時に校舎を建て替えることで、老朽化の進んだ教育環境を…

猪瀬直樹 著『迷路の達人』より。自分が満足するには、自分に出会うしかない、このあたりまえがむずかしい。

僕は信州の小布施町を、最低でも月に一度は訪れる。そういう習慣を自らに課している。 小布施は善光寺平の一隅にある古びた小さな町で、栗林と瓦ぶき大壁造りの民家がかつての繁栄をしのばせる。その静けさが気に入っているというのは僕の勝手な思いで、最近…