田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

猪瀬直樹 著『公』より。猪瀬直樹さんの「公の時間」と、村上春樹さんの「私の時間」と、「家長」不在の教育現場。

「公の時間」とは、家の土台のような確固たる事実が堆積した世界であり、個人の苦悩や葛藤という「私の営み」はその土台の上に構築されるはずだ。個別・具体的な「私の営み」を、普遍的な「公の時間」につなげるのがクリエイティブな作家の仕事である。(猪…

中原淳 著『知がめぐり、人がつながる場のデザイン』より。日々を丁寧に、かつ知的好奇心を絶やさずに。

まず、僕自身にまつわる変化です。ラーニングバーをはじめてからというもの、僕はいろいろな意味で、日々を丁寧に、かつ知的好奇心を絶やさずに生きていけるようになった、と感じています。 それは、どのようなテーマでバーを開催すればいいのか、誰を講師に…

西成活裕 著『シゴトの渋滞学 ―ラクに効率を上げる時間術―』より。30人学級よりも、専科の先生を増やしてほしい。

仕事の動きに臨機応変に対応するためには、渋滞を解消するためにクルマとクルマの車間距離をあけたように、スケジュールとスケジュールの合間も「車間距離」をあけて、仕事の安全運転をしておくべきなのです。 われわれのやっている新しい渋滞研究は、このよ…

猪瀬直樹 著『昭和16年夏の敗戦 新版』より。データより空気。これは過去の歴史ではない。今なお……。

二つの内閣が対峙した。いっぽうは第三次近衛内閣。もうひとつは平均年齢三十三歳の総力戦研究所研究生で組織する〈窪田角一内閣〉である。 ~中略~。長い一日がはじまりそうである。 十六年夏、彼らが到達した彼らの内閣の結論は次のようなものだったから…

松村真宏 著『仕掛学』より。仕掛をつくって、過労と休日出勤を回避。

アメリカのNASAは、宇宙飛行士を最初に宇宙に送り込んだとき、無重力状態ではボールペンが書けないことを発見した。この問題に対処するために、NASAの科学者たちはこの問題に立ち向かうべく、10年の歳月と120億ドルの開発費をかけて、無重力で…

古市憲寿 著『絶対に挫折しない日本史』より。展望台史観で歴史の概要をつかむ。小学6年生にお勧め。

旧石器、縄文、弥生、古墳、飛鳥、奈良、平安、鎌倉、室町、戦国、安土桃山、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和……。こんな時代区分を学生時代に暗記させられなかっただろうか。この分け方が無意味だとは思わないが、ざっくりとした歴史を把握したい本書に…

宮台真司、福山哲郎 著『民主主義が一度もなかった国・日本』より。「権威と市場」or「参加と再配分」。未来を託せるのは、どっち?

こういうことです。日本は経済を回すために社会を犠牲にしてきた。社会の穴を、辛うじて回る経済が埋め合わせてきた。だから経済が回らなくなったら、社会の穴が随所で露呈した。金の切れ目が縁の切れ目。これが続く限り、今後も経済次第で人が死にまくるの…

土井善晴 著『一汁一菜でよいという提案』より。簡単は手抜きじゃない。研究授業なんて要らない。

地球環境のような世界の大問題をいくら心配したところで、それを解決する能力は一人の人間にはありません。一人では何もできないと諦めて、目先の楽しみに気を紛らわすことで、誤魔化してしまいます。一人の人間とはそういう生き物なのでしょう。しかし、大…

筑摩書房編集部 編、宮台真司、大澤真幸、他『コロナ後の世界』より。これ、めちゃくちゃいいから読みなよ。

屋上や非常階段からの風景は、いつも見る街の風景とは違うし、夜の公園の風景も、いつも見る昼間の公園の風景とは違う。25年前に書いた「地上70センチの視線」論のように、地べた座りもそうだった。人が行き交う渋谷センター街の路上で地べた座りをすれ…

映画『行き止まりの世界に生まれて』( ビン・リュー監督作品)より。光と影。スケートシーンが、ひたすらに美しい。

ある時、セントルイスの橋の下のDIYスケートパークで知り合ったスケーターたちと「今日は父の日なのにみんなここにいるね」って話になり、そこから各々父親の話をしました。父親がいなかったり、暴力的な父親がいたり、疎遠だったり、みな何かしら親との…

宮台真司 著『宮台教授の就活原論』より。経済よりも社会、仕事よりも家族。

グローバル化が進み、消費性向が高まりつつあるにもかかわらず生産人口が減りつつある日本では、夫の稼ぎで妻の食い扶持を支えることはできません。金持ち以外は夫婦で働くしかなく、従って長時間労働は家族と地域の空洞化につながります。 空洞化は、英国の…

ヤマザキマリ、中野信子 著『パンデミックの文明論』より。小さな物語をどれだけ確保できるか。

中野 そう、若者のパーティにお年寄りが来たりするし、公園で一緒にチェスに興じたり。それにひきかえ、日本では「シルバー民主主義」みたいなことが言われて、選挙に必ず行く高齢者のほうが強い発言力を持っているようでいて、街中では若者と交ざり合うこと…

ヤマザキマリ 著『たちどまって考える』より。ジョーからルフィーへ、ソロからグループへ。

まず、かつてのアイドルのように一人でステージに立つ場合、その歌手は「絶対に間違えない」という緊張を一身に纏います。ソロで活動していれば、人の求める期待に応えなければならない、というプレッシャーをすべて一人で背負わなければならないわけです。…

エマニュエル・トッド 著『大分断 教育がもたらす新たな階級化社会』より。我々は学業と知性の分断が起きている時代を生きている。

分断を招くという文脈においての教育とは、もはや高尚な意味での教育ではなく、ただ単純に取得できる「資格」を指します。今考えなければいけないのは、この教育と知性の関係性でしょう。能力主義という理想が高まった時代には、学校教育で成功するためには…

内田樹、岩田健太郎 著『コロナと生きる』より。学校の労働環境の当たり外れもストカスティック。

なぜ、対談が好きかと言うと、「他者の言葉」に興味があるからです。「他者」というのは、「自分とは同じようなことを言わない、考えない」人のことです。内田先生のお言葉は(あるいはその著書でも)「そうか、そういう考え方もあったのか」という驚きをし…